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Google「STADIA」の可能性を検証してみる「遅延は大丈夫?」「ゲーム機は駆逐される?」(西田宗千佳)

クラウドゲーミングは未来のゲーム機のスタンダードになり得るのか

西田宗千佳
2019年3月25日, 午後06:30 in gaming
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3月20日(現地時間)、米・サンフランシスコでGoogleが発表したクラウドゲーミング・サービス「STADIA」は、日本でも大きな反響を呼んでいる。残念ながら日本では開始時からサービスを利用することはできないが、「気になっている」という人も多いだろう。

とはいえ、詳細が発表されているようでいて、実のところSTADIAには不明な点が多い。そのあたりも含め、本記事では「STADIA成功の可能性」について検討してみたいと思う。

ただし、筆者は今回、他の地域に出張中であったため、Googleの発表を現地で取材しておらず、実機も触っていない。そのため、実機での遅延の状況などをコメントできる状況にない、その点をご了承いただきたい。

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向き不向きはあるが「今のゲームなら対応もできる」クラウドゲーミング

多くの人が気にするのは、「クラウドゲーミングって、本当にまともに遊べるの?」というところだろう。

答えは「向かないゲームは厳然としてあるし、環境を選ぶのも事実だが、まったくゲームにならない、という時代ではない」ということになる。

遅延がほぼゼロには絶対ならないし、ゲームの命は「自分の操作に合わせて動く気持ち良さ」にある。だから、クラウドゲーミングに伴う遅延について、ゲーマーであるほど神経質になるのもよくわかる話だ。

ちなみに、クラウドゲーミング・プラットフォームそのものはGoogleの発明でもなんでもない。もう10年以上にわたって色々な企業が取り組んできたものだ。そのため、何が厳しくてなにが大丈夫なのか、ということも見えてきている。

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まず重要なのは、ゲームの質・内容によって、遅延の影響が大きく異なる、ということだ。

確かに遅延の問題は大きい。毎秒60フレームとして、1フレームはだいたい16ms。遅延が100ms前後ある、ということになると、「そんなのゲームになるはずない」と思うかもしれない。だが、最近のゲームは、意外なほど遅延に寛容な作りになってきている。

近年、ほとんどのゲームにネットワークでの対戦・協力の要素が含まれており、ネットワーク間のレイテンシ(遅延)問題は避けられない。しかも、数十から数百msとかなり幅も広い。そのため、「ネットワーク遅延を想定したうえで、操作を予測して動きつつ外れたら補正」や「対戦相手との情報のズレを予測で補完する」技術を使い、遅延があってもゲームが成り立つように工夫されている。ネットワークゲームでキャラクターがジャンプしたり消えたりするのは、こうした補正がうまく行かなかった時に起こるものだ。

また、PCからゲーム機まで、多彩なハードウエア環境があるが、いずれも機器からディスプレイへの「表示遅延」がある。表示遅延は短い場合で1フレーム程度だが、ゲームモードなどのないテレビやディスプレイの場合、5フレーム程度ある場合も多く、50〜60msは遅延がある、ということになる。そこで、ゲームの操作にそうした遅延対策で補正を入れるタイトルも増えている。

そもそもFPSを代表とする、3Dのフィールドを走り回るゲームの場合、次に移動する方向が「1フレーム単位で瞬時に変わる」ことは少なく、補完的な動作を多少入れてやることで、遅延をある程度隠蔽することも可能だ。

一方で、まったく向かないゲームがあるのも事実。一般的に、8ビット/16ビット時代のレトロなシューティングや音ゲーは遅延に厳しい。ボタンを押したタイミングと表示が(ほぼ)同期していることが大前提となってゲームが組み立てられているためである。

他のゲームにしても、「操作する側に遅延は一切ないし、それを許さない」前提で作られているものになると、当然、遅延が操作の違和感として現れる。ゲーム内のメニュー操作も、意外と遅延が気になりやすい部分のひとつだろう。

すなわち、「全部がダメ」と考えるべきではなく、「遅延がある環境ではどうゲームを成立させるのか」を考えて開発していれば、無碍に否定するようなアイデアでもなくなってきている......ということなのだ。


「規模で殴る」やり方で遅延対策をしたGoogleの勝算

そしてなによりSTADIAの特徴は、「Googleが遅延短縮のため、とにかくできる手を打ってきた」ことにある。一番大きな手は、世界の7500か所にクラウドゲーミング用データセンターを配置することだ。

ネットワークによる遅延を短くするには、まず、プレイヤーとクラウドゲーミング・サーバとの距離を近づける必要がある。つまり、ネットワーク的な経路を短くし、物理的にプレイヤーの近くへサーバを置けば、遅延を減らせるわけだ。それはどの事業者もわかっているが、サーバを分散させることは、そのままコストの上昇につながる。しかも、運用し続けるほどに積み重なるランニングコストとして、だ。

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Googleは元々、世界中でサービスを展開するためにデータセンターを世界中にもっている。その設備と運用ノウハウを使い、クラウドゲーミング・サーバの運用を最適化する、というのがSTADIAのキモである。これは、よほどの意欲がないとできないことだ。

ちなみに、「5Gになれば遅延は短くなる」という人もいるが、これも正しくはない。5Gは確かに遅延を短くするが、それはあくまで、携帯電話から基地局までのいわゆる「セルネットワーク内」の遅延が大きく改善される、という事に過ぎない。5Gでのセルネットワーク遅延は1msクラスになるため、4Gよりははるかに有利になる。だが、そこからインターネットに出て行った時の遅延状況が変わらなければ、遅延の短縮効果は小さくなる。

だから、5Gではいかに、携帯電話の基地局の近くにサーバを置くか、という点がカギになる。これがいわゆる「エッジコンピューティング」だ。必要なものはローカル処理で済ませつつ、クラウドに送る場合もサーバを網内で近くに配置していくことで、遅延の解消を目指している。これは、今回のGoogleの考え方とまったく同じなのだが、それを広く、世界中で展開するのはある種の「力業」であり、Googleらしいやり方と言えるだろう。

別の言い方をすれば、クラウドゲーミングにおいて、Googleしかやっていない謎の新技術があるのかと聞かれれば、"少なくとも発表内容を見る限りにおいては存在しない"のでは、というのが筆者の印象である。だが、サーバハードの構成から配置、コントーローラーの設計に至るまで、「徹底」することで遅延は削れる。そのことが、STADIAのひとつの本質だ。


「ゲーム機を買わない」以上の価値が重要、YouTube連携がSTADIAの命

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一方で、STADIAを含めたクラウドゲーミングには、ビジネス上大きな問題もある。

「ゲーム機を買わずにゲームができれば、こんなにいいことはなく、市場は広がる」

そういう風に伝えられることは多い。だが、それは本当だろうか。すでに述べたように、クラウドゲーミングは昔からある。そして、そのほとんどすべてが「低コストにゲームができる」ことをウリにしてきた。

しかし、それらはうまくいっていない。

ゲームへ積極的にお金を払う「ゲーマー」層は、安心して安定したゲームができる環境にお金を払う。そのため、遅延の話があると反発もする。逆に「なんでもいい」人は、ゲームにさほどお金を払いたいとは思っていないわけで、よほどお得な状態でないと、わざわざクラウドでゲームなどしない。

PlayStation 4・Xbox One・Nintendo Switchなど、俗に「第八世代ゲーム専用機」が生まれる前には、「ゲーム専用機はスマホに飲み込まれるので、もはや大きなビジネスにはならない」という観測もあったが、それは結果的に大きな間違いであり、第八世代ゲーム機は、ゲーミングPCとともに大きなビジネスになった。「しっかりゲームを遊びたい」人は明確にいたのだ。ゲーマーではない人々も、「ゲームの質の向上」があってはじめて、再びゲームに目を向けてくれると考えるべきだろう。

クラウドゲーミングも同様だ。「コスト」しかメリットがないなら、それが成功するとは思えない。だからこそ、STADIAの本質を「ハードウエアがいらない」ことで語るのは間違いなのだ。

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STADIAの中で特に注目すべきなのは、YouTubeとの連動であり、ウェブとの連動である。簡単に配信ができるうえに、配信をクリックすればすぐにそのゲームがプレイできるという「導線設計」こそが、もっとも大きな要素になるはずだ。「ゲーム実況やゲーム動画を見るだけで、プレイする人がなかなか増えない」と言われることは多い。その理由は、ゲームをプレイさせるまでの導線の長さにある、と考えることはできないだろうか。Steamやゲーム機向けにおいても、ダウンロード連携はできているものの、プレイまでの待ち時間はかなり長い。店頭にディスクを買いに行くのはさらに大変だ。

クラウドゲーミングにより「ローカルにゲームをダウンロードする」ことがなくなれば、ゲームをプレイするまでのハードルはぐっと低くなるだろう。

では、いくらでプレイできるのか? どう買うのか? 定額制なのか?

そうした料金に関わる部分をGoogleは発表していないが、その部分にこそ、STADIAの勝ちを図る大きな要素がある。

クラウドゲーミングはSTADIAだけじゃない! 将来的には「あたりまえ」になる可能性も

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最後にもう一点、指摘しておきたいことがある。

冒頭から述べているように、クラウドゲーミングは「STADIAだけではない」ということだ。

マイクロソフトは「Project xCloud」というクラウドゲーミングサービスを準備中。こちらも「コンソールクオリティのゲームがどこでも、いつでも楽しめる」(マイクロソフト Head of Xboxのフィル・スペンサー氏)としている。

SIEは「PlayStation Now」を提供済みだが、これは元々、GoogleがSTADIAで考えているように、「プレイ動画からすぐゲームを楽しむ」「体験版はダウンロードせずにゲームを楽しむ」といった要素の実現を考えて作られたものだ。実際、2013年2月に行われたPS4の発表会では、PlayStation Nowを使った「インスタントゲーミング」構想について、かなりの時間を割いて説明していた。PS4世代ではその一部しか実現していないが、次の世代でここまでの構想を捨てる、とは考えづらい。

STADIAはAMDとのパートナーシップにより開発されているが、NVIDIAはクラウドゲーミング向けの環境である「GeForce NOW」を提供済みで、携帯電話事業者などに向けて「GeForce NOW Alliance」としての提供も始める。パートナーにはソフトバンクも含まれていて、2019年末にはサービスを開始する予定だ。これはまさに、「携帯電話事業者のエッジでサービスを提供する」形であり、5Gで遅延を短くするのに最適な形である。

つまり、ここから先、クラウドゲーミングは「ゲームをプレイするひとつの環境」として、当たり前のものになる可能性が高い。今後のゲームプラットフォーム戦略とは切り離せないものになるだろうし、もっと身近にもなるだろう。

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STADIAの弱点は、「どれだけのメーカーがSTADIA向けにゲームを最適化するか明確でない」という点にある。操作感を最適化するためのチューニングは必要となるはずだ。

今後クラウドゲーミング市場が伸びるなら、そこでSTADIAという有望な市場を無視するわけにもいくまい。一方、他のプラットフォームも含め、クラウドゲーミングが結局「安くゲームする環境」としか認識されないなら、成功はおぼつかない。

いかに「クラウドゲーミングにしかない利点」をプラットフォームとして打ち出せるか、そして、それをユーザーにわかりやすく示せるかが、大きな競争軸になるだろう。




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