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スマホが変える国内Eコマースの競争軸、IDの力が問われる時代に(佐野正弘)

日本版「GAFA」による寡占が進む可能性

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年8月26日, 午前11:50 in mobile
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Ittousai, 8月13日
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今回はEコマースに関する動向について、触れていきたいと思います。インターネット経由でモノを買うEコマースは、黎明期から存在したインターネットビジネスでもありますが、決済手段の充実やスマートフォンの普及などによって年々利用者が増えている状況にあり、配達する人が不足するなど、社会的影響力も年々高まっているようです。

そして日本におけるEコマースの大手といえば、米アマゾン・ドット・コムと楽天の2社というのは多くの人が知る所だと思います。ですがここ数年来、それに対抗するべくいくつかの企業がEコマースを事業の柱として拡大しようとしている様子がうかがえます。

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▲「Rakuten Optimism 2019」より。最近は楽天モバイルの携帯電話事業参入が注目される楽天だが、創業事業であるEコマースでの人気と知名度は非常に高い

その1つがヤフーです。ヤフーは2013年に「Eコマース革命」を打ち出し、それまで手薄だったEコマースに力を注ぐことを宣言。「Yahoo!ショッピング」などへの出店料を無料にすることを打ち出し大きな注目を集めただけでなく、兄弟会社、現在は親会社となるソフトバンクと協力してEコマースの拡大に向けた取り組みを拡大しています。

実際、2015年にはソフトバンクの契約者に、IDの入力不要で「Yahoo! JAPAN」へのログインができる「スマートログイン」や、Yahoo!ショッピングなどの料金支払いを携帯電話の料金との合算にできる「スマート決済」を提供。さらに2017年にはワイモバイル、ソフトバンクの契約者に対してYahoo! JAPANの有料サービス「Yahoo!プレミアム」が無料で利用できるようにし、ポイント還元の優遇が受けられるなどメリットを高めることで、Yahoo!ショッピングの利用拡大を進めてきました。

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▲ヤフーはEコマース事業拡大のため、携帯電話事業で大きな顧客基盤を持つソフトバンクとの連携を強めてきた

そしてもう1つがKDDIです。フィーチャーフォン時代よりディー・エヌ・エーと提携するなどしてモバイルでのEコマース事業に力を入れていたKDDIですが、大きな転機となったのは、2016年にそのディー・エヌ・エーからEコマース事業の多くを買収したこと。それらを「Wowma!」(現在は「au Wowma!」)にリブランドするとともに、決済サービスの「au WALLET」との連携を強化するなどしてEコマース事業に力を注ぐようになったのです。

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▲KDDIは2016年にディー・エヌ・エーの「DeNAショッピング」などを買収、「Wowma!」にリブランドするなどEコマース事業の拡大へと舵を切っている

さらにKDDIは、2019年に楽天と提携。携帯電話事業に新規参入する楽天モバイルに対し、KDDIの携帯電話網とのローミングを実施する一方、楽天からQRコード決済の基盤だけでなく、Eコマースの物流基盤の提供も受けているのです。こうした動きを見れば、いかにKDDIがEコマースに本腰を入れようとしているか理解できるのではないでしょうか。

この2社に共通しているのは、いずれも携帯電話大手やそのグループ会社であるということ。新規参入予定の楽天を含めると、国内のEコマース大手企業はいずれも携帯電話会社のグループという側面も持ち合わせることになります。

しかしなぜ、アマゾンや楽天といった非常に強力なライバルが既に存在するにもかかわらず、携帯電話会社がEコマースに力を入れているのでしょうか。最大の要因は、本業でもある携帯電話事業での成長が見込めなくなっていることです。

実際携帯電話の契約数は既に日本の人口を超え大きな成長は見込めなくなっていますし、行政の措置によって、これまでの競争軸であった端末の過度な値引きやキャッシュバックができなくなり、業績に与える影響が大きい通信料金の値下げによる競争が求められています。楽天モバイルが新規参入する今後はさらなる料金競争が起きると予想されることから、事業環境は厳しくなる一方です。

そこで携帯電話会社は、法人事業や金融事業などを強化したり、ベンチャー企業に投資し成長事業の開拓を推し進めたりするなど、携帯電話事業に次ぐ新しい収益の柱を育てることに力を注いでいます。Eコマースへの注力も、そうした取り組みの一環と見ることができるでしょう。

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▲KDDIは金融持ち株会社を取りまとめる中間持ち株会社「auフィナンシャルホールディングス」を立ち上げ、金融事業に力を注ぐなど、携帯電話以外の事業拡大を推し進めている

とはいえ、Eコマースという視点だけに立つのであれば、知名度や実績、サービスでの充実度が高いアマゾンや楽天が優位であることに変わりはありません。ですがこれら2社のEコマース事業強化、そして楽天の携帯電話事業参入によって、そうした競争の軸が変わりつつあるように見えます。それは個々の事業から「ID」による競争へとシフトしつつあるということです。

楽天もアマゾンも顧客に独自のIDを提供しており、それを通じて買い物や決済だけでなく、他のさまざまなサービスが便利に利用できる仕組みを提供しています。ですがソフトバンクはヤフーの「Yahoo! JAPAN ID」を実質的なサービスのIDとして用いていますし、KDDIもau契約者向けに提供している「au ID」のキャリアフリー化を順次推し進め、IDを起点とした幅広いサービスの利用拡大を推し進めている様子が見えてきます。

さらに言うならば、携帯電話最大手のNTTドコモも、顧客基盤を携帯電話から「dポイント」の会員基盤へと移しており、通信サービスにこだわらない形でIDの利用を拡大しようとしています。従来携帯電話事業の中に閉じていたIDを開放し、そのIDを起点としてEコマースなど他の事業へと幅を広げることで、さらなる顧客基盤の拡大や、データの収集・活用など新たなビジネスの創出などへとつなげようとしているのです。

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▲NTTドコモは顧客基盤を携帯電話から「dポイント」の会員基盤へと移すことで、dポイントを軸としながら携帯電話事業以外へのサービス拡大を推し進めている

またIDを起点とすることで、既に抱えている顧客基盤を別の事業へと送客しやすくなることから、Eコマースのように他社が高いシェアを持っている事業であったとしても、送客によって一定の顧客を獲得し、収益拡大につなげられるという大きなメリットも生まれてきます。ヤフーがEコマースの拡大に、ソフトバンクの顧客基盤を活用したのはその典型といえるでしょうし、楽天が携帯電話事業を打ち出したのも、楽天が既に抱えている顧客を、ポイントなどのメリットによって送客することで会員獲得につなげられると判断したが故でしょう。

それゆえ今後、国内のEコマースは事業単体で競争するのではなく、IDを軸にEコマースや携帯電話といった事業の枠を超えた、サービスの総合力で顧客を奪い合う時代に突入することになるのではないでしょうか。そのため各社は不足している事業のピースを埋めるべく事業規模を拡大し、コングロマリット化が進むものと考えられます。

ただしこの流れが加速すると、特定の大企業グループがIDを押さえることでさまざまなサービスの寡占が進み、国内版GAFA問題のようなことが起きる可能性も否定できません。それによって新しいサービス事業者が台頭しにくくなる可能性があるというのが、少々気がかりな所です。




「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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