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日本も参考にできる? 技術転換は人のためという姿勢(スイスTech探訪 Vol.3)

バーチャルとリアルの融合

Marika Watanabe
2019年10月21日, 午前08:00 in Swiss
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矢崎 飛鳥, 10月29日
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スイスメディアツアーの2日目は、テクノパークチューリッヒの訪問からはじまりました。

1993年にオープンしたこの場所は、いわばベンチャー向けレンタルオフィス。4万7000㎡の敷地、在籍社数300社、訪問者年間15万人と、かなり大規模です。

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日本のレンタルオフィスと異なる点の1つは審査基準。財団のチームリーダー Matthias Hölling(マティアス・ヘリング)氏によれば「人物像、その人がやりたいと思っている事業の内容、それが革新的かどうか」とのこと。適合すれば、最初の1年は35%オフの賃料で入居でき、以降毎年の審査で更新されれば数年間をかけて、徐々に正規の賃料へと上がっていきます。

また、スタートアップ企業へのコンサルティングやコーチング、資金の提供などを行っているところも相違点といえるでしょう。しかも、企業同士の交流が盛んに行われているため、ネットワークの構築にも役立っています。

テクノパークチューリッヒのミッションは、学術で得た技術や知見を市場に転換すること。そのためか、スイス連邦工科大学からのスピンオフ企業が全体の17%を占める40社も在籍しています。

在籍企業のいくつかを紹介してもらいました。

ウィンタースポーツ上達に役立つ『Snowcookie』

アルプス山脈を擁し、サラッサラのパウダースノーが積もるスイス。ウィンタースポーツ愛好家たちが、冬になると集まってきます。

起業家のMartin Kawalski(マーティン・カワルスキー)氏もスキーのために、アメリカ カリフォルニアからやってきたひとりです。とはいえ、スキーを楽しむというより、製品を開発したいという意図がありました。

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カワルスキー氏が開発しているのはAIスマートスキーシステム『Snowcookie』(スノークッキー)です。これは、胸元とスキー板に1つずつ装着するワイヤレスセンサーと、その情報を分析するアプリからなるシステムで、ボディーバランスやスキー板の動きをトラッキングし、滑りの上達を促進する役割を果たします。

もともとニューロサイエンティスト(神経科学者)として、質の高い睡眠について研究していましたが、「山に行く人たちにこれらのセンサーを付けたらどうなるだろうかということから着想を得た」とカワルスキー氏。カリフォルニアで創業しましたが、「スキーに関する技術開発をするのなら、スイスに行ったほうがいいのではないか、というアドバイスを受け、来西したとのことです。

スノークッキーには、ジャイロセンサー、加速度センサー、磁気センサーなどを搭載し、毎秒50回データポイントを計測。専用アプリは、受信データからカービングやボディポジションの分析を行い、どこをどう改善すれば上達するかのアドバイスしてくれます。また、滑りを3Dマップ上で再現してくれたり、上達具合を確認したりすることもできます。

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なお、現在もAmazonで購入できますが、11月にはKickstarterで追加機能を搭載したバージョンのキャンペーンを開始するとのこと。こちらも楽しみです。

わずか週1のトレーニングで歩きかたをフラフラからスタスタに改善させた『Dynamic Device』

身体能力を向上させるテックアイテムとして、もう1つ紹介したいのが、Dynamic Devices(ダイナミック・デバイス)社が開発している『Dynamic Devices』。これは、「ブレイン・マッスルフィットネス」という全く新しいトレーニングをサポートしてくれるシステム(DDシステム)となっています。

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仕組みを説明する前に、同社CEO Max Lungarella(マックス・ルンガレラ)氏が、効果を示す動画を見せてくれました。

映っているのは、元同社スタッフの母親のバーバラさん。「末梢神経障害」を患ってしまったため、普段は車椅子で生活しており、まっすぐ歩こうとしてもフラフラしてしまいます。

ところが、Dynamic Deviceで週に1度のトレーニングを1カ月半行ったところ、以前のようなふらつきは見られず、線に沿ってスタスタと歩けるようになりました。また、階段やはしごの昇り降りも自由に行えるように。



末梢神経障害は、感覚神経や運動神経などがダメージを受けることで起こるもので、手足を動かしづらいという症状があらわれます。この病気は、全人口の2.5%に相当するほど多くの人が罹患しており、患者は、年配者に限りません。前十字靭帯損傷、糖尿病や脳卒中、腰痛などを患っている人もこの障害に悩まされる可能性があるのです。

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体を上手に制御する仕組みの根本は脳にあった!

普段、気にすることはほとんどありませんが、体を動かす際には(1)中枢神経(脳を含む)で考えて(感覚入力)、(2)手足などの末梢神経に指令を出します。(3)指令を受けた末梢神経はそれに従って手足などの筋肉、腱、靭帯、骨を動かします。(4)最後にうまくできたかどうかというフィードバック(課題遂行)を中枢神経に送っています。

フィードバックがあることで、上手にできたかそうでなかったかを中枢神経が判断し、次にどこを調整すればいいか、ということを学習していくのです。

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これら4つのステップのうち、1つでも欠けてしまうと障害が起きてしまうことになります。バーバラさんの場合、脚からのフィードバックが途絶えてしまっていました。大量の薬を飲んでいましたが、治る見込みはほぼないだろうと医者から諦められていたのに、車椅子のいらない生活に戻ることができたのです。

「医療に頼らず、体を動かすシステムは、フィットネス系のゲームや筋力トレーニングのできるスポーツジムなどほかにもありますが、DDシステムは、両者のいいとこどり。ゲームのように楽しいから続く、筋力トレーニングのように脳へのフィードバックがある。しかも、ゴーグルなしで没入感が得られる。だから続くし、結果が得られるのです」(ルンガレラ氏)

仮想現実世界の物体をコントロールするには、微妙な力加減が必要ですが、バネやコンプレッサーなどでは繊細な調整ができません。そこで、DDシステムには写真内でルンガレラ氏が手にしているような人工筋肉を使っているとのこと。これによって、繊細な負荷の調整ができるのだそうです。

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DDシステムは、2011年に競技スポーツ用ロボットパーソナルトレーナーとして開発・販売されたもの。2014年に医療分野へも転用されたという経緯があります。

実は、日本の脳梗塞リハビリテーションセンターに所属しているパラアスリートの反町公紀選手も愛用者のひとり。14歳のときの交通事故で脳挫傷を負って、現在では脳の3分の1の機能しか使えていません。右足裏の感覚を失ったため、うまくバランスを取れなくなってしまいました。はじめてDDシステムでトレーニングした後の感想は「脳が疲れた」というもの。ただの筋トレではなく、脳(ブレイン)に働きかけたトレーニング方法だというのがわかるエピソードです。

また、脳の機能の一部が失われたため、飽きっぽくなってしまっていましたが、「このトレーニングは楽しいし、できことが増えてきて嬉しい」というコメントも寄せられているとのことでした。

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実際に、そのトレーニングを試してきました。

ディスプレイに表示されているQRコードをスマホの専用アプリから読み込み、ゲストログインします。その後、自分の身長に合わせてキャリブレーションを行います。これで自分の体に合った効果的なトレーニングを行えます。後は、トレーニングコースを選んでプレイします。

コースには、波形に沿ってペダルを踏み込んだり、引いたりする、いかにも「トレーニング」的なものもありますが、サッカーボールやペンギンを操作するようなゲーム的なものもあります。

わたしが選んだのは、雪の上を豪快に滑りながら餌である"魚"をキャッチしていくペンギンが主人公のコース。左右のペダルでペンギンをコントロールするのですが、力加減が難しい。何度もコースアウトして、足に「ブブブッ」と衝撃を受けてしまいました。



最初のうちはゴールするまで時間がかかってしまっていましたが、3回めにはなんとか大きく道を踏み外すことなく(?)ゴール。動画では最後にドヤ顔をしていますが、反町選手の感想にあったように、「脳が疲れました」。

また、プレゼンテーション中にルンガレラ氏がDDシステムについて説明していた「ゴーグルを着けなくても没入感が得られる」という言葉にも納得。操作するわたしもそうですし、動画撮影者も思わず体を動かしてしまうほど臨場感がありました。

超高齢化社会と労働力不足に悩むスイスから学べること

実は、日本同様、スイスでも超高齢化社会を目前に控えており、健康寿命をできるだけ長く保つことが解決しなければならない課題となっています。

また、全体的に労働人口が減っているため、介護やリハビリに関与できる人も減少傾向にある、というところも日本に似ています。

「DDシステムは、そのどちらの課題も解決し、当事者とその家族、トレーナー、理学療法士、医師など関係者全員をサポートできる」とのこと。

「ダイナミック・デバイスが目指しているのは、すべての人が生涯にわたって、健康で自立した生活を送る未来。仮想現実と融合したブレインマッスルフィットネスによって健康的な(フィジカルの)体へと変えていくことで、society5.0を実現したい」と強調しました。

ちなみにこのDDシステム、ヨーロッパを中心に50台が販売されており、日本では東京 新橋にショールームがあります。

テクノパークチューリッヒで触れたスイスメイドの技術が、日本の課題も解決するかもしれないと感じました。





「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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