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Googleマップの新しい地図 「劣化」か「進化」か

定点観測してみたくなります。

石井徹(TORU ISHII), @ishiit_aroka
2019年3月22日, 午後06:10 in Ai
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3月22日、突如更新されたGoogle マップの「新しい地図」が話題を集めています。

Google Japan Blogでは3月6日付けの投稿で日本のGoogle マップを刷新すると予告。それが反映されたのが22日の夜でした。Googleが「刷新」と説明した内容は、実際には地図データをGoogleが独自開発したものに変更する内容となっており、「現実とは異なる地図表示」が次々と発覚してインターネットユーザーの間で話題となっています。

■新しいGoogle マップで発覚した「奇妙なミス」

Google マップの新しい地図は「ストリートビュー画像、交通機関を含む信頼のおける第三者機関から提供される情報、最新の機械学習技術、地域のユーザーの方々からのフィードバックなどを活用し、新しい地図を開発しました」(Google Japan Blog)と説明されています。

この説明は大まかで抽象的なものですが、実際に発覚した「奇妙な表示不具合」と見比べてみると、Googleがこの地図で機械学習(AI、と言い換えてもよいでしょう)をどのように活用しているのかが分かります。

たとえば、地形図について、Twitterでは「航空写真の山影がマップで湖として表示されている」という表示ミスが報告されています。このミスからは、航空写真を画像認識(つまり、機械学習技術の活用)大まかな地形図を生成していることが推察されます。


また、「駐車場が道として描かれている」という表示ミスも多く発見されています。これは、Googleが「スマホユーザーの移動情報」を地図作成の参考にしていることを示唆するものでしょう。

AI活用の1つのトレンドとして、「プローブ情報」があります。クルマの位置情報を集約し、道路の交通情報として整理するもので、膨大な位置情報を分析するためにAIが欠かせません。今回のGoogle マップでは、その活用も行っていると見て良いでしょう。

たとえば、多くのユーザーのスマートフォンから位置情報を取得し「よく移動されている場所」を"道"として認識する仕組みを作れば、実際にその場所に行かなくても地図を描くことが可能になります。「駐車場が道路表示」となっている問題は、「地元の住民が通用路として使っている道を、プローブ分析によって道路と誤判断した」ものと推測できます。

新しいGoogle マップではほかにも「太めの路地と県道が同じ太さで描かれている」「経路案内で車道ではない道を案内する」といったエラーが報告されていますが、これらもプローブ情報を活用した仕組みによって引き起こされたエラーと思われます。

プローブ情報を地図の描画に活用する取り組みは、交通量が多い都市部では有効に機能しますが、地方では十分なデータが集まらないという問題もありそうです。新しいGoogle マップをざっとチェックしてみると、地方の山道や農道の情報が大きく抜け落ちている箇所があることに気付きます。

■ユーザー報告で改善する仕組み

前述のGoogle Japan Blog記事では「地域のユーザーからのフィードバックというのは、とても大事なポイントです。Google はテクノロジーを得意としますが、それぞれの場所を一番熟知している各地のユーザーから提供される情報は地図を作る上で欠かすことができません」として、ユーザーが地図の改善に協力するよう訴えています。

そして、「フィードバック機能」をリニューアルすると予告しています(なお、フィードバック機能は、日本のマップが更新された22日夕方の時点で、利用できない状態となっています)。

また、Google マップには「ローカルガイド」という機能があります。これはまさに、ユーザーによる地図改善をシステム化したものと言えます。ローカルガイドは希望するユーザーが参加できる取り組みで、Google マップのスポットに口コミや写真を投稿して、「ポイント」を獲得できます。ポイントは何かと交換できるわけではありませんが、ポイントを貯めると上がるレベル制度が取り入れられています。

Google Mapのユーザーガイド▲Google マップのユーザーガイド機能。質問内容からは、修正提案の審査にもユーザーの意見を取り入れていることが分かります

このローカルガイドに参加すると、たとえばレストランなどに立ち寄った際に「○○レストランについての情報募集」といったアプリ通知が届き、○×式で手軽に情報提供し、ローカルガイドのポイントを得られる仕組みが整っています。

これはつまり、「ユーザーが今いるお店について情報提供し、見返りとして"達成感"を得られる」もの。コストを掛けずに多くの情報を集めるために人間の脳の報酬系に上手く作用する仕組みと言えます。

ローカルガイド制度の「人を動かす仕組み」は、地図を低コストで作成するためにも応用できるでしょう。

■地図開発のアプローチを大きく変えるか

新しいGoogle マップでは今後、ランドマークなどを目印とした徒歩ナビ機能や、ダウンロードして使える「オフラインマップ」などが今後数カ月で追加されます。大幅リニューアルにより提供する新機能としては小粒な内容ですが、Googleは自前の地図開発に取り組んでいるのは、それ以上の意義を見出しているからかもしれません。

これまで日本のGoogle マップで使われていた主に地図は、ゼンリンが提供する住宅地図製品などをベースとしたものでした。今回、Googleマップのライセンス表示からZENRINの表示は消えており、地図の刷新を機にゼンリンとの契約を解消したものと見られています。

地図は、想像以上に変化が激しいもの。新しい道ができたり、住宅が建て替えられて店舗になったりといった変化が毎日起こっています。

ゼンリンでは地図作成のための調査に多くの人手をかけていることで知られています。同社の公開資料によると、1日1000人のスタッフが歩き回り、新たにできた住宅などを調査しているそうです。

もっとも、Googleもこれまで地図コンテンツを作っていなかったわけではなく、360度の景色を撮影する「ストリートビュー」など、自前で"足で稼ぐ"地図データの収集も進めています。とはいえ、多くの人手を動員し、精細な地図を作るゼンリンと比較すると、日本のGoogle マップに新たに導入された地図は、開発のアプローチも製品設計も対照的です。

新しいGoogle マップの画像認識やプローブ情報といったAIを活用した技術を駆使し、多くのユーザーから得られた情報を地図に取り込んで改善するという仕組み、そして「多少、正確でなくてもユーザーの報告を反映して直せばいい」という製品設計は、実にWeb企業らしい発想と言えます。

ここ数年でAI関連の技術は大幅に進歩し、日本のGoogle マップでのユーザー投稿の仕組み作りも回りはじめてきています。実はGoogleは海外で地図の内製化を進めており、今や50カ国で自前の地図コンテンツを導入しています。

もちろん、新しいGoogle マップの出来は素晴らしい出来ではなく、「劣化」という評価はおおむね妥当と言えるでしょう。新しいGoogle マップに見られる、山影を湖として表示する不具合は、地図としての信頼性を大きく貶めるものですし、私有地の駐車場を道路として表示してしまうのは、その土地の所有者や周辺住民を危険に晒すもので、すぐにでも修正すべき内容と言えます。ゼンリン地図ベースの従来版と比較して、明らかな「劣化」と評されても仕方のないものでしょう。

見方を変えると、Google マップが日本地図の内製化した今回の一件は、AIとユーザー情報の活用によって、人手で作った地図と同じ程度に高性能な地図を作れるという同社の自信のあらわれとも言えそうです。テクノロジー好きの筆者は、劣化を嘆くだけではなく、今後の改善がどのように進むかを期待したいとも感じました。


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