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5Gスマホが当たり前になるために通らねばならぬ道:本田雅一のウィークリー5Gサマリー

やっぱり端末が気になりますよね?

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年3月11日, 午後04:00 in 5g
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テクノロジ界隈以外の友人と話をしていると、新しく始めた連載の「5Gって何? 凄いの?」的に聞かれることも少なくはなく、これだけ「5G、5G」と騒がれていても、実のところまだ局所的なのかなぁと思ったりしています。

さて、それはともかく。前回、5Gスマホってまだまだこれからだよね的なことを書きましたが、もちろん、将来的には5Gになっていくはずです。ただ、端末側の機能や性能向上などを理由に、こぞって消費者が5G対応端末を買い求め、一気に5Gにトランジションしていく、というシナリオはないよなぁ、という話です。

そうは言っても、スマホを一度購入したら2年ぐらいは使う人が多いでしょうから、お目当てのメーカーの端末がいつ5Gに対応するのか気になっている人もいるでしょう。そんな人にとって解りやすい記事がEngadget日本版に上がっていました。

笠原一輝氏の「5G iPhoneはいつ登場する? Qualcommの勝利宣言にみる5G競争の行く末」という記事ですが、こちらの記事を受けて、端末側が5Gに対応していくために、中身がどう変化する必要があるのか? について書いておきたいと思います。

"5G対応スマホ"が当たり前になるまでのプロセス(Android端末編)

通信を行うための信号処理などを行う装置を「モデム」と言います。

LTE対応ならLTEのモデムが入っていますし、3GとLTEに両対応ならば両方のモデム機能が端末内に必要となります。近年になってLTEの整備が進んだことから、3G非対応の端末が主流になってきましたが、3Gモデムが必要なくなれば、3Gの電波を掴むためのアンテナも不要になります。

3Gモデムの省略はコストダウンにもなりますが、アンテナ設計が楽になるため、設計自由度も高くなります。そして最終的には価格・端末デザインの両方で消費者にとってプラスになるでしょう。

5g

......と、いきなり話がズレてきましたが、通信方式ごとに信号処理に差違があり、LTEに加えて5Gでの通信を行う場合、5Gモデムが必要になってきます。5Gモデムは通信効率を高めるために、LTEよりもチップにより多くの能力が求められますから、最初はSoC(スマホのシステムを構成するために必要な機能を一体化したチップ)の中には入ってきません。

"入らない"理由は、回路の規模が大きくなりコストが高くなるためというのもありますが、最初は5Gモデムに対するニーズ(販売量)が多くはないはずなので、別にしたほうが経済的という意味合いもあるでしょう。

日本で販売されているAndroid端末は、Qualcomm製チップを採用するのものが多いわけですが、QualcommのSnapdragonにはLTEモデムが内包されているため、それに5Gモデムを付け足して5G対応にすることが可能です。

その次の段階としてあるのが、5GだけでなくLTE世代を含めたすべての無線通信機能をひとつにまとめたモデム(記事中にある5G対応マルチモードモデムというのがそれ)の実現で、2020年に搭載製品が量産出荷されます。すなわち搭載製品の登場は主に来年後半となるでしょう。

そして、5G対応のマルチモードモデムがこなれてくれば、それをSoCに内蔵させることも可能になります。5G対応により回路規模が大きくなるならば、プレミアムクラスのスマートフォン向けSoCではなく、ミドルレンジのSoCあたりから統合が始まる可能性が高そうです。

そして将来的に、集積度などが向上して余裕が出てくれば、5Gモデムを統合したSoCが当たり前になり、結果として5G対応は当たり前になっていくでしょう。

"5G対応スマホ"が当たり前になるまでのプロセス(iPhone編)

5g

さて、前述の記事の中では、"5G対応はAndroidだけ"というロゴのシャツをQualcommの人たちが着ていたとあります。Qualcommは世界中でAppleと特許を巡る裁判を戦っているので、まぁザックリ言えば"ざまぁ、みやがれ。俺たちの勝ちだ!"ってところでしょうかね。いや、わざわざそんなこと言わなくてもいいと思うんだけれど......。

もっとも、実際のところAppleが今年、iPhoneなどを5Gに対応させてくることはないでしょう。理由はApple製端末が独自設計のSoCを採用しているからです。たとえば、現行モデルに搭載されている「A12 Bionic」がそれですね。

そして、このSoCにはモデムが内蔵されていません。おそらく今後もAシリーズのプロセッサがモデムを内蔵することはないと思います。それはともかく、今年入手できる5Gモデムは5G単独機能しかないため、iPhoneを5Gへ対応させるには(おそらくA13 Bionicという名称の)新型SoC+LTE対応マルチモードモデム+5Gモデムを搭載せねばなりません。

これを実現するにはコストが掛かり過ぎるだけでなく、消費電力やモデムの基板実装面積などを考慮すると、実利がないのに端末設計に制約をもたらすことになるでしょう。

5g

現行のiPhone XS/XS Maxは実効値で100Mbpsを大きく超える速度を実現していますし、iPhone XRもほぼ同等の実効値が出ています。問題は"どの世代の通信システムに対応しているか"ではなく、あくまで「端末を使用するユーザーの体験が重要」とするなら、無理をしてそこまでする必要はないのです。

Qualcommとの裁判の行方とは関係なく、Appleとしては5G対応マルチモードモデムを無理なく載せ、アンテナ設計の面でも充分に性能が出せる段階で搭載してくると思います。

なお、搭載する際には、おそらくその年に発表されるすべてのiPhoneが5Gに対応するでしょう。また、端末の買い替えサイクルが今後伸びていくと予想するならば、将来的に5Gが普及し、LTE向けの周波数が再割り当てされるだろうということを見越して、2021年ごろには5Gに対応させる可能性もあるかもしれません。

もっとも、個人的には5G対応が重要になってくるのは、2022年以降だと思っています。そうした意味では、5Gスマホが当たり前になっていくための一番のハードルは"ニーズを生み出せるか"でしょう。LTEではなく5Gにすることによる意味。実は通信会社のひとたちも頭を悩ませています。

余談ですが......

ところでまったくの余談ではありますが、Qualcommの提供するSoCは概して割高な印象があります。もちろん、割高な理由の背景には、機能や品質の高さ、サポートやツール、ペリフェラルの豊富さなどもあるのですが、Appleとの係争(元々は、Appleが部品の納入元を複数用意する形でのリスク管理をするようになり、Qualcomm以外のベンダーからモデムを買うようになったことが理由と言われています)の様子を観る限り、あまりお行儀がいいようには見えません。

まぁ、ビジネスですし、もともとQualcommは技術特許で勝ち抜いてきた会社ですから、この手の戦いには徹底的に突っ込んでいきたいのかもしれません。

でもねぇ......と思うのは、結果的に価格や端末の多様性といった面で消費者が不利益を被るかもしれないからです。

他ジャンルですが、QualcommはTrue Wireless Stereo(TWS:左右独立型ワイヤレスイヤホンのこと)のチップも(グローバルでのシェアは小さいのですが)作っています。グローバルでのシェアが低い理由は、純粋に高価だから。

5g

競合......たとえば、パソコン用サウンドチップなどで知られていた台湾のRealtekなどもTWS向けチップを開発しており、性能もなかなかで、悪くはありません。海外ではQualcommよりずっとシェアが高いのですが、日本では"Qualcomm搭載"がブランド化している影響もあり高コストだけれど(著名ブランド以外の製品では)売れているという状況です。

日本でRealtekのTWS向けチップに人気が集まらないもう一つの理由は、Apt-Xに対応対応していないから。しかし、これは能力的な問題ではなく、Qualcommがコーデックを他社にライセンスしていないからなのです。いずれTWS市場が成熟し、もっと平均売価が下がってきたならば、今度は幅広くライセンスする戦略を採用するかもしれませんが、現状はApt-X対応=Qualcomm製TWSチップとなっています。

とはいえ、市場の6割を握るAppleのAirPodsはAAC対応のみ、ソニーの各種製品やBoseの「SoundSport Free wireless headphones」など、ブランド力の高い製品でさえSBCとAACのみにしか対応していないわけで、現状、Apt-X非対応はさほど大きな問題ではありません。

商売上手よね〜とも言えますし、このジャンルをQualcommが独占しているわけでもないのですが、音声圧縮コーデックという基本的な技術に関しては、適切な価格でライセンスしてほしいものです。

またもや端末の話をしてしまった......

最初の連載で「5Gはスマホ端末の戦いではない」なんて書いておきながら、また今週も端末の話をしてしまいました。

本当はNTTドコモが開催した「5G BUSINESS CAMP」や、KDDIの「スマートドローン」に関する発表などをレポートするのも渋めで良いかと思ったのですが、一方で"もっとも身近に感じられる5G"ということで、5G端末ってのはやっぱり期待値が高いんでしょうねぇ。

5g

ただ、LTEの速度もスペック上では1Gbpsを超えてきています。もうしばらくすれば、LTEでも実効速度で200Mbpsぐらいなら出てくるようになるでしょう。

NTTドコモの吉澤社長は上記のイベントで、5Gは「非通信領域」の成長を促すものだと再度強調(以前から何度も言っています)していました。通信会社がサービス設計をして提供するだけで終わるのではなく、非通信業界の企業と新しい事業を創出するといった意味合いですね。

言い換えれば、ドコモ自身、もっともっとアイデアを集めてきてよ! こっち来て! 一緒に何かをつくろう! と、まぁ、何をやれるかわからないけど、まずは集まろうか的な状況に見えます。

いずれにしろ、日本での本格的な5Gサービスは来年まで始まりません。今年はプレサービスのみ。ゆっくりと見守っていきましょう。



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関連キーワード: 5g, android, apple, communication, iphone, qualcomm, smartphone
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