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「QRコード決済」統一化への近くて遠い道:モバイル決済最前線

経産省主導「JPQR」対応巡り温度差

鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2019年4月1日, 午後12:45 in payment
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統一QRコードの仕様が公開へ

参入表明のものも含め、現時点で20近いサービスが乱立状態にある「(QR)コード決済」(アプリ決済)だが、これらサービスが決済時に利用するQRコードやバーコードについて、統一的な仕様が用意されていないことで不利益な状況が生まれつつある。例えば、店舗によって利用可能なサービスが異なることで、利用者はそれらをある程度カバーするために複数のアプリをスマートフォン内にインストールしておき、適時切り替えて利用しなければいけない。店舗側にとってみれば、より多くの顧客のニーズに応えるためには複数のサービスを同時に扱えるようにしておく必要があるが、これは「どのサービスで決済しますか?」という確認作業が毎回必要となり、店員もPOSやタブレット上でサービスごとに異なるアプリ(「契約店アプリ」などと呼ばれる)を毎回起動しなければならず操作が煩雑だ。

こうした利用者負担、特に加盟店(契約店)の負担を軽減し、より便利で使いやすいキャッシュレス環境構築を目指して進められているのが、経済産業省ならびに業界団体であるキャッシュレス推進協議会が策定する「統一QRコード(バーコード)」だ。決済で利用されるQRコードならびにバーコードの仕様は各社まちまちだが、このうち基本的なデータブロック(データ先頭の識別子や加盟店情報など)を共通の仕様とすることで、例えば契約店アプリや利用者アプリでQRコード(バーコード)を読み込むと自動的にどの決済サービスかを認識し、煩雑な切り替え操作なくそのまま決済処理へと移行することを可能とする。

統一QRコード(バーコード)については昨年2018年末ごろから「間もなく最終仕様が公開できる」といわれていたが、このたび統一仕様の名称が「JPQR」となってロゴも決定。3月29日に経済産業省で開催された「プレミアム"キャッシュレス"フライデー」のキックオフイベントにおいて、今年2019年10月1日にスタートする消費税増税に合わせた消費者還元ポイント施策を実施するための予算が通過したことと、その仕様に関する詳細をまとめた「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン」が公開されたことが経済産業大臣の世耕弘成氏によって発表され、具体的に動き出す運びとなった。本稿ではこの概要について解説しつつ、今後の見通しや実際について簡単にまとめたい。

JPQR
▲キャッシュレス推進協議会が進める統一(QR)コード決済「JPQR」

実際にどのようなことが規定されているのか

3月29日のタイミングで公開されたのは「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン」と「統一用語集」だ。キャッシュレス推進協議会の当該ページでは統一技術仕様ガイドラインについて「利用者提示型:CPM(Consumer-Presented Mode)」「店舗提示型:MPM(Merchant-Presented Mode)」の2種類のPDF文書のほか、各社によってまちまちな関連用語をまとめた統一用語集のPDF文書の主に3つが参照できる。

QRコード(バーコード)決済におけるQRコードまたはバーコードは、決済の際に必要になる「相手が誰々でいくらを支払うのか」といった基本情報がデータの羅列で示され、これを店舗側または利用者側のいずれかが読み取ることで決済処理が進むという手順になっている。だが内部のデータフォーマットはそもそも統一見解が存在せず、各社にとってまちまちで実装されているため、「サービスごとに異なるアプリを用いなければ中身を認識できず、決済処理も進まない」といった問題につながっている。

各社の説明によれば、そもそもバーコードやQRコードは各社によってサイズそのものがまちまちであり、動的コードにおいては安全性向上のために行われる一定時間でのリフレッシュ(更新)の周期などが異なっている。それらを問題なく処理するために仕様を合わせたうえで、さらに「どの会社のサービス」かを簡単に識別できるよう、データフォーマットの先頭に識別子などの共通情報を規定し、残りの領域(ペイロード)で各社が独自実装を行っていくという仕組みになっている。例えばバーコードではCode 128方式でデータが格納されたうえで、最初の4桁が本ガイドラインに準拠していることを示す識別子、次の4桁が事業者識別子、その次が桁を規定しないトークン(安全向上のために決済タイミングによって変化する)、そして各社独自実装の自由領域という並びになっている。

QRコードについても同様の規定があり、1セルあたりのサイズのほか、BASE64での冒頭のデータ並びや識別子が定められている。決済向けのQRコード仕様については、もともとクレジットカードなどでの業界標準を定めているEMVCoが統一仕様を持っているのだが、今回のJPQR同様にサイズや識別子程度の規定しかなく、"万国共通で利用できる共通仕様"のような体裁にはなっていない。そのため、今回JPQRが目指すような数多ある複数のサービスを横断して処理を可能にするには、もう一段階踏み込んで詳細を詰める必要があるという。

JPQR
▲EMVCoの規定する統一QRとJPQRの仕様の差異の例

QRコード決済の乱立は日本だけでなく海外でも起きており、特に東南アジア方面でその傾向がみられる。実際、台湾、香港、シンガポールなどでは複数のサービスをまとめて1つのアプリで複数の異なるQRコードの取り扱いが可能な仕組みが展開されており、JPQRもまたこの方向性を目指していると考える。後述するが、この統一QRが最も有効なのは加盟店(契約店)が静的QRコードを掲示して利用者がアプリを使って支払う場合で、加盟店(契約店)が限られた店先にサービスごとに何個もQRコードを掲示せずに済むためスペースの節約になる。下の写真はシンガポールで利用されている「SGQR」だが、表示されている5つのアイコンから5種類のサービスを束ねたものであると判断できる。

JPQR
▲シンガポールではSGQRにより、複数のサービスを統一QRで掲示することができる

統一QRで実現できること、そして本当に統一できるのかということ

統一QRは加盟店(契約店)や利用者にとってはメリットとなるものの、サービスを提供する事業者にとっては必ずしもそうではない。まず先ほどのSGQRの例にもあるように、「数ある決済サービスの1つ」ということで埋没する可能性が高いこと、そして統一QR発布後の展開方法にもよるが「後からやってきた新参のサービス事業者が(それまで苦労して加盟店開拓を行ってきた)既存のサービス事業者に相乗りする形で事業エリアを拡大できる」可能性だ。後者については個別契約が必要なため容易ではないと思うが、ただでさえ事業者数が雨後の竹の子のように増えつつある状況で埋没することは避けられず、「誰にとってもややこしいだけ」という状態になり得る。

この統一QRについて、例えばサービス間で共通のQRコードで決済を可能にする「Smart Code」の展開を計画するJCBの場合、「4月のサービス開始後、統一QRが発布された段階でそちらの仕様に寄せていく」と明言している。実際のところ、Smart Codeはソフトウェアに少々手を加えることで対応が可能であり、サービス開始が統一QRガイドライン発表後だというタイミングを考えても、それほど難しい話ではない。しかもSmart Codeに載ってくるメルペイなどの決済サービスの統一QR対応いかんにかかわらず、データ冒頭のヘッダ情報をいじるのみで済む。Smart Codeの本質は複数のQRコード決済への同時対応を可能にするアクワイアリングであり、JCBにとってデメリットはない。

問題なのは各サービス事業者のほうだ。例えばLINE Payは統一QRに寄せていく意思を見せているものの、「(サービス開始から)4年という実績もあり、既存の加盟店含め全体を寄せていくのはなかなかに難しい」(LINE Pay取締役COOの長福久弘氏)と述べている。LINE Payは先日メルペイとの提携を発表し、互いのサービスの相互乗り入れを発表したほか、「Mobile Payment Alliance」を提唱して共通プラットフォーム模索に賛同する他のサービス事業者を求めている。相互連携ではシステム接続や手数料の分配をはじめ、QRコードやバーコードを互いに認識できる仕組みを構築する必要があるが、少なくともこうした手間よりも統一QR導入の方がプライオリティが低い状況がうかがえる。これは「手間だけかかって既存事業者にはメリットがない」という状況を端的に表していると筆者は考えている。

先日、NHKが「キャッシュレス普及へ 大規模な実証実験実施へ」というタイトルで総務省を主体にしたスマートフォンによるQRコード・バーコード決済実験が行われる旨を報じており、PayPay、LINE Pay、NTTドコモなど10事業者が参画し、和歌山、福岡、長野、岩手の4県、およそ3万店舗を対象に8月1日からスマートフォン決済を可能にするという。この中で、PayPayを除く事業者が統一QRを採用した実験を行うとNHKでは報じているが、LINE Payによれば「目標にはしているが現時点ではなんともいえない」と述べており、PayPayについては「対応を含めて説明できる状況にはない」とのことだった。

JPQR▲NHKが報じた「キャッシュレス普及へ 大規模な実証実験実施へ」によると、PayPay以外の事業者が夏に統一QRを使ったキャッシュレス決済の実証実験を行っていくという

各社のヒアリングを行っていたところ、NHKの報道で統一QRを採用するとされていた会社でさえ「実際に当日までに準備できるかはわからない」と述べている。ある関係者は「取り組みに参画している一部金融機関の情報を基に報じたと思われるが、実際のところ不透明な状況」と語っている。もし統一QRが有効化されるとPOSのソフトウェア改修や静的QRを採用する加盟店の掲示方法の切り替え、移行タイミングで発生するトラブルへの対処など、ある程度の混乱とコストが発生する。「統一の意思は見せても先延ばし」したいというのが本音だろう。

ただ実際のところ、ユーザー側が利用するCPMでアプリを統一するメリットはそれほどなく、むしろ加盟店側のMPMが問題となる。一部のPOSや決済端末についてはアプリケーション側で自動的にサービスを判定するプログラムが用意されているケースもあり、JPQRの取り組みがなくてもある程度はカバーできる状況にある。問題はサービスごとに異なるQRコードを用意して店頭に配置、あるいは貼り付けておく必要がある静的QRを採用したMPMの場合で、前項でのSGQRの例でもわかるようにJPQRの採用は大きなメリットとなる。一方で、JPQRを採用しないAlipayやWeChat Payなどの場合は変わらずQRコードが横に貼り付けられるわけで、完全統一への難しさが改めて浮き彫りになる。

JPQR▲3月29日に開催された経済産業省でのキックオフイベントでQRコード(Origami Pay)を使ってカフェで買い物をする経済産業大臣の世耕弘成氏



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