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脳波レースから火星研究まで、アインシュタインゆかりのチューリッヒ工科大学(スイスTech探訪 Vol.1)

今役立つ、将来役立つ知見と技術が同居

Marika Watanabe
2019年10月4日, 午後03:28 in Swiss
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「スイス」という国名を聞いて、何が思い浮かぶでしょうか? ある年齢以上の人であれば『アルプスの少女ハイジ』であり、ハーブキャンディーかもしれません。

ガジェット好きな諸氏にとっては、精巧で高級な時計メーカーの多い場所、というイメージでしょうか。

ちなみに、わたしの持っていたスイスのイメージはこちらです。

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そんな考えをひっくり返すようなメディアツアー『Press tour to Switzerland for Japanese media A Swiss perspective on Society 5.0』が2019年9月22日から28日にかけて、プレゼンス・スイス主催で行われました。

これは、豊かな自然と調和した生活がありつつ、高い水準の技術力を誇るスイスが、"今"、Society 5.0を含むデジタルの分野でどのように技術を磨いているかを広く知らせたい、というスイス連邦外務省の意向によるもの。現地で見聞きした(場合によっては体験した)スイスの今について紹介していきます。

日常的な動作をいかにうまく行えるかを競う国際大会サイバスロン

スイスにある2つの工科大学のうち、1日目に訪れたのはチューリッヒ工科大学。ここにはいくつかのスピンオフ組織があり、その1つ、「Cybathlon」(サイバスロン)プロジェクトに携わっているRoland Sigrist氏(ローランド・シグリスト)から、その取り組みについて話を聞きました。

eth_04 障害を持つ人たちのための競技、というとすぐに思い浮かぶのはパラリンピック。サイバスロンも、障害を持つ人たちのための競技ですが、競技内容や意味合いがかなり異なっています。 なぜなら、ここで競われているのは足の速さやゴールの数などではなく、日常生活の動作をいかに支障なく行えるかを競うからです。

そのため、競技の種類もそれほど多くありません。

1. 脳コンピュータインターフェイス(BCI)レース
Impressions
装着した脳波センサーが思考を読み取り、脳波だけで仮想コースのアバターを動かしていかに速くゴールに到達するかを競う

2. 機能的電気刺激(FES)バイクレース
FES – Functional Electrical Stimulation Bike Race
麻痺した筋肉を電気刺激によって動かし、ペダルを漕いでいかに速くゴールに到達するかを競う。なお、2016年に開催されたサイバスロンでは8分以内に750mを走破することが求められたが、2020年には1200mへと距離が伸びている

3. 電動義手(ARM)レース
ARM
電球を取り付ける、物をつかむといった動作を競う。箱の中に隠されている物体を義手で触り、同じものを別のオープンな箱の中から探すといった触覚の必要な動作も最近追加された

4. 電動義足(LEG)レース
LEG
膝を含む義足を装着した状態で、ソファに座ったり立ったりを繰り返したり、階段を昇ったり、障害物をクリアしたりといった日常的な動作を競う

5. 電動外骨格(EXO)レース
Powered Exoskeleton Race Demo
腰部脊髄を損傷したパイロットが、電動外骨格を使い、ソファに座ったり立ったりを繰り返したり、階段を昇ったり、障害物を避けながら歩くといった動作を競う。なお、LEGとの違いは肉体的な脚が残っていることである

6. 電動車いす(WHL)レース
Powered Wheelchair Race
強化された車椅子を使い、階段やでこぼこ道など、日常で遭遇するような道を通り抜けるの通過を難なく行えるかを競う

脳波だけで動かすカーレースに挑戦

わたしたちにもできる競技があるということで、トライさせてもらいました。

競技名は脳コンピュータインターフェイス(BCI)レース。脳波だけで仮想コースのアバターを操縦し、誰が速くゴールするかを競うというものです。

実際の競技では64のセンサーを頭に取り付け、3種類の信号を送る必要がありますが、それにはかなりの鍛錬が必要なので、トライアルでは集中しているかそうでないかの1種類の信号だけで競っていきます。

eth_05前に進むためには、道の色がグレーになったところでリラックスをし、紫になったところで集中する。なお「集中」は画面に集中することではなく、頭を忙しく回転させることを意味する。レース中も英語で説明が続くので、リラックスゾーンではスピードががくんと落ちたことは言うまでもない

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装置を取り付けた状態。1種類の脳波しか取らないため、センサーが接触するのは額と耳たぶのみ

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レース中のアバターの様子。タイムアップだったのか、勝者は判明せず

人に寄り添う技術開発

パラリンピックと比較されがちなサイバスロンですが、シグリスト氏は改めて「これはスポーツの発達のためではなく、日常生活向上のための技術である」と強調。競技形式にしたのは、「技術開発の進歩を促すため」と説明していました。

サイバスロンのゴールは、障害を持つ人、研究・開発者、一般人というステークホルダー全員がコミュニケーションを取りつつ、誰もが生きやすいプラットフォームを構築すること。サイバスロンは、そうした技術を一般の人にも見てもらうためのものだと言います。

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補助具の全てが使いやすいものではない現実が見えたことから、ユーザーの声を反映し、その技術開発の速度を速めるために生まれたサイバスロン。障害を持つ人たちが日常生活を不自由なく送れるような技術は、後々、健常者にも還元されると考えられる

第1回サイバスロンが開かれたのは2016年。25カ国から66人のパイロット(義足や車椅子を操るユーザー)が参加しましたが、第二回となる2020年は27カ国からすでに77人が参加表明をしているとのこと。開催地は東京で、開催期間は2020年5月2日〜3日となっています。

「火星の成り立ちを調べたい!」

チューリッヒ工科大学地学部(FocusTerra)には、NASAと協同でアースクエイクならぬ「Marsquakes(マーズクエイク)」を研究しているラボがあります。地震学のリーダー ジョン・クリントン博士とサイモン・ステューラー博士が案内してくれました。

地球が2層の核、2層のマントル、地殻などから成り立っているということは、地震を調べることで判明できているとのこと。それで、未知の火星の成り立ちを知りたい、とのことでこのプロジェクトが発足したそうです。

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「火星の地震を調べることで、地球の地震の謎を解明できるのですか?」の問に「直接は関係ないよ!」(意訳)と笑顔で答えるステューラー博士

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実物の1/2スケールの火星探査機インサイトの模型

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日本からも技術提供をしており、日の丸がプレートに刻まれている

ハイライトは、地震シミュレーターによる月や火星の地震の体験です。以下、リアルな揺れの動画になるので、閲覧にご注意ください。

まずは、地球上で起きた「イタリア ラクイア地震」「ニュージーランド クライストチャーチ地震」「アメリカ ノースリッジ地震」「スイス ツーク地震」を再現。なお、カメラをしっかり固定していないため、地震の再現前後でも揺れているように見えますが、機械の動作音や家具などの揺れる「ガタガタッ」という音の鳴ったところがシミュレーションの始まりです。



続けて、それぞれ100万倍ほどに振動を大きくした月と火星の地震を体験。



地球上で起きたとすれば、全く感じないような揺れでも、月や火星では活動するものがいないため、検知できるのだそうです。とはいえ、30分から1時間も続くのが大きな地震だったとしたら......と考えただけで恐ろしいものがありますね。

アインシュタインが通ったチューリッヒ工科大学には今役立つ技術と将来役立つかもしれない知見が同居していた


これらスピンオフ企業や研究室のあるチューリッヒ工科大学は、アインシュタインが通い、配偶者を見つけ、教鞭を振るった場所でもあります。

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アインシュタインが使ったとされるロッカー

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開くと彼にまつわる写真や書籍が並べられており、さながら小さな博物館のよう

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アインシュタインの肉声を収めたレコード風音声再生装置

大学内にはさまざまなラボがあり、そこで獲得した技術や知見を経済へと転換しており、1996年から2018年までに407もの企業がそこからスピンオフして生まれ、そのうち95%が5年後も残っているのだそうです。下のグラフは、年ごとのスピンオフの実数を示しています。

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チューリッヒ工科大学では、「グローバルな課題に対処するための批判的かつ創造的な思考」として、毎年テーマを決めて集中的に研究をしているとのこと。

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食べ物、水、産業のこと、エネルギーのこと。学生たちから上がってきた課題を検討し、トピックが決まるとのことですが、研究結果は公のものとして戻すそうです。

そのような考えや仕組みが、将来を見据えつつ、すぐにでも人の役に立つ技術開発につながっているのではないか......と感じました。



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