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乱立「QRコード決済」、淘汰進まない懸念 キャッシュレスの停滞要因に:佐野正弘のITトレンドウォッチ

ウォレットの分断はキャッシュレスの停滞を招く

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年4月19日, 午後04:00 in mobile
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連載「佐野正弘のITトレンドウォッチ。今回は、ITの中でいま最も競争の激しい分野の1つとなってる「QRコード決済」とその影響について、触れていきたいと思います。

いまだ増え続ける「〜ペイ」

QRコード決済に関する2019年の動向を振り返ってみても、非常に大きな動きが相次いでいることが分かります。例えば2019年2月にはメルカリがスマートフォン決済の「メルペイ」の提供を開始し、2019年3月にはQRコード決済にも対応させています。また2019年4月には、KDDIがQRコード決済の「au PAY」を開始したほか、2019年7月にはセブン&アイホールディングスが「セブン・ペイ」を開始予定であるなど、現在も参入が相次いでいる状況です。

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▲KDDIは2019年4月9日より「au PAY」のサービスを開始するなど、2019年に入ってからもQRコード決済に参入する企業は増加の一途をたどっている状況だ

利用者獲得に向けたキャンペーン施策も盛り上がりを見せています。2018年に100億円を還元するという大胆なキャンペーン施策で注目を集めた「PayPay」は、2019年2月から再び100億円の還元キャンペーンを実施。内容にやや変化はあるものの、最大で20%還元が受けられることが注目を集めていますし、「LINE Pay」も4月18日より、「平成最後のPayトク祭」と称して、やはり最大で20%を還元するキャンペーンを実施しています。

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▲キャンペーン施策も盛り上がりが続いており、「LINE Pay」も2019年4月18日から、最大20%の還元を実施する「平成最後のPayトク祭」を開始している

一方でQRコード決済は、利用できる店舗が少ないことが課題となっていますが、加盟店開拓に向けてもいくつかの動きが進んでいるようです。KDDIは楽天と提携して「楽天Pay」の加盟店プラットフォームを活用するほか、メルペイとも共同で加盟店開拓を推し進める方針を示しています。またLINE Payもメルペイと提携し、双方の加盟店を相互開拓する方針を打ち出しています。

乱立のQR決済、淘汰は進まないと思う理由

このように、非常に大きな盛り上がりを見せているQRコード決済なのですが、一方で懸念の声が挙がっているのが、参入事業者が多すぎて過当競争気味だということです。事実、主要なプレーヤーだけでも「Origami Pay」「楽天Pay」「LINE Pay」「PayPay」「d払い」「au Pay」「メルペイ」......と、かなりの数が挙げられている状況です。消費者からしてみれば、いくらお得なキャンペーンが多いとはいえ、余りにもサービスが多すぎてどれを使えばいいのか分からないというのが、正直な所ではないでしょうか。

ではそれらの事業者が、競争激化の末に淘汰が進むのかというと、その可能性は低いというのが筆者の見立てです。理由の1つは、多くの企業にとってQRコード決済は既に存在する金融・決済基盤の"出口"の1つに過ぎないことです。

そのことを象徴しているのが、最近参入を果たしたメルペイやau PAYです。実際メルペイはメルカリの売上金などを決済に利用する仕組みですし、au PAYは既に提供している決済サービス「au WALLET」の基盤を用いており、プリペイドカードやそこにチャージできるau WALLETポイントの残高を利用する仕組み。QRコード決済が既に自社が持つウォレットの活用の幅を広げる手段の1つとなっていることが分かります。

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▲au PAYはau WALLETの基盤を用いるため、既に1000億円超の残高を持つことを強みとして訴えていた

他のQRコード決済サービスを見ても、ECやSNS、携帯電話などで既に多くの顧客とウォレットを持っている企業が主導していることが多く、決済手段の1つとしてQRコード決済を追加したに過ぎない様子が見えてきます。そうした基盤がなく、純粋にQRコード決済を事業にしようとしているのはOrigamiくらいなものなのでしょう。

ではなぜ、そこまでして各社がQRコード決済に力を入れるのかというと、どこで、誰が、何を買ったかという「購買データ」を取得する狙いが大きいといえます。QRコード決済は自社のIDに紐づいたウォレットを使って決済するため、現金では難しかった購買データを容易に取得でき、それを企業のマーケティングに活用してもらうなど、データを活用した新たなビジネスへとつなげることが大きな狙いといえるでしょう(もちろんプライバシーに配慮する必要はありますが)。

そうした動向を先取りしているのが共通ポイントプログラムです。「Tポイント」から離脱する店舗が増える増える一方で、楽天が実店舗でのポイント利用を積極化したり、NTTドコモが「dポイント」を新しい顧客基盤として位置付けたりしているのも、ポイントを通じて顧客の購買データを取得するという、企業間競争が激化しているが故なのです。

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▲NTTドコモが2015年に「dポイント」を開始するなどポイントに関する競争も激化しているが、その背景には購買データの奪い合いがある

ゆえに仮にQRコード決済で"負け組"が生まれたとしても、元々の顧客基盤やウォレットの利用自体が減る訳ではなく、新しいビジネスの幅が狭くなるというだけに過ぎないのです。それゆえ競争の末に店舗網やQRコードの統一化などは進むかもしれませんが、事業者そのものが撤退したり、統合したりすることでウォレット自体が減る可能性は低いでしょう。

ウォレットの分断で"キャッシュレス決済停滞"も

そうした状況が長く続くと懸念されるのが、ウォレットの分断によるキャッシュレス決済の停滞です。現在各社のキャンペーンなどを見ていると、登録したクレジットカードでの決済よりも、ウォレットにチャージされた残高で決済した場合の方が優遇されやすい傾向にあるように見えます。これは自社のQRコード決済を継続的に使ってもらうため、自社に残高が残るウォレットへのチャージ、つまり消費者の財布を"囲い込む"ことに力を入れているが故といえるでしょう。

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▲2019年5月31日まで開催予定の、PayPayの100億円キャンペーン第2弾は、PayPayにチャージされた残高で支払った時だけ20%の還元が受けられる仕組みに変更された

その結果として起きるのが、消費者が持っているお金が、サービスによって分断されてしまうことです。例えば筆者は現在、PayPayに約8千円、LINE Payに約2万円、au PAYに約2000円の残高がチャージされていますが、サービスが異なるためこれらの残高を1つにまとめて、3万円の買い物をすることはできません。こうした事態は現金やクレジットカードでは起き得ないものです。

つまり各社が消費者の財布を囲い込み、なおかつその財布を管理する事業者が減らないとなると、消費者の財布に入っていたお金が分断されて利用や管理が現金以上に複雑なものになり、使い勝手が悪くなることで結局使わなくなってしまう、という問題を起こす可能性が高い訳です。


FeliCaベースの電子マネーと同じ轍を踏むか

これと同じことが起きているのが、FeliCaベースの電子マネーです。実はFeliCaベースの電子マネーは、開始して間もない頃から「Suica」など交通系サービスのほか、「楽天Edy」「WAON」「nanaco」「iD」「QUICPay」と、プレーヤーに大きな変化は起きていません。

これまでに起きた大きな変化といえば、「Edy」を運営していたビットワレットが楽天に買収され、楽天Edyとなったくらいなもの。それ以外はいずれも交通系企業やスーパー、金融事業者など大きな顧客基盤を持つ事業者がバックに付いていたこともあり、プレーヤーの数自体は減っておらず、消費者にとってはお金が分断される状況が長く続いているのです。

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▲2011年にKDDIと楽天が「Edy」(現在の楽天Edy)に関して提携した時の写真。FeliCaベースの電子マネーは、楽天がEdyの運営会社を買収した以外に大きな変化が起きていない

昨年末に大きな話題となった"PayPay騒動"の時には、普段ポイントが付かない高額商品をこぞって買い漁るなど、キャッシュレス決済にも知識があり、なおかつ"お得感度"の高い人が積極的にPayPayを利用していました。ですがキャッシュレス決済を推し進める上で重要なのは、そうした感度の高い人ではなく、そうした動向にも興味を持たなかったような人達に、いかにキャッシュレス決済を利用してもらうかということのはずです。

そのためには1つの財布でどこでも使える分かりやすさが求められるはずなのですが、既に強力な顧客基盤を持つ企業が多いだけに、消費者のお財布を囲い込むことに対してはどの企業も一歩も引かない構えのようです。こうした状況が続けば電子マネーの二の舞となり、手段は増えども利用者が増えないという、現在のキャッシュレス決済と変わらない状況が続いてしまうのではないかと筆者は考えています。

連載「佐野正弘のITトレンドウォッチ



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