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SIMロック解除100日ルール撤廃に意欲、理想の追求に走る総務省の問題点(佐野正弘)

「端末値引き」は絶対悪なのか

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年9月22日, 午後12:30 in mobile
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2019年9月11日に、総務省は「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第18回会合を実施しました。これまでこの会合では、既に分離プランの義務化や、いわゆる"2年縛り"の違約金上限を1000円に、端末代の値引き上限を2万円に規制するなど、主としてスマートフォンの大幅値引きと引き換えに顧客の契約を長期間拘束することに重きを置いてきた、従来の携帯電話業界の商習慣を変えて競争を促進するための議論が続けられてきました。

(内容がどうあれ)2019年10月に実施される電気通信事業法の改正がなされ、一連の規制が適用されることが決まったことでそうした議論は終息。今後は同会合における議論の内容は2020年の商用サービス開始を控えた5Gに関する競争政策に移る......と見られていました。ところが、今回の会合における議論も、端末値引きに関する内容が大半を占める結果となりました。


総務省 モバイル研究会
▲総務省で実施された「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第18回会合。SIMロック解除の100日ルールに端を発した端末値引きの問題が議論の中心となった

その理由は、携帯電話会社が法改正を見据えて新たに打ち出した、スマートフォンを購入しやすくする端末購入プログラムにあります。KDDIの「アップグレードプログラムDX」、ソフトバンク「半額サポート+」がそれに相当するのですが、これらはいずれも48か月の割賦で端末を購入し、月額390円を支払って25か月経過後に機種変更をすることで、割賦残債の支払いが不要になるという、法改正前のプログラムとほぼ同じ仕組みを採用しています。

ですが法改正前のプログラムは、適用するのに同じ携帯電話会社の通信契約が必須となっていたため、それが契約を長期間縛り続ける"4年縛り"につながるとして有識者会議では批判を集めていました。そこで今回両社が提供するプログラムは、いずれも通信契約に紐づかない純粋な物販サービスへと変更。それゆえ、例えばNTTドコモのユーザーであっても、これらプログラムを適用してスマートフォンを購入できるようになっています。

半額サポート+▲ソフトバンクの「半額サポート+」は、48か月の割賦を前提とした「半額サポート」と大きく変わらない内容ながらも、通信契約に紐づかないことで法改正に対応している

しかしながらこれらのプログラムで販売される端末には、購入直後に割賦契約を踏み倒して実質的に端末を盗んでしまったり、不正に転売してしまったりする問題を防止するため「SIMロック」がかかっています。また不正転売防止などの観点から、割賦で購入した端末のSIMロックは、100日間外すことができないというルールも定められています。

ゆえにNTTドコモのユーザーがアップグレードプログラムDXを適用してスマートフォンを購入しても、100日間はSIMロックを解除できず、購入したスマートフォンが実質的に使い物にならないという状況に陥ってしまうのです。そうしたことからこれらのプログラムは、実質的には両社の回線契約者しかメリットを享受できない、従来のプログラムと変わらない内容となっているのです。

もちろん「ワイモバイル」「UQ mobile」など、両社の回線を用いたサービスの利用者であれば、SIMロックがかかっていても基本的には通信サービスを利用できるので、新しいプログラムがメリットを生み出した部分も一部にはあります。しかしながら従来のプログラムを"4年縛り"として問題視し、ユーザーの契約を縛る要素の徹底的な排除を求めてきた総務省と有識者会議の構成員にとって、これらのプログラムは許すことのできないものだったようです

実際、会合の冒頭、高市早苗総務大臣は「特にSIMロック解除については、改正法により通信と端末の分離がなされる中、今後の方向性について早急なルールの見直しを検討する必要が考えている」と話し、100日ルールの見直しに前向きな姿勢を見せていました。

高市早苗総務大臣
▲約2年ぶりに総務大臣に復帰した高市早苗氏。前任時もSIMロック解除に力を注いでいたこともあり、今回もSIMロック解除の100日ルール見直しには前向きな姿勢のようだ

さらに構成員からは、「自動車など、割賦販売化されている他の耐久消費財にはSIMロックが存在せず、それなりの盗難対策もなされている。盗難がSIMロックを必須とする理由にならないのではないか」(東京大学の大橋弘教授)など、SIMロックの存在自体を疑問視する声も出ていました。今回の出来事を受け、"縛り"につながるSIMロック自体をかけるべきではないとの論調も高まっているように見えます。

一方、携帯電話会社側からは、割賦販売の未払い発生率が高く、それを抑えるためにはSIMロックが必要との意見が多く出ていました。KDDIとソフトバンクは今回の指摘を受け、100日経過せずともSIMロックを解除できる何らかの仕組みを用意するなど条件の見直しには前向きな考えを示していますが、条件なしにSIMロックを解除することは、やはりリスクが大きく否定的な考えのようです。

またそもそも今回のプログラムが、通信料金と端末代金を分離するという電気通信事業法の改正には沿った内容であることは確かで、総務省側がSIMロック解除の100日ルールの組み合わせによって起きる影響を事前に見抜けなかったに過ぎないと見ることもできるでしょう。それゆえ「事前にルールの整合性を取って導入したものであり、新たな課題が認識されたとしても、それがあたかも違法であるかのように取り上げられるのは、多様なルールの中で創意工夫し、より良いサービスを提供することの否定につながる」(ソフトバンクの渉外本部 本部長である松井敏彦氏)との意見も出ていました。

こうした会合での議論の流れと、これまでの会合における総務省の対応を見るに、"縛り"の穴を徹底的にふさぎたい総務省は、どんな理由があろうとSIMロックを即日解除できるよう、現状の100日ルールを撤廃してくる可能性が高いでしょう。ただし割賦販売の不払いリスクも無視はできないので、事前にデポジット(預かり金)を支払ってもらうなど、SIMロックの即日解除には何らかの条件が付くものと考えられます。

ですが今回のように、端末の値引き販売と契約の縛りにつながる要素が少しでもあれば、徹底的に規制してしまおうという総務省の姿勢には、少なからず疑問を抱くというのが正直な所です。なぜなら、そうした硬直的な姿勢が市場の変化に応じた柔軟性を失わせ、日本の携帯電話産業を衰退させることにもつながりかねないからです。

筆者が特に懸念しているのが「5G」です。日本では5Gの商用サービス開始が2020年と、米国や韓国など多くの国より1年遅れることが既に決まっています。にもかかわらず高額な端末の値引き販売に規制を設け続けると、当初は高額なハイエンドスマートフォンのみが対応すると見られている5G端末の販売が振るわず、5Gの普及で一層大きく後れを取ってしまう可能性が高いのです。

実際、日本と同様、端末の値引き販売に厳しい規制を設けるようになった韓国でも、5Gでは国を挙げて普及を進めるべく、5G対応スマートフォンの大幅な値引き販売を実施。それが短期間で5Gの契約数を大幅に増やす要因へとつながっているのです。

長期間の縛りを前提とした端末の大幅値引きが大手3社による市場の寡占の一因となった一方で、ハイエンドモデルの販売が促進され、高速なモバイルネットワークを日本全国に普及させるなど、ネットワーク環境の進化と充実に大きく貢献したのもまた事実です。そうした実績があるだけに、総務省や有識者が理想像として描く"端末値引きなし、縛りなし"という市場環境の追求が必ずしもメリットはならないと感じますし、時には柔軟性のある対応も必要なのではないかと筆者は考えます。

NTTドコモ吉澤社長
▲NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、2019年9月18日の5Gプレサービス発表の囲み取材で、5Gスマートフォンの購入補助に関して行政に働きかけをしていく考えを示したが、端末値引き規制に力を注ぐ行政側がそれを受け入れるかは不透明だ




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