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サービス特化の発表会はAppleの所信表明演説。「サブスク」型を連発する狙いとは?(石野純也)

ハードウェアなしだったのは少々残念ですが

石野純也 (Junya Ishino)
2019年3月27日, 午前10:00 in Apple
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Ittousai, 8月13日
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Appleが3月25日(現地時間)に開催したスペシャルイベントは、異例ともいえるサービスに特化した発表会でした。会場のスティーブ・ジョブズ・シアターに実機の展示はなし。ハンズオンコーナーもiPhone発表時とは違い、広々としていて開放感がありました。

ハードウェアが大好きな筆者としては残念な印象もありましたが、そちらは編集長のACCNに譲るとして、今回の発表で感じたことをつらつらと書き連ねていこうと思います。

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▲ハード、ソフト、サービスがシームレスなことがAppleの強みだと語ったティム・クックCEO。イベントではサービスの紹介に100%の時間が割かれました

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▲iPhone発表時のハンズオンエリアはご覧のとおり。開場と同時にハードウェアの発表がないことが判明しました

詳細なサービスの内容はすでに各記事でレポートされているため、そちらをチェックしていただきたいのですが、今回のイベントでは、Appleがサービス事業を強化していく方針を明確にしたというのがハイライトといえます。自身で発行するクレジットカードの「Apple Card」を除けば、いずれもトレンドといえる「サブスク」型のサービス。iPhone、iPadという強力なプラットフォームを持つ企業だからこそ、その上で展開するサービスにもユーザーを呼び込みやすいというわけで、戦略としては理にかなっています。

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▲発表されたサービスは、ほとんどがサブスク型。ただし、Apple News+以外の料金は発表されていません



実際、Appleの業績発表を見ると、iCloudやApple Musicなどが含まれるサービス事業は、安定して成長しており、ハードウェア事業と比べると季節変動が少ないのが特徴。端末の完成度や、ユーザーの買い替えサイクルに売上が左右されにくいため、会社として安定した運営ができるのはメリットと言えます。いわゆるリカーリングビジネスというやつです。

単にサービスを強化しただけでなく、これらの上で配信されるコンテンツに対し、積極的に投資していく意思を示したのも、今回の発表のポイントでしょう。ゲームの定額配信サービスの「Apple Arcade」や、Apple自身が手掛けるプレミアムな映像コンテンツの「Apple TV+」は、プラットフォーマーとして中立的な立場を取るというより、積極的にコンテンツを作り出す方向に舵を切ったと言えます。

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▲Appleにしかないゲームが100以上揃うApple Arcadeは、プラットフォームから一歩踏み込んだサービスと言えます

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▲Apple TV+も同様で、Apple自身がコンテンツ制作に関わっていくスタイルを取る

ただ、Appleが主体となってコンテンツ制作を行い、サービス事業者として成長していくためには、ハードウェアの制約は少ない方がいいでしょう。それもあって、刷新されたApple TVやオリジナルコンテンツのApple TV+は、他社のプラットフォームにも開放されます。すでに、Apple MusicはAndroidスマホにも対応していますが、これと同様、Apple TVもサムスンやLG、ソニーなど、他社のスマートテレビに対応する予定。競合ともいえる、Amazonの「Fire TV」に対応することも表明されました。

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▲他社のスマートテレビにも対応。Appleのイベントでサムスンやソニーのロゴを見るのは、不思議な気持ちになってくる

一方で、Apple ArcadeはiOS端末やMac OSのみに閉じていますが、これは、ハードウェアの制約を強く受けるゲームというコンテンツの性質を考えてのことかもしれません。ソニーや任天堂、マイクロソフトが自社でハードウェアを用意し、その上でコンテンツを展開するというビジネスモデルに近いといえます。ゲームのクオリティを維持することを考えると、闇雲にプラットフォームを広げてしまうより、ある程度閉じた環境の方がいいという判断があったのかもしれません。

そう考えると、雑誌や新聞を加え、スマートフォンやタブレットならではの見方を提案した「Apple News+」がAppleのエコシステムのみに閉じているのが不自然にも見えてきますが、これはコンテンツの問題が大きそうです。Apple News+はイベントと同日にサービスが開始されましたが、展開国は米国とカナダのみ。秋になってようやく、英国とオーストラリアへと拡大しますが、他のサービスと比べると海外展開のペースが緩やかです。

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▲Apple News+もiOS限定のサービス。現時点では、展開国も米国とカナダだけ

日本では、Apple News+の前身となる無料のキュレーションアプリの「Apple News」も展開されていません。英語圏以外に広げようとすると、言語の違いに由来するレイアウトの問題が出てきますし、まずもってコンテンツを持つ出版社と1つ1つ交渉していく必要もあります。日本における雑誌の定額サービスといえば、ドコモの「dマガジン」が有名ですが、あれと同じことをやるだけでも、海外の企業だと音楽以上にハードルが高くなりそうで、体制構築も必須となってきます。

そのため、Appleが、現時点ではプラットフォームを他社に開放するのは早計と考えたとしても不思議ではありません。とはいえ、サービス事業を単体でスケールさせるためには、どこかの段階でプラットフォームの限定を外した方がいいのは確かでしょう。iPhoneのシェアがここまで高いのは、米国や日本などに限定されるため、欧州やアジアできっちり事業をするうえでは、Androidへの対応は欠かせません。ゲームほどハードウェアに依存する要素は少ないため、状況が変われば、他社への提供もあるのではと見ています。

今回発表されたサービス群の中で、異質だったのがApple Cardです。サブスクでユーザーから毎月お金をもらうビジネスではない点や、提供国が米国に限定されている点も他のサービスとは大きく違うところです。決済サービスは地域性だけでなく、規制当局との兼ね合いもあるため、うかつにサービスを広げられないのが実情なのかもしれません。

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▲Apple自身が手掛けるクレジットカードのApple Card

実際、Apple Cardを利用するうえで前提になる個人間送金サービスの「Apple Pay Cash」は米国以外では展開されていませんし、発表会で見せた自由に返済できる仕組みも、ユーザーが返済額をある程度自分で決めて手続きするという米国のクレジットカード事情を反映したもの。月1回、自動で銀行口座からお金が引き落とされる日本とは、大きく前提条件が違うのです。確かに支払額がグラフで可視化されるところは便利そうではありましたが......。

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▲返済額を自分で決めてすぐに支払う機能などは、米国の決済習慣に根差したものと言えます

このApple Cardに限らずですが、今回発表された一連のサービスは、ローカライズがどこまでしっかりできるのかが課題になりそうだと感じました。いくらUIがよくても、コンテンツは中身が命。内容に興味がなかったら使いませんよね。Apple TV+の紹介で出てきたゲストをことごとく知らなかったときには、この点が若干不安になってしまいました。

ただ、AppleにはApple Musicのような実績もあり、App Storeは国ごとに合わせてローカライズがきちんとされています。NetflixやAmazonのように、日本向けの番組制作まで行うのかは気になるところですが、逆にこうしたローカライズがおろそかになってしまえば、競合には勝てません。具体的な内容は、サービスインが近くなれば明らかになるのでしょう。その意味で、今回のスペシャルイベントはあくまで所信表明演説に近いものと捉えておいた方がよさそうです。




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