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IT企業が相次ぎ参入するタクシー配車アプリは日本の交通課題を解決できるか:佐野正弘のITトレンドウォッチ

ライドシェアの規制緩和が進まない現状にタクシー業界と手を組むIT企業

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年5月6日, 午後12:30 in transportation
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連載「佐野正弘のITトレンドウォッチ。今回は、競争が激しくなりつつあるタクシー配車アプリの動向と、今後の課題などについて触れていきたいと思います。

タクシー配車アプリは、実はスマートフォンの黎明期から存在する古くて新しいサービスで、JapanTaxiの「JapanTaxi」が最も良く知られているかと思います。ですが国内で、このタクシー配車アプリが盛り上がりを見せるようになったのは、比較的最近のことです。

JapanTaxi
▲タクシー配車アプリ大手の「JapanTaxi」。積極的な機能強化がなされており、2018年の「Google Play ベスト オブ 2018」では「ベストアプリ2018」にも選ばれている

その要因は、やはり参入する事業者が増えたからでしょう。元々タクシー配車アプリは、日本交通が母体のJapanTaxiと同様、タクシー会社が提供するものでした。ですが2017年頃から、IT業界よりこの分野に参入する企業が増え、急速に競争が激しくなってきたのです。

実例を挙げると、ディー・エヌ・エーは神奈川県タクシー協会と2017年より実証実験を進め、2018年4月に神奈川県で「タクベル」としてサービスを開始。同年12月には「MOV」とサービス名称を変更し、東京都にも進出を図っています。

mov▲ディー・エヌ・エーのタクシー配車アプリは、2018年12月に「タクベル」から「MOV」へと名前を変え、神奈川県と東京都でサービスを提供している

ライドシェアアプリ「Uber」を提供する米ウーバーテクノロジーズも、2018年7月に兵庫県の淡路島でタクシー配車の実証実験を実施しており、9月には愛知県名古屋市でタクシー会社と組んでタクシー配車サービスの提供を開始。その後さらに5つの市へととサービスエリアを広げてきています。

そしてソフトバンクと滴滴出行の合弁会社である「DiDiモビリティジャパン」も、2018年9月より大阪府でサービスを開始しており、2019年4月には東京都と京都府にも進出を果たしています。

DiDiモビリティジャパン
▲ソフトバンクは滴滴出行と合弁で「DiDiモビリティジャパン」を設立して大阪でサービスを開始。2019年には東京や京都への進出も打ち出している

なぜIT業界からの参入が急に増えたのかといえば、当初目論んでいたライドシェアサービスの日本展開が難しくなったためと考えられます。ライドシェアはここ最近、米国やアジアなどで急速に人気を高めていますが、一方でライドシェアに仕事を奪われるとして、タクシー業界からの反発が多いのも事実です。

実際、筆者が今年、スペイン・バルセロナで実施された「MWC 2019 Barcelona」を取材する直前には、バルセロナ市内でタクシー運転手が、ライドシェアに反発するデモを実施していました。しかもそれを受ける形で、Uberなどのライドシェアサービスはバルセロナからの撤退を余儀なくされたそうです。

taxi▲ソフトバンクグループなどが力を入れるライドシェアは成長を続けているものの、日本同様タクシー会社の反発で参入ができなかったり、撤退したりするケースも出てきている

そして日本でも、Uberなどがライドシェアサービスを展開するべく規制緩和の可能性を模索していたようですが、やはりタクシー業界からの反発が強く、政府がライドシェアの規制緩和に動く可能性が低いというのが現状です。そうしたことから規制緩和によるライドシェアへの参入を期待していたIT関連企業も、実現の可能性が低いと見てタクシー会社と組み、タクシー配車アプリを提供するという現実路線を取るに至ったといえるでしょう。

ですがAIを活用した乗客の需要予測や、クレジットカードなどによる事前決済など、ライドシェアで培われた技術や仕組み自体はタクシー配車アプリにも十分活用できるものですし、MOVが2018年12月に展開した「0円タクシー」のようなユニークな取り組みも、従来のタクシー会社には難しい、IT関連企業ならではといえます。少子高齢化の影響でタクシー利用者が減少する中、タクシー会社もより利用効率を高め売上を上げる方策が求められていただけに、タクシー配車アプリのプラットフォーム増加にはメリットがあったといえます。

Taxi▲MOVが2018年12月に展開した「0円タクシー」。タクシー自体を広告として活用することにより、無料で乗車できる仕組みだ

最近では、東京五輪を控え訪日外国人が増えていることから、インバウンドで増加したタクシー利用の取り込みにも期待がかけられているようです。特にDiDiやUberなど海外でも展開しているアプリは、海外の顧客にそのまま利用してもらいやすいことから国内でのタクシー利用につなげやすいといえます。

筆者も昨年大阪でタクシーに乗った際、ドライバーから訪日外国人は増えているものの、海外のライドシェアサービスを通じて違法な白タクを利用しているため、その恩恵を受けられないという話を聞いたことがあります。それだけに、タクシー配車アプリによる新たな顧客の開拓は、大いに期待される所かもしれません。

Taxi
▲DiDiはアプリのローミングによって、日本と中国それぞれのユーザーが、互いの国でDiDiによる配車を利用できるほか、自動翻訳付きインスタントメッセージも利用できる

ただ、タクシー配車アプリを手掛ける事業者の動向を見ていると、その注力度合いが都市部にかなり限られているのが非常に気になります。

冒頭で触れた通り、多くの配車アプリは提供エリアが東京や大阪などの大都市圏に限られています。サービス開始して間もない企業が多いだけに、提携するタクシー会社をすぐ増やすのは難しく、エリア展開を慎重に進めているというのは理解できるのですが、AIによる需要予測は人の流れが多くないと効果が薄いでしょうし、訪日外国人対応も地域によってはあまりメリットがないものです。注力する機能の多くが都市部での利便性を高めることに重点が置かれているように見えてしまうのです。

実際地方都市を訪れると、時間帯によってタクシーよりも運転代行の方がニーズが高まるケースがありますし、より人が少ない地域に行けば、今度はタクシーの運転手が減少しているため、全てのタクシーが出払ってしまい呼んでもなかなか来ないというケースにも遭遇します。都市部とは求められるニーズや傾向、抱えている課題も全く違っているのです。

その一方で地方は都市部より人口が少なく、企業からしてみれば収益性が低い上、ドライバーの運転は自動運転が広まらないと解消が難しいなど、抱えている課題は現在のテクノロジーだけでは解決が難しいものも少なくありません。それゆえタクシー配車アプリを提供する企業が、地方への参入、さらには地方ならではのニーズに応えた仕組みを積極的に用意してくれるかという点には、不安がある訳です。

参入が増え競争が進むことは大いに歓迎したい所ですが、その恩恵が受けられるのが、元々交通網が充実している大都市に限られてしまうとなればかなり残念なことです。より交通に不便を感じている地方でのサービスが強化され、社会課題の解決に積極的に取り組んでくれることにも、期待したい所です。



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関連キーワード: android, app, didi, iphone, JapanTaxi, taxi, transportation, uber
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