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「WWDC19」発表内容のウラに隠された2つの文脈を整理してみた:ITコンシェルジュ

Appleの狙いを「体験の統一」と「アプリ開発促進」で考えてみる

井上晃(AKIRA INOUE)
2019年6月14日, 午前11:00 in apple
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ご存知の通り、WWDC19では次期OSに関する膨大な数のアップデート情報が発表されました。まさに、会場の壁面看板に描かれていたロボットのように、ライブ中継をみていた多くの方の頭も見事にパンクしたのではないでしょうか。単純に考えても、「iPadOS」が増えたことだけでも例年より情報量が増えたわけですし、本来、最注目であるはずのiOSのアップデートに関してさえ、さらりと紹介されるだけというスピード展開でしたから。

現地で取材していた筆者としても、個々のアップデートの具体的な内容を追うのに必死になり、各トピックスのキーとなる情報をメモしつつ写真を取るだけで、キーノートが終わる頃にはヘロヘロになっていました。その後も新OSで提供される具体的な内容を確認する作業に追われたのは言うまでもありません。



そんなこんなでなかなか手をつけられずにいたのですが、一息ついたので改めてWWDC19の発表内容を俯瞰してみようかと思います。少し時間が経ってしましましたが、Appleが描いている文脈について自分なりに考察し、消化不良だった部分を整理してみました。

Gallery: WWDC19の考察 | 9 Photos

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これは今年に限ったことではありませんが、WWDCで発表される内容の裏には大きな2つの文脈があると思っています。1つはユーザに対する視点、もう1つはデベロッパに向いた視点です。キーノートで発表された内容は、これらが混在し、ときには深く絡み合っていました。本稿では、この2軸での俯瞰を試みます。

1)エコシステムでの統一した体験を構築している

最初に、Apple製品のユーザに対する視点で今回の発表について考えてみましょう。つまり、Appleが同社の製品・サービスにおいて、どんなユーザエクスペリエンスを構築するのかという視点です。ここでまず注目したいのは、Macから「iTunes」というアプリがなくなるという象徴的なトピックについて。

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Apple製品を使う上でiTunesというアプリは、かつて「なくてはならない存在」でした。しかし、iCloudの普及やApple Musicの台頭など、時代の移り変わりとともにその重要度が下がってきていたのも事実。ホコリを被りかけていたiTuneをこのタイミングで解体するのは、Appleの英断だと思います。

しかし、解体後の具体的な内容に目を向けると、iTunesの機能は「Finder」「Music」「Podcast」「Apple TV」へ引き継がれ、ダウンロード販売も継続する様子。はっきり言って「できること」に変化はさほどありません。だからこそ、その裏にはどんな意図が隠れているのか......と気になります。

ここで筆者の頭に浮かんだのは「macOSでの体験をiOSに近づける」という文脈です。

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そもそも、MacよりもiPhone、iPadの方が出荷台数が圧倒的に多い。2018年Q4の決算時におけるデータサマリーをみても、iPhoneとMacで出荷台数が一桁違います。iCloudの登場によって、クラウドハブ化も進んだため、Macに依存する度合いが小さいのも当然です。

つまり、Macを初めて使うユーザの大部分は、"Apple製品の原体験"がiOS——多くの場合iPhone——であるということになります。まずiPhoneがあり、その先にMacがある。製品を問わずにシームレスなエクスペリエンスを提供するためには、iOSからMacに移行した時の体験の差を小さいすることが重要と考えるのはごく自然です。

そう考えるとMacにおける「iTunes」というアプリの存在は異質でした。解体によって、音楽再生や動画視聴の経験がiOSと同じく「Music」や「Apple TV」アプリに統一されるのは分かりやすい。同様に、解体後にも「iTune Store」のダウンロード販売の役割が残ることにも違和感はありません。

そもそも2018年には「ボイスメモ」や「株価」「News」「ホーム」などのアプリが、iOSからmacOSへ輸入されていました。2019年のiTunes解体もこの流れの中に存在する取り組みだと考えるべきでしょう。

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また、思えば、近年のAppleの動向として注目したい傾向がありました。それは「Everyone Can Create」や「Everyone Can Code」といった教育プログラムへの注力がみられたことです。

こうしたプログラムの中では、簡単な創作活動はiOSで挑戦し、プロフェッショナルとしてさらに高度なツールを必要とする際にはMacへ、という流れが意識されています。これを踏まえると、ユーザのクリエイティブな体験を提供するために、iPhone > iPad > iPad Pro > Mac > Mac Proのように段階的にデバイスが整えられきており、将来的なユーザの教育・育成にも注力していると考えるのが自然。より正確に言うならば、「昔からこうした教育的な取り組みはあったけれど、近年はiPadの担う役割が大きくなってきて、そこに注力している」と考えるべきでしょう。

そして、今回「iPadOS」が独立し、よりPCライクな存在としてアピールされたことも、俯瞰してみるならばこうした流れと無関係ではないように思えます。iPadとiPad Proは、iPhoneユーザのクリエイティビティを育む上で、最初の一歩を広げるための非常な役割を担うはず。言い換えれば、Macへの足がかりになるわけです。

OSの名称を別個に掲げたこと自体は、(後述する「Project Catalyst」の存在も含めて)iPadを特別視するというマーケティング的なアピールだと思いますが、具体的な機能のアップデート内容としてもiOSとMacとの間にある体験のギャップを減らすものが多々ありました。特に、iOS/iPadOSにおけるファイルアプリ関連の諸々アップデートは、iPad ProのPCライクなユースケースの拡充を促します。

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ちなみに、WWDC19直前に発表されたiPod touchも、似た文脈に当てはめられそうです。同機は、ARにも対応したA10 Fusionチップを搭載しつつ、低価格を維持しています。これによりiOS 13への対応が確約され、Apple製品としてのユーザ体験を提供できます。特に、自力ではまだiPhoneを購入しづらいであろう若年層にも、iOSデバイスを普及させる足掛かりになるでしょう。

単なるデジタルオーディオプレイヤー、DAPとしてではなくiOSデバイスの入門機としての役割も兼ね備えているからこそ、秋に登場する「Arcade」やARの体験、そして新OSに関する諸々の新機能への対応は急務です。実機でテストしたい開発者のニーズを考え、WWDC19直前に発表したことも頷けます。



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ここまでの筆者の考えを整理するならば、「Appleは個別のユーザの望む体験とその成長段階に合わせて、iPod touch > iPhone > iPad > iPad Pro > Mac > Mac Pro、のように製品の階層を"整えて"おり(厳密に言うならば、Apple TVやApple Watchも別の軸として加わる)、そしてこうした製品を問わず一貫した体験を得られるよう、細部を"整えて"いる段階だ」となります。

同社は昨年、「Apple News+」や「Apple Arcade」といったのサブスクリプションサービスを推し進めることを明らかにしました。意識的にサービスよりの経営に舵を切っていることは明らかです。そういう意味でも、製品間に存在する体験のギャップを解消して"シームレス"の度合いを高めることは、優先すべき事項なのだろうと想像します。

2)デベロッパーの負担を減らし提供するアプリを増やす

続いて、こうしたユーザ視点の戦略を背景として踏まえつつ、次にデベロッパに向いた視点について考えます。WWDCは開発者向けのカンファレンスですから、当然ここを無視することはできません。

結論から言うと、Appleはデベロッパの負担を減らしてアプリの開発を促そうとしている傾向があります。注目したいのは、「Project Catalyst」「watchOS 6」「Swift UI」の3つです。

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まず「Project Catalyst」とは、iPad向けに開発したアプリを簡単にMac向けのネイティブアプリへと変換できるようにする取り組みです。Xcode内でのプロジェクト設定でMacにチェックを入れるだけで、タッチ操作から、カーソル操作の体系へと変換できます。単純に考えて、別々にコードをゼロから書く必要がなくなるわけですから、開発者の負担はかなり軽減されられるのでしょう。

そもそも、2017年頃から、macOS向けアプリをユニバーサルアプリ化させるプロジェクトとして「Marzipan(マジパン)」の噂がありました。しかし、AppleはWWDC18でmacOSとiOSの統合環境に関してハッキリと否定。その代わりに「UIKit for macOS」を提供し、iOSアプリからmacOS向けの移植を容易する流れに取り組んでいることを明らかにしていました。今回の「Project Calalyst」もこの流れを汲んだ取り組みであることは明らかです。

やや活気がないと言われることもあったmacOS向けのApp Store——。昨年には根本的なリニューアルも実施され、テコ入れの最中なのだろうと考えられます。iPad向けに作成される魅力的なアプリをMac向けにも広げていこうとするのは、確かに効率が良さそう。また、上述したユーザ視点で言うならば、iPadからMacへ移行した際の体験の差を小さくするという意味を持つのかもしれません。

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次に、「watchOS 6」では、Apple Watch単体でApp Storeにアクセスし、アプリをインストールできるようになります。Wi-Fi経由はもちろんですし、GPS + Cellularモデルならば外出先でもiPhoneなしでアプリを取得ですし、また、iPhoneにアプリをインストールせず、Apple Watchだけで実行できる独立したアプリも登場します。

これはユーザ視点で考えると、「いざという時にアプリをインストールできて便利」という流れになるのでしょうが、どう活用するのかというシナリオをうまく想像できませんでした。将来的にApple WatchをiPhoneとペアリングせずに使えるようにする布石とも捕らえられなくもないですが、そこまでするメリットがあるかどうかも微妙です。

しかし、開発者視点に切り替えてみると、iOS向けのアプリを開発しなくても、Apple Watch向けの開発だけに取り組めるというメリットが見えてきます。今までなら、あくまでiPhone向けのアプリが母体にあって、そこにApple Watch向けのアプリを用意しなくてはならなかった。開発者の負担を考えると、どちらが楽かは明らかです。要するに、「Apple Watchで使えるアプリを増やしたい」という意図が隠れているのではないかと考えます。

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そして、「Swift UI」については言わずもがな。これは新しいUIフレームワークであり、活用することで簡単にユーザインターフェイスを記述できるようになります。特徴は、Xcode上でのインタラクティブな表示に対応し、記述したコードがリアルタイムでXcode上のプレビューに反映されること。そして、さらにXcode上のプレビュー画面でUI部品を操作することで、それがコードにも反映されることです。ざっくり言ってしまえば、極力コードを書かずとも感覚的にUIを整えられるようになりました。

これに関してはOSを問いません。Apple製品のアプリ開発全般がより直感的に行えるようになります。既存の開発者にとっては負担が少なくなり、新たにアプリ開発を目指す者にとってはハードルが下がるわけです。


これらを踏まえ、筆者の考察としては「iOS向けのApp Storeに比べて勢いがなかったmacOS、watchOSのApp Storeにテコ入れをしており、アプリの開発全般にかかる負担もなるべく小さくしようとしている」とまとめたいと思います。


最後に...

もちろん具体的なアップデートを考えていくと、こうした2つの文脈にとらわれないものも多くあります。例えば、「アプリとしての不便を解消する」「新機能を発展させる」「プライバシーへの新たな取り組み」などの内容です。しかし、ここで述べたように、Appleが何をしようとしているのか、ということを俯瞰して考察するならば、「iOSとmacOSの間にあるユーザエクスペリエンスのギャップを小さくしようとしている」「サービスとしての収益をあげるために、製品ごとの体験の差を小さくして整えようとしている」「macOSやwatchOSにおけるアプリ開発を促している」といった狙いがあるように感じました。

WWDC19ではAppleは表立ってこうしたメッセージをアピールしていませんでしたし、正直この考察がどこまであっているかは分かりません。ただ、筆者が整理した内容が、今回のキーノートを見て感じたモヤモヤを解消する一助になれば、嬉しく思います。

#WWDC19 まとめ。新型「Mac Pro」や「iPadOS」、「iOS 13」など新トピックス盛りだくさん



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