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「素人」のiPadアプリがWWDCデビューするまで。Morpholio 長谷川徹氏インタビュー

デザイン力はスーパースキル

Ittousai, @Ittousai_ej
2019年6月3日, 午前09:01 in Ar
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Morpholio 共同創業者 長谷川徹氏

(アプリ開発経験ゼロから、自分の本業用ツールとして iPadアプリを作ったところ多数のユーザーに支持され、アップルの開発者カンファレンスWWDCでフィーチャーされるまでになった経歴の開発者、Morpholio 長谷川徹氏のインタビューをお届けします)


2010年発売の初代から9年、タブレットの代名詞となるまで普及したiPad。年々の処理速度向上やApple Pencilの登場もあり、かつての「iPhoneアプリを大画面レイアウトにしたやつ」でもなければ「PC/Mac向けアプリの簡易版」でもない、タブレットならではの新しい世代のアプリが着々と進化を遂げつつあります。

Morpholio

Morpholio LLCが開発するデザイン&建築図面アプリ「Morpholio Trace」や、インテリアデザイン支援アプリ「Morpholio Board」は、そうした最先端を感じさせるiPadアプリです。どちらもプロフェッショナルの実用向けでありつつ、AR(拡張現実)を単なるギミックではなく超実用的に使うスケッチ支援や、機械学習を使い膨大な家具カタログからユーザーのセンスと閃きで検索など、門外漢が見ても唸らされる機能が多数。

プロの建築家やインテリア関係者ならずとも、漫画家やグラフィックアーティストの仕事に、あるいは趣味のデザインやお絵かきに、自宅の模様替え検討まで、目を輝かせる人が多そうなアプリです。

Tim Cook

2017年の開発者カンファレンスWWDCでは、アップルのCEOティム・クックによるキーノートプレゼン中に Morpholio Traceがフィーチャーされたほか、iPad体験アプリとして各地のアップルストアでも活用されるなど、まさにiPadアプリの「お手本」となっています。

先進技術の導入や専門職の要請に応える品質から、よほど老舗のCAD系ソフトウェア開発会社か、新興企業にしても経験豊富なアプリ開発者が手がけているのだろうなと思わせますが、実はこのMorpholio、もともとアプリ開発の経験がまったくない建築家4人組が、iPadの登場に新しいインターフェースの可能性を見て、自分たちの仕事を便利にする道具を作ろうと思い立ったことが開発のきっかけです。

しかも2012年以来、Morpholio Traceをはじめ4種類のデザイナー向けアプリをリリースし、多くのサブスクリプション加入者と活発なコミュニティを擁するようになった今でも、アプリ開発会社に実作業をアウトソースしたり、4人のほかにアプリ開発部隊を組織することなく、いまだにプロの建築家が、同じ4人組で開発を手がけているとのこと(うちコーディングするのは3人)。

伝統的な工芸や芸術の分野ならば、仙人じみたアーティストが作品づくりの前に自分だけの特別な道具を発明したり改良することから始めるイメージがなんとなくありますが、現代のソフトウェア開発と建築というどちらも高度に専門的な分野で、文字通り自分の道具作りを成功させたうえに、多くのユーザーを集めてしまうのは驚きです。

このMorpholioを設立した4人組のひとりであり、現在もニューヨークを拠点に建築家として活躍する長谷川徹氏が講演のため来日されると聞き、さっそくお話を伺ってきました。内容は主に「素人」が作ってしまったきっかけ、Morpholioアプリの発想、そしてテクノロジーとインターフェース、デザインの関係について、これからのテクノロジーと人について。

ペンシル、GPS、マップ、カメラにAR。モバイルの強み、iPadの総力結集

Morpholio

iOS開発者としてのお話を伺う前に、まずはMorpholioアプリについてざっくりと。基本は建築スケッチ、特に写真や建築模型を元にしたトレース機能が強力なアプリです。

背面カメラで撮影した現場の写真を元に、レイヤーを重ねてスケッチするのはまあ普通ですが、Morpholio Traceでは拡張現実ライブラリARKitを使うことで、写真を撮ると同時に床や垂直水平を自動認識し、正確な縮尺のあるグリッドを重ねて、そのまま正しい透視図が描けます。パースに対応したバーチャル定規など、スケッチ支援機能も多数。



建築家にとって重要なのは、構想中の建物がどこに建つのかという実際の場所、どの部分がどの程度の面積を占めるのかという実際のスケール。iPadの位置情報サービスとコンパス、マップを組み込むことで、じゃあ実際の敷地に重ねて描いてみましょうも、3Dオブジェクトの建築模型を取り込んで実際に配置してみましょうも容易です。

「今まで建築の事務所では、例えばGoogle Mapsをスクリーンキャプチャーして、その尺度を3D CADに持ってきて設定してと、けっこう面倒くさい作業がいっぱいあった。これならば一瞬でできるし、クライアントとその敷地を探すこともできます。」(長谷川氏)

建築で重要な面積表についても、ペンシルで囲むとこの部分は面積何平方メートルまで瞬時に確認可能。iPadのマルチタスクで費用関係のスプレッドシートを開いておけば、ざっと手描きしたスケッチから自動算出の数値をドラッグしてコスト概算まで、その場で確認して判断が可能です。

「われわれが大切にしているのは、インタラクションのなかで、情報がリアルタイムに更新されること。常にすぐフィードバックを得て、さらにじゃあ次をどうするかまで決められるようにするためです。従来はスケッチをスキャンして、またベクター化して、誰かが面積を得てという作業でした。それで例えば翌日にスタッフが持ってきて確認しても、クライアントに「これはちょっと大きすぎるね」と言われると、また同じ作業のやり直しになってしまう。

こうした作業をiPad上でインタラクティブに進めてゆくことによって、本当にデザインがどんどん早く良くなっていく。1平米いくらというコストをクライアントにその場で出しちゃうというのは、もちろん建築事務所にとっても費用削減だし、クライアントにとっても「え? 1億円かかっちゃうの?」とそこで判断できるのでウィンウィンなんです。これまでは、「あ、じゃあ今度またプレゼンします」といって一週間後だったり。判断というのがほとんどリアルタイムになってくるのは、こういったインターフェースのおかげなんです。」(長谷川氏)

ARで平面図に入り込んで確認も



ARKit活用といえば、平面図をタブレットごしに実寸で地面に展開して、実際にはこれくらいの広さ、距離といった感覚が体験できる機能もあります。床に間取りを実寸で置いて歩けるだけでなく、壁には仮想の壁を立てたり、複数人で同時にARを共有して入ることも。

「平面図を描いていて5メートル幅の部屋ですよとなったときに、平面図では5メートルってすごい抽象的な数字なので、良いのか悪いのか判断できないんです。それを実寸のARで、たとえば奥さんがキッチンにいて、本人がリビングにいたらこんな距離だとか体験できれば、クライアントも「ああ、これはOK」とか実際に身をもって決められる、一番いい判断の仕方だと思います。」

発見と判断のコミュニケーションツール


現在の建築では早い時期から導入されるという、3Dの建築模型やオブジェクトと親和性が高いのもMorpholioの特徴です。汎用的なOBJ形式と、アップルが推すAR時代の3Dファイル形式USDZに対応します。

「模型を使ったやりとりというか、スケッチで良いのは、考えがすぐビジュアル化できること。三次元の模型って、モデリングをすると時間がかかるわけじゃないですか。それを省くのであれば、発想の部分は二次元で、3Dをベースにすれば、説得力のある案も早く書けていくんじゃないかという、今までになかったワークフローですね。

フリーハンドでも、例えばこっちがもっとこうでないとかっこ悪いとか、ここを延長しましょうというのをどんどんマークアップして。一種のコミュニケーションツールですね。

もっと時間をかけて、ある程度描いていくと、本当にその場で案も書きつつ、最終的なイラストレーションとしても製作できるプラットフォームなんです。これがあればある程度デザインプロセスを全部まかなえる。この先のプロダクションとしては、ある程度精緻な図面化が必要になってきますけれど、それはいずれ自動化されると思います。やはり何をデザインするかという発想の部分が唯一まだ自動化できないものとして残っていて、Morpholioはそこに集中して開発をしています。」

インテリアアプリで機械学習を導入

Morpholio

Morpholioでは建築向けスケッチアプリTraceのほか、インテリアデザイン支援アプリのMorpholio Boardもリリースしています。Morpholio Boardは実在する200社から5000以上のプロダクトを精緻な3Dモデルと4Kテクスチャで収録して、すばやくムードボードが作成できるアプリ。

実際の部屋にARで家具を配置して、サイズ感や色合いを確認することも、家具のライブラリを作ってスプレッドシートに出力する機能も備えます。

ユニークなのは、膨大な量の家具に対して、メーカーやカテゴリといった従来の分類だけではなく、カメラでその場で取り込んだ色の組み合わせや、物理形状の類似でも検索・発見ができること。これに似た形、これに似たテイストで検索することで、たとえば照明スタンドなのかポールハンガーなのかも無視して全ライブラリから抽出できます。この新機能には機械学習のCoreMLを活用しているとのこと。

「これはデザイナーとして欲しかったものです。僕がこういった機械学習をやるとも思っていなかったけど、意外とiOSはSDKが揃っていてすごくやりやすいので、こういった機能がすぐ作れたりします」

Morpholio

そもそものきっかけ


--(Engadget) アプリ開発とはまったく違う分野の専門家が、提案や監修といったレベルではなく直接手を動かしてコードを書いて、しかもそれがビジネスとして大きく、継続的に成功している例はあまりないと思うのですが、そもそもiPadアプリを作ったきっかけを教えてください。

長谷川氏:ぼく自身が建築家なので、2010年に最初のiPadが出たとき、これは新しいインターフェースとして建築のやり方も変わるんだなと感じて。でもそんなアプリをApp Storeで探してもあまりなくて、自分たちで始めたのが開発のきっかけです。

最初にMorpholioという、デザインのポートフォリオを見せるためのアプリを作りました。それですぐ分かったのは、職業を毎日変えるわけじゃないから、ポートフォリオって毎日使うアプリじゃないんだなと。じゃあ毎日建築家が使うものってなんだろうと考えたときに、このスケッチするツールMorpholio Traceが出てきました。Apple Pencilが出る前だったので、当時はサードパーティーのスタイラスを使いました。

2012年くらいにプロトタイプを作って建築家の友達に見せたら、もう明日から使いたいというくらい要望があって。そのときに本当に思ったのは、日々使うもの、日々の課題を解決するものを作ってゆけば、毎日使ってもらえるツールができるんだなと。それがトレースで、そこから学んだことが、インテリアアプリのMorpholio Boardになってという発展ですね。

--現在は多数のサブスクリプションユーザーがいて、大きなコミュニティができるほどに成長しているわけですよね。そのうえ、機械学習やARなど、先進的な技術をいち早く導入している。現在は何人くらいの規模で開発しているんですか。

設立したチームのうち3人でやってます。わたしも直接、まだコーディングをしてますね。それはほとんど変わっていないです。

--えっ。当初は建築家4人組だったとしても、いまはよほど大所帯になったり、ソフトウェア部隊ができているのかと思ったら。

そっちのほうがいいのかな(笑い)。メンバー的には全然変わっていないです。それが可能になったのはやはり、20年前のソフト業界だったらたぶんあり得なかった。というのは、流通もできないわけじゃないですか。今はもうApp Storeが配信してくれますよね。SDKもハードと融合して提供してもらえる。

結局、最終的にはアイデア勝負になってくるんです。アプリを作れるか、作れないかというよりは、ユーザーが使うか、使わないかというところで勝負ができるので、われわれのようなアマチュアなプログラマーでもなんとか作って、ユーザーが使ってくれると意味があるというか、ビジネスとしても成り立つというか。

WWDCを知らなかった

Morpholio

長谷川氏:Appleが6月にWWDCを開催して、新しい機能について発表して、というリリースのサイクルに最初から乗っていないんです。われわれはアマチュアなので、そういったサイクルがあると知らなかった。3年前にAppleからミーティングしたいという話あって。そこでこんなものが発表されるんだと実際に見て、ああ、6月に開発者カンファレンスがある、これがサイクルなんだと。

--いやいやいや、だってデベロッパー登録をしないと開発できないわけだから、明らかにWWDCについてはご存知なわけじゃないですか。いつプレビューSDKが出て、正式リリースされて、というのは。

結局、自分たちの機能を作るので精いっぱいだったんです。それは最新のテクノロジーじゃなくても、いくらでも開発すべきことのバックログがあるじゃないですか。ああ、こんな機能が必要だね、こうユーザーが言っているねというのに追われていたのが最初の数年で。大体それが収束してくると、じゃあ次何しようかというときに、たまたまARKitがバージョン1で。実はARについては、WWDCと無関係にわれわれも研究していたんです。

建築業界でVR・ARって、結構前から話にはあって、当時としても別に新しいものではなかったので、どうやってツールとして使えるかなと考えていたんです。サードパーティーのAR SDKを検討して「このライブラリ買おうかな」と思っていたところに、WWDCに行ったらARキットがボーンと出されて。うわあ、すごいコスト助かった!という。リアルタイムでトラッキング精度も良いし、建築で重要なスケールもある。これが一番重要だったんです。ほかのライブラリはそのどちらかしかなかったり、とにかく遅かったり。

--民業圧迫ではないですが、プラットフォーム側が正式に組み込むとなると、サードパーティーのライブラリがやってゆくのは難しいですね。

われわれにとってはそれはどうでも良くて。それで何をしたいかは自分たちで分かっているから、機能が使えればそれでいい。とにかく自然に、早く発展できるかというのが、われわれの目標なんです。それはもう、ファウンダーがみんな建築家なので、建築を毎日やっている中で、アイデアをとにかく早く出したい、クライアントに伝えたいというプロセスがコアにあって。新しいOSの機能が出てきたときも、それをどう活かすかというだけですから。

―― 自分たち本人だからニーズが完璧に分かっていて、そこに向けて進められるということですね。

そうですね。それがある意味われわれの強みというか。エンジニアリングから始まってしまうとニーズがわからないことがけっこう多いんです。ユーザーニーズの研究をして作りました、じゃあ本当にみんな使っているのかといったときに、使っていませんってけっこう多いと思うんです。

―― 例の「顧客が本当に必要だったもの」のカートゥーンみたいに

本当にそうです。われわれ自身が実際に実務をするのと、仲間がいくらでもユースケースの会話で出てくることが多いので、そこはやりやすいですね。

サブスクリプションの導入で変わったこと


--Morpholioのアプリはサブスクリプション制で、欲しい機能にあわせてプランを選ぶ形態ですね。実際のユーザー数や、課金率といったものは教えていただけますか。

長谷川氏:具体的な数字は公開できないのですが、規模でいうと、使うためにアカウントを作ったかたは100万を超えています。そのなかでサブスクリプションで支払っているユーザーの割合もかなり高いです。

サブスクリプションは3年前にApp Storeで利用できるようになって、われわれはその当日から導入しています。

それは本当にお金儲けしたいというよりは、ソフトの開発のサイクルに合っていると思うんです。やはりデベロッパーも食べていかないといけないし、でも開発は常に続いていくわけじゃないですか。1回ぽっきり買って、例えば100万円と言われてもたぶん買う人はいないと思うのですが。でもこれ20ドルですからね、プロにしてみれば、1年が2000円って。よくユーザーさんで「ええ? 2,000円なの?」という反応がいつも出ます。「もっと高くていいんじゃないか」って。「あ、いいの?」とこっちも思うんですけど。

やはり20年前の環境と違うのは、今のソフト開発はある意味ではコミュニティ化しているんです。開発者とユーザー、サービスする側とされる側というよりは、一緒につくっている感覚なので。それが強いほどたぶんアプリは残ると思います。

プロ向けの、ある段階でのプロセスに対してのビジネスモデルとしては、サブスクリプションは間違いなく成功しますね。


iPadが主になるのは時間の問題


長谷川氏:僕はiPadがデスクトップに付随するものとは全然思わなくて、デスクトップの進化版、次の世代だと思っています。iOSもmacOSの進化版だと思っているんです。それは単純に、やはりマーケットとしてはデスクトップの歴史が長いから定住しているところはあるんですけど、iPadから使い始めても全然、ほとんどのことができるわけです。

実際のスペックを見るだけでもすごく強くなっていて、ぼくの今のラップトップよりたぶん全然早い。なので、残っているのはインターフェースと、できることのキャッチアップしかない。iOS、macOS、PCなんていうのは、もう時代が去ってしまったというか。たぶん残っているのは違和感だけであって。

あとは教育環境の問題で、京都造形大学さんみたいに、学生にこれからスタートすれば良いよといえば、もうできちゃうと思うんです。それはもうカルチャーだけの問題です。これが新しい時代のプラットフォームだろうなと思います。

AR・AIと人の関係。アップルに期待すること


Morpholio

--ではその新しい時代のプラットフォームに対して、長谷川さんとしてほしいもの、将来的にこうなるだろう、なってほしいと思うものはありますか。ARKitの進化でもいいですし、それこそARグラスなんてものが出てくれば便利なわけですよね。

長谷川氏:インターフェースについていえば、ARとAIが今一番ホットな理由は、すごい人間的なインターフェースであること。ARで体の感覚と一致してものが見えるって、一番自然なわけじゃないですか。スクリーンよりも。そこにもっと情報が融合できるといいなというのはあります。

機械学習も結局、人間がコンピュテーショナルなサイクルの中に参加できることが重要なんです。従来のオートメーションは機械がブワーッと計算して、最後だけを人間が見ていた。インプットが人間で、それに対する計算であっても、最後の結果だけを見たのでは人間ってどうすればいいかわからないんですよ。プロセスがあまりにも早すぎるので。

それに対して、iPadのようなインターフェースは人間が計算に連動していけるので、もっとナチュラルに機械との会話ができるようになってきている。そういった意味では、Appleさんがスピードを上げるなら、こっちはスピード制御なんです。意外ともうタイミングの問題で、特にこういった機能が欲しいというよりは、スピードがあればこちらで制御できますから。

具体的な機能で欲しいものがあるとすれば、ARでもっと遠い距離を扱えるようになることですね。今でも部屋の中ならばバッチリいけますが、建築ってどうしても都市とかスタジアムとかを扱う際に、ひとつ遠くなるとできないところがある。そこは精度の問題なので、もう来るのかなとは予測できます。

先ほど家具のARでオクルージョン(※)が欲しいという話をしましたが、もっと三次元的に、レゾリューションの高い面がデータとして取得できるようになれば、というのはありますね。

(※ Occlusion. ここでは手前の現実の物体の後ろに、仮想物体が隠れる処理)

--オクルージョンは早く欲しいですよね。本当に。ピカチュウが人の後ろに隠れます、みたいな。それではもっと遠い話、いまはまだないデバイスや技術についてでも良いので、なにかこうなってほしいものだとか、お考えになっていることはありますか。

不思議なことに、ARグラスが出たとしても、いまMorpholioのアプリにある機能はすぐ応用できてしまうんです。先ほどの家具にしても、もっと見やすくなるだけなので。ARに関してはもう現状の延長上にあります。ARグラスが出たとして、そこに欲しいとなると......やっぱり、唯一問題になってくるのはインプットがどうなのかですね。グラスはどうしてもタッチスクリーンじゃないですから、タッチがどうなってくるかは考えます。

やはり人間って手を使って考えますから。紙に書くときも、やはり何かのサーフェスがないと書けないわけじゃないですか。ARのインターフェースについては、欲しいというよりは自分の中の問いなんですが、ARでインタラクトするのってすごい難しいんです。結局何もないところで手を動かすので。AR環境のインターフェースには、まだ良いプラットフォームは出ていない思います。ペンシルじゃないしスクリーンじゃないので、それはなんなのかなと。

いろんなものの表面がインターフェースになってくるんですかね。押すというこの物理的な感覚が一番大切だと思います。空気を押しても、どこを押せば良いのか、もう押したのか分からないし。(......) オーグメンテーションでどこを見てもキーボードがあるとか、そんなことになると思うんですが、浮いた状態でこれ(空中を打鍵する仕草)は絶対、ぼくはしないと思います。手は疲れるし。手袋のようなものでできるのかなとも思いますが、触感がないと絶対に失敗すると思います。

--話が戻ってしまいますが、逆に近いところで、iPadに対してこうなれば、はありますか。

ぼくの場合は本当に、XcodeがiPadにあれば相当カバンが軽くなります。iPad Proだけ、もしくはこれ2台でも持ちますよ。1台で見せて、1台にXcodeを入れるとか。Xcodeがあったらいいですね。それは本当に思います。

―― 開発者全員言いますよね(笑)

もう一つは大きさ。この(12.9インチの)倍でもいいかなとは。

―― 絵を描く方とかもみんな言いますね。デスクで使うには全然これじゃあ小さいと。

もちろんズームである程度できるのですが、描くときには一番良いオプションではないですよね。もう一つの理由はミーティングなんです。いまのiPad Proは一人用の大きさとしては結構良くて。このくらい近くなら皆でも見れるサイズなんです。でももうちょっと大きいとさらにいい。

―― みんなで書き込んだりとかアイデアを共有できたりとかですね。24インチ欲しいですね。

24じゃなくても17とか。あと、鉛筆の取り合いになるんです、建築事務所では。複数のペンシルに対応して欲しいってやっぱりよく聞きますね。

--今回のWWDCで出るんじゃないかと世間では言われている、新しいMac Proはどうでしょう。円筒形じゃなくなるらしい、プロ向けのデスクトップ。

僕らのニーズからすると、あれはあくまでも映像とかレンダリングとかに適したハードで。

―― そこまでは必要ない?

そうですね。われわれのアプリの段階では、スペックはインタラクティブな操作に必要なものなので、どちらかというとCPUとGPUのバランスである程度はできます。その後の段階のレンダリングでもほとんどGPU任せというか。もちろんiMac Proの18コアでやれば、ディストリビュートで計算もできますけど、どちらかというと走らせて結果を待つというのがまだたぶん主流なので。その段階のプロダクションってまさしくアウトプットの段階で、初期段階ではそこまではしませんから。そういった意味では、いまはiMac Proも強いし。あのiMac Proやばいですね。あれはモンスターですね。

でもよく会話に上るのは、コンピュータのプロセッサの数やスペックは上がったけど、人間の方はそれに比例するクリエイティブなことはできていないと思っていて。スペックはこう直線的に上がっていってるんですけど、人間の発想力って、なんか下の辺に留まっているなと。

―― そうですね。ムーアの法則で人の能力まで上がったら大変ですね。

一緒には上がっていないと思う。なぜなんだろうといつも思うんですが。でも人間は機械じゃないですから。脳が増幅しているわけでもないし、規定のバイオロジーなので。

―― インターフェースのほうが重要ということですね、プロセッサパワーよりは。

長谷川氏:今回造形大さんで話したテーマでもあったんですが、ガルリ・カスパロフってチェスマスターの方が、IBMのディープ・ブルーに97年に負けたじゃないですか。その後の話があんまり知らない人が多くて。その後にアドバンストチェスというのを開発したんです。開発というか、つくったんです。それは何かというと、なんでもありなんです。コンピュータを持ってきてもいいし、複数人数のチームで話し合って打っても良い。

そのトーナメントで最終戦に残ったのが、アマチュア二人と自分たちで作ったコンピュータ。その対戦相手が、ランキングプロ級のプロと、チェスに特化した最高級スペックのコンピュータのチームで、どっちが勝ったと思います?

アマチュアチームが勝ったんです。それはなんでかと考えると、人間プラス機械の相互作用の役割が強かった。そこの関係が勝敗を分けたということは、人間の強さ、機械の強さがすごくても、ちゃんと一緒に機能できなければ負ける。ということは、ヒューマンコンピュータインターフェースが何より重要ということ。まさしくこのタッチとか、そういうところを重視したデザインでないと、いいツールじゃないと思うんです。それはもう、そのトーナメントが実証したようなものです。スーパーコンピュータとスーパー人間を持ってきても、お互い話し合えなければ負けるんです。

(聞き手:Engadget編集部)


今年のアップル開発者カンファレンスWWDC19は6月3日開幕。

長谷川氏も注目するARKitのほか、iOS / watchOS / macOS / tvOSの新バージョン発表は毎年のお約束。またプロ向けの製品や、まったく新しい製品がWWDCのタイミングで発表されることもよくあります。

初日キーノートは日本時間で4日未明2時から。いつものように速報でお伝えします。



(Ittousaiコラム・インタビュー・レビュー記事一覧)



「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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