「なんでNTTドコモは新料金プランを始めちゃったのかねぇ」
6月18日、総務省による有識者会議が行われた。前回、密室で開催された会議を経て「解除料1000円」「端末割引2万円」がほぼ決定となった。
今秋に改正される電気通信事業法によって、施行日には「端末代金の割引等の禁止」「行き過ぎた期間拘束の是正」が適用されることになる。
・携帯料金、競争もとめ劇薬投入 スマホ割引『上限2万円』の根拠は
・総務省、スマホ契約時の端末値引き「今後2年で根絶」の方針
・携帯解約金「1000円」は官邸の横やり? 波乱巻き起こす『結論ありきの有識者会議』
・総務省、スマホ契約時の端末値引き「今後2年で根絶」の方針
・携帯解約金「1000円」は官邸の横やり? 波乱巻き起こす『結論ありきの有識者会議』
これに頭を抱えることになるのが、NTTドコモとKDDIだ。
この2社は、すでに新料金プランを6月にサービスしたばかり。それらの通信料金は、解除料9500円を想定して設計されたものとなる。これからは解除料1000円が法律で決まってしまったら、新しい料金プランを作り直さなくてはならない。
6月に新料金プラン、10月にさらに新料金プランが出てくるとなっては、ショップやユーザーが混乱するのは間違いない。
そもそも、この混乱のもとは、NTTドコモが4月15日、KDDIが5月13日に新料金プランの記者会見をやったにもかかわらず、あとから急遽、総務省が「解除料1000円」だの「端末割引2万円」と言い出したことが発端だ。
有識者「なぜNTTドコモは新料金プランを始めたのか」
しかし、ある有識者は「なんでNTTドコモは新料金プランを始めちゃったのかねぇ。そもそも、去年の段階で『第1四半期に値下げする』と言っちゃったのが失敗だ。法改正の今年10月まで待てば良かったのに」と吐き捨てた。去年8月、菅官房長官が「日本の携帯電話料金は高すぎる。4割値下げできる余地がある」という発言で始まった、昨今の値下げ議論。当時、料金プランの改定には消極的であったNTTドコモだが、10月31日の決算会見で突如「2019年度第1四半期に4割値下げプランを発表、提供開始する」と発表してしまった。
しかし、年が明けたころになると、今度は「電気通信事業法を改正する」という話が出てきた。今年2月に筆者のインタビューに答えた吉澤和弘社長は「第1四半期に新しい料金プランを改定するが、法改正の行方によっては、その後、修正する可能性もある」としていたのだ。
結果、4月15日に新料金プランを発表、6月1日からサービス開始となった。官邸の言うことを聞き、優等生的に振る舞った結果、まさかのはしごを外され、修正を余儀なくされるとはNTTドコモも思っていなかっただろう。
しかし、一方で、このNTTドコモの動きに引っ張られて墓穴を掘ったのがKDDIだ。
KDDIの高橋誠社長は、菅官房長官の発言を受けて「我々はすでに分離プランを導入するなど(官邸からの)宿題は終えている」としつつ、「NTTドコモの新料金プランがインパクトのあるものであれば対抗する」としていた。
NTTドコモの新料金プランはヘビーユーザー向けの「ギガホ」、ライトユーザー向けの「ギガライト」という他社の後追いでしかなかったが、NTTドコモの新料金プラン発表の一ヶ月後、KDDIは、データ容量制限のない実質使い放題となる「auデータMAXプラン」を投入して世間をあっと言わせた。
しかし、今回の有識者会議の結果を受けて、KDDIも新・新料金プランを練り直す必要が出てきそうだ。
ギガホやギガライト、auデータMAXプランなど、これまでの料金プランは「2年縛り」を前提にした設計になっている。「解除料9500円なら、安易には辞めないでしょ」という心理的なプレッシャーを与える一方で、割引された料金プランを提供している。
つまり、9500円が1000円になれば「すぐに辞める可能性があるなら、料金プランを値上げする」という理屈が成り立つことになる。
有識者からも「スイッチングコスト(解除料など)を低下させると、将来の設備投資や接続料の算定方法、利用者料金の原価など、色んな所に影響があるのではないか」という指摘があった。
総務省からのプレッシャーもあり「解除料が1000円になるから、通信料金をいまより値上げします」ということにはならないだろうが、10月スタートの解除料1000円を前提にした新・新料金プランをいくらに設定すべきか、両社は頭を悩ますことになりそうだ。
ドコモ「スマホおかえしプログラム」も規制対象に
また、端末割引2万円については、総務省から、24回の支払い後「予見される市場端末価格との差額があればその差額は利益の提供に該当する」とあった。つまり、NTTドコモが6月1日から提供している「スマホおかえしプログラム」も、2年後の市場での買取価格が著しく落ちていれば、2万円以上の利益の提供になってしまうため、規制の対象になることが予想されるのだ。
この点を踏まえて、有識者からは「NTTドコモはスマホおかえしプログラムを辞めざるを得ないのではないか」と指摘があった。
つまり、NTTドコモは、スマホおかえしプログラム自体を「おかえし」することになるかも知れない。
総務省の議論は、結果としてキャリアの料金担当者にとって頭痛のタネとなりそうだ。