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Appleが「AirPods Proを作れた理由」を分析してみる(西田宗千佳)

今後はソフトを得意とする企業がいきなり良い製品を出してくるかも

西田宗千佳
2019年10月31日, 午後05:00 in Airpods
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AirPods Proを発売日の10月30日から使っている。すばらしいヘッドホンだ。ノイズキャンセルにおいては初手となるAppleがこれほど優れたヘッドホンを出してくると予想した人は少なかったのではないだろうか。

一方で、これからのオーディオにおいて、AppleがAirPods Proが作ったように、「ソフトを得意とする企業」がいきなり良い製品を出してくる可能性は極めて高い。特にヘッドホンや小型スピーカーのようなカジュアル・オーディオの世界ではそれが顕著だ。

そんなわけで本稿では、今これらの世界でなにが起こっているのか、そのあたりを改めて解説しておきたい。

スマホ連携が前提になってヘッドホンは変わった

AirPods Proが良い製品になったのには主に3つの理由がある。

ひとつめは、「スマホとの密な連携を前提としている」ことだ。

現在ヘッドホンは、ほぼスマホで使うものとなっている。だからワイヤレス比率も高い。市場調査会社BCNの調べによれば、2018年7月の段階で、ワイヤレス製品は販売数で4割、販売金額では7割を占める。アメリカではワイヤレス化がさらに進んでおり、二年前には「よほど特殊な製品でない限り、ワイヤレスヘッドホンでなければ売れない」とメーカー側が言うほどになっていた。

Airpodspro

ワイヤレスヘッドホンをスマホとつなぐということは、スマホ側のソフトの力を活用できる、ということだ。以前より、ヘッドホンの設定切り替えなどをアプリで行うようになってきてはいたが、今ではもう少し進んでいる。

音声アシスタントがスマホに搭載されるようになっていて、それらとの連携機能が登場したからだ。今後は、スマホからの通知の読み上げなども「当然求められる機能」になっていく。そのためにはOSなどとの連携も必須で、アプリ開発の負担は上がっていく。

この視点で考えれば、OSを作っているメーカー、音声アシスタントを作っているメーカーがヘッドホンに前向きになるのは当然ともいえる。特にAppleは、自社製品とOSの密結合に積極的だ。AirPods Proも、Androidなど他のOSを使った機器でも使えるとはいえ、セッティングを含めた快適さではiPhoneとの組み合わせがベスト。差別化には有効だ。

大量生産する「オリジナル半導体」の力で差別化

ソフト連携は使い勝手の向上に効果がある。だが、音質についてはまた別の要素が必要だ。

そこで大きな意味を持つのが「処理能力が高く、差別化された半導体を使える」ということ。

2017年Appleは、AirPodsを開発するために、独自の半導体セットである「W1」を使った。多くの人はわざわざそのことをアピールした理由をピンとこなかったはずだ。だが、その後に多くの完全ワイヤレス型ヘッドホンが出てくると、実はW1が高性能であり、差別化されたパーツの存在が重要であることが見えてくる。

実は2016年頃から、半導体メーカーはヘッドホン向け半導体セットの高性能化を進めていた。QualcommやMediaTekは、スマホと同じように新しい技術を使ったBluetoothヘッドホン向けチップセットを開発している。元々通信技術に強いNXPセミコンダクターズなどが提供する、完全ワイヤレス型ヘッドホン向けのソリューションもある。結果的に現在は、高性能なものから低価格なものまで、様々なパーツが登場した。だから現在はこんなに完全ワイヤレス型のヘッドホンが生まれている。

2016年頃には、完全ワイヤレス型ヘッドホンには一部のスタートアップが注目していただけだったが、その頃から、このジャンルで高品質な製品を作るには、「処理能力と通信技術の面で高度なLSIを用意することが差別化要因になる」と言われていた。Appleはそれを理解していたから、W1を作って差別化したわけだ。

Airpods

さて、今回のAirPods Proでは「H1」という次の世代のAppleオリジナル半導体が使われている。これが2つめの理由だ。H1はBeatsの「PowerBeats Pro」や「Solo Pro」、Appleの第2世代AirPods(今年3月発売)にも採用されているが、その頃は「Siri連携を強化したり、遅延を短くしたりするくらいの能力なのだろう」と思われていた。しかし実際には、同じ半導体を使って高性能なノイズキャンセル機能・外部音取り込み機能を持ったAirPods Proが作れるものだったのである。

半導体は、高性能で独自性の高いものを作ろうとすると、開発費と製造コストが大きくなる傾向にある。一方で、大量に生産するほどコストは希釈される。だからAppleは、自社のあらゆるワイヤレスヘッドホンにH1を搭載したのだろう。Apple自身がAirPodsでヘッドホンのトップメーカーになったが、2014年にBeats Electronicsを買収しているので、同社が扱うヘッドホン製品の世界シェアはトップにある。その数を背景に技術を先行投入するわけだ。

Airpods

これは、iPhoneとiPadで自社製SoCを使い、性能とコストメリットを両立させていることとまったく同じやり方。要は「スマホでの勝利の方程式」をヘッドホンに持ち込んでいるから強いのだ。

ちなみにソニーのWF-1000XM3は、ノイズキャンセルに「QN1e」というオリジナルの半導体を使っている。一方、Bluetooth回りについては、MediaTek傘下のAiroha Technologyが開発したチップを初期サプライヤーとして使っているようだ。QN1eはソニーが他のノイズキャンセル搭載ヘッドホンで使っている「QN1」の低消費電力版で、主にハイレゾの処理ができるか否かが異なる。

どちらにしろ、多数の製品でうまく技術を活用することを前提に、自社でオリジナルパーツを作っているから差別化できているのだ。

ソフトと半導体で差別化、その上に必要な「目利き」と「ポリシー」

でもこれだけでいいヘッドホンはできない。

AirPods Proが良い音になっているのは、「音響系パーツの選択」や「ソフトウェアによる音響チューニングノウハウ」の存在があってのことだ。これが3つめの理由である。そうしたノウハウは、Appleの中だけにあったものではない。近年同社はオーディオ系エンジニアを多数雇用しているし、Beats買収以降はそちらからの合流もあり、共同開発によって得られたノウハウも多い。

そのノウハウを使い、適切なパーツを使い、H1で細かく音質コントロールをしていることが、AirPods Proの品質につながっている。半導体とソフトウェアにリードされたオーディオ製品作り、といってもいい。

現在、ハードウェア製造は中国で比較的素早く行える。EMSに依頼すれば、完全ワイヤレス型ヘッドホンを自社開発するのも難しくない。Apple自身、生産自体はパートナーに委託しており、そのパートナーは他社の製品も作れる。

Airpods

これからどんなメーカーからいい製品が出てくるかはわからない。しかし、こと「ワイヤレスヘッドホン」については、ここに書いたような原則を活かした製品作りをしたところが勝つ。そうした方向性は、Appleだけでなく、ソニーやBose、GoogleやAmazonなども意識する、ある種の鉄則である。

そんな中で差別化するには、半導体とソフトウェアの部分でいかに違うものを作るかが大切であり、「どういう風に作るといい音になるのか」「どう作ると快適なものになるのか」というポリシーを持っていることが重要なのだ。

そんな視点で考えると、AppleがAirPods Proでどんなヘッドホンを作ろうと思ったかがより明確になってくるのではないだろうか。




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