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なぜディスプレイの枠が細くなっているのか。テレビ・PC・スマホで巻き起こる『ベゼルレス』競争のゆくえ

見かけ以上の理由があります

Engadget US(翻訳:石井徹)
2020年3月14日, 午後12:00 in technology
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1億画素超えカメラ搭載スマホ、シャオミ「Mi Note 10」のグローバル版を試す。日本での発売に期待
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1億画素超えカメラ搭載スマホ、シャオミ「Mi Note 10」のグローバル版を試す。日本での発売に期待

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狭額縁化が進むテレビ、ノートパソコン、スマホの世界。数年前の製品から買い替えて、画面枠の細さに驚いた経験をお持ちの方も多いことでしょう。

画面の額縁を削っていく技術トレンドはどのようにしておこり、近未来にはどう形を変えてゆくのか。このコラムでは、長年テクノロジー業界をウォッチし続けてきた米Engadget シニアエディター Devindra Hardawarによる考察をお届けします。
私たちがスマホやパソコンで目にする画面は、"額縁(ベゼル)"で区切られています。最近では製品の側面まで画面が覆うスマホなどもありますが、少なくとも部分的には額縁が存在します。

初期のブラウン管テレビでは、現代の薄型テレビよりも大きな額縁を10インチほどの小さな画面を囲うかたちが一般的でした。ブラウン管のユニットが小さくなり、近年ではプラズマや液晶、有機ELテレビに引き継がれていく課程で、この額縁は徐々に小さくなっていきました。

そして今日では、テクノロジー業界の主戦場は"額縁をいかに無くしていくか"にあると言っても過言ではありません。画面と現実世界を隔てる境界線が少ないほど、優れたデザインとされ、ディスプレイやデバイスメーカーはミリメートル単位でのベゼル削減に挑んでいます。

なぜテクノロジー業界がベゼル競争を繰り広げるのか。第一の理由は単純です。ベゼルを小さくすればその分、小さいボディに大きな画面を詰め込むことができます。たとえばiPhone XS Maxは、以前のモデルiPhone 8 Plusよりも細い横幅で、1インチも大きいディスプレイを積んでいます。これはベゼルが以前と同じ幅ではできない芸当でしょう。

スマホの世界では2012年頃、大画面の"ファブレット"が大きな成功を果たし、テレビではここ1〜2年で4Kテレビが大きく普及しつつあります。その過程で多くの消費者が製品を選ぶものさしとして、「大きいほど良い」という基準を持っていることは疑いようがないことでしょう。しかし、巨大なテレビは過去数十年に渡ってお馴染みのものであったというのに、今さら額縁を数mm削り取るのに各メーカーが苦心しているのはなぜでしょうか。

HDテレビ

このトレンドのはじまりは、HDテレビが台頭してくる2000年代前半でした。初期のテレビは自宅に画面を置くのに十分なほどの魅力を備えていました。あらゆるショーや映画、ニュースが流れ、新しい世界を開ける窓が自宅にほしくない人はいるでしょうか。HDテレビの登場による高解像度化の流れは、テレビの映像表現のリアルさを一段引き上げ、また液晶テレビなどの新技術によって劇的な薄型化を実現しました。

ブラウン管の32インチテレビや巨大なリアプロジェクションセットは、家の貴重なスペースを多く占有します。しかし、50インチの液晶テレビが取るスペースはそれほどでもありません。それどころか薄型化の進展は、「壁掛けテレビ」さえも実現してしまいました。

「ディスプレイからベゼルが消え、筐体がますます薄くなるにつれて、テクノロジーは我々の日々の暮らしに溶け込んでいくように感じるのです」

Adobeのプロダクトデザイン担当シニアディレクター Khoi Vinh氏はEngadgetによるインタビューの中でこう語りました。

「これまでのディスプレイの多くが備えていた非常に厚いベゼルという存在は、ここに【デバイス】があると、私たちに認識させる役割を果たしていました......ベゼルが消えれば消えるほど、テクノロジーは現実世界に溶け込み、本棚の本やテーブルの上の花瓶と見分けが付かなくなっていきます」

ハイテク企業はデバイスを生活に不可欠な日用品へと昇華させようとしているとVinh氏は主張します。画面と現実世界を隔てる額縁をなくす試みは、ハイテク企業がその先端技術におけるリーダーシップを示す最新の手段の1つです。

そして、狭額縁化には単なるデザイントレンド以上の意味があります。このデザインの進化は、人がデバイスを使うときの作法に実際に影響を与えます。最近、筆者は「HP Spectre x360」をレビューし、また「LG OLED TV」を数年間使い続けていますが、それらのベゼルが細いデバイス達は、古い箱形デザインのテレビやパソコン達よりも、画面の中のコンテンツに没頭できるように感じました。

HP Spectre x360

狭額縁なテレビで高画質な4K Blu-rayで『Planet Earth II』を見た時には、まるで緑豊かなブラジルの熱帯雨林がリビングルームに現れたかのように感じました。そして狭額縁のノートパソコンは、ただWebを閲覧するときでさえも体験が変わります。Wikipediaの豊富な知識も、Webドラマ『Hot Ones』の最新エピソードからも、隔たりなく私に情報が流れ込んでくる感覚を得ました。

もっと例を挙げましょう。16インチMacBook Proと前世代の15インチモデルを見比べてみてください。パソコンに詳しくなくても、どちらが新しいものかは一目で分かるでしょう。

HDテレビの時代が本格的に到来し、消費者がテレビを絵画のように壁にかざるようになったとき、ディスプレイメーカーはさらなるスリム化のための新しい探究をはじめました。私が初めて購入したHDテレビは、フィリップス製の2005年モデルで、これは数インチ程度のプラスチックのベゼルを備えていました。2009年にはこの厚みを13mmまで縮めたサムスン製プラズマテレビに買い替えました。その時点でソニーのような先行企業は、ベゼル幅4.5mmの狭額縁テレビを製品化していました。

サムスン 8K

その後、2010年にシャープが発表した製品を契機に、このベゼル競争は熱気を帯びてきました。シャープは当時世界最薄の2.4mmベゼルの60インチテレビを発表したのです。しかしその記録は4カ月後に発表されたサムスンの1.9mmベゼルに塗り替えられました。

この狭額縁化レースは、家で観るテレビよりも店頭でのアピールで効果がありましたが、『テレビの未来は画面の中を覗き込むだけでない』ということを示唆する最初の兆候となりました。狭額縁化を進めるイノベーションの余地はまだ十分に残されていました。そして、テクノロジー業界全体への注目を集めることになりました。

■「InfinityEdge」の登場とその後

2010年代前半は、ガジェット好きにとって夢のような時代でした。この時期に登場したiPhoneとAndroidスマートフォンは、コンピューティングの概念にも大きな変化をもたらしました。

しかし、革新はモバイルの世界だけではありません。ノートパソコンもスマホに挑むように薄型化、軽量化を進めました。Appleの第2世代MacBook Air(Late 2010モデル)は、Macに洗練されたユニボディ構造の美学を導入しました。インテルが主導した「Ultrabook」の取り組みは、ASUSの初代Zenbook(2010年発売)の例のように、ノートパソコンのメーカー各社に比較的記憶に残るモデルの開発を促しました。これらのマシンは昔のノートパソコンと比べたら、はるかに薄くて軽いものでしたが、ディスプレイの周りにはまだかなり厚いベゼルが残されていました。

そこに登場したのが、デルの新しいフラッグシップです。

XPS 13(2015)▲XPS 13(2015)

2012年に史上最小の13インチノートパソコン「XPS 13」を発売したデルは、次に11インチ用のボディに13インチのディスプレイを詰め込む方法を模索していました。同じタイミングでシャープはPC市場に返り咲こうと考えていました。この両社が出会って未だかつて無いデバイス「XPS 13」(2015年版)に搭載される"InfinityEdge"テクノロジーを作り上げることになった......DellのXPSブランド シニアディレクターのDonnie Oliphant氏はそう証言します。

「シャープはディスプレイに関するおおよそすべての開発リソースを持っていましたが、製品化に向けたロードマップはありませんでした」。Oliphant氏はEngadgetにそう説明します。

「彼らはDellと一緒に開発すれば、PCの新たなスタイルを生み出せると考えていました。そうして我々の機構設計や電気回路設計の専門家、それにシャープのエンジニアリングスキルと技術が融合し、白紙のキャンバスが満たされました。最初のInfinityEdgeが誕生したのです」

2015年のXPS 13は、当時世界最小の13インチノートパソコンで、左右のベゼルの厚さはどちらも5.2mmに抑えていました。これは2013年同名モデル(幅10.8mm)の半分以下という細さです。Dellの挑戦はそこで終わりませんでした。それから数年間にわたり、ディスプレイの左右の厚みはさらに削られ、最終的には上下のベゼルも縮めていくことになります。

今年2020年のXPS 13は昨年秋の優れた2 in 1モデルから着想を得て、下辺のベゼルをほぼ完全に取り去る事に成功しました。下辺ベゼルは前世代の4分の1まで細められ、わずか4.6mmにとどめています。この改良によって少し高さがある16:10の13.4インチの画面をスリムなボディに押し込められ、Engadgetが「完璧なウルトラポータブルPC」と評した前世代モデルに匹敵するアップグレードを実現しました。

Dell XPS 13 2020▲Dell XPS 13の2020年モデル(左)と2019年モデル。2020年モデルでは下部のベゼルを大きく削っている

Dellの先進デザイン担当副社長 Justin Lyles氏は、シャープがもたらしたIGZO技術は大きなインパクトがあったと述べます。ディスプレイに欠かせない透明薄膜ディスプレイトランジスタに対する新しいアプローチであるIGZOは、液晶ディスプレイで一般的に利用されているアモルファスシリコン素材と比較して、ディスプレイの消費電力を大幅に効率化し、高解像度化と画素密度の向上にも道をつなげました。

そしてその副次的効果として、さらにベゼルを細くして、よりスリムなパソコンがデザインできるようになったのです。

XPS 13とInfinityEdgeテクノロジーは、PC市場の様相を根底から覆しました。ASUSやAcer、HPなどの競合他社は独自の狭額縁パソコンを投入して追従しましたが、Dellのフラッグシップに追いつくまでには数年の時間が必要でした。

そして今日では、画面の周りに分厚い境界線を持っているミッドレンジ以上のノートパソコンをほとんど見かけなくなりました。AppleはPC市場においても注目を集め続ける存在ですが、そのAppleでさえも2019年の16インチMacBook Proでは狭額縁化を後追いする動きを見せています。

■ベゼルレスの動きはモバイルにも

Galaxy S20
▲Galaxy S20シリーズ

ベゼルレス化のメーカー間競争は近年、スマートフォンや一部のタブレットの世界においても白熱しています。この火蓋を切ったのもやはりシャープで、2014年のAQUOS CRYSTAL(ソフトバンクとSprintの共同調達で米国でも発売)でした。このデバイス自体はすぐに忘れ去られてしまいましたが、まるでガラスの一枚板のようなそのデザインが、モバイル業界の目指す未来を垣間見せたことは記録に値するでしょう。2015年にサムスンはGalaxy S6/S6 Edgeで狭ベゼル化を進め、翌年シャオミはMi MIXのエッジレス大画面で人々を驚かせました。その後のスマホのデザイン競争も、いかに洗練されたエッジレススマホを誰が実現するかに注目を集め続けています。一方で、Essential Phoneのように、見かけだけがすべてではないことも言及しておくべきでしょう。

スマートフォンやタブレットで額縁をなくすのは、テレビやPC以上に難しい課題です。なぜならそれらは手に持って使うデバイスなので、手で支える周縁部までタッチパネルにしてしまうと、必然的に誤検知の可能性をはらむことになります。また、Reticle Researchのプリンシパルアナリスト Ross Rubin氏が指摘するように、真のエッジなしディスプレイを実現するための過程で我々は、ノッチやパンチホール(パンチ穴型)インカメラなど、スクリーン上を混沌とさせる邪魔なパーツとの共生に耐える必要があります。

Mi MIX Alpha▲Mi MIX Alpha

「画面内指紋センサーは一般的に、iPhoneのTouch IDのような物理ボタン上に配置する指紋センサーよりも機能的ではありません。クアルコムが開発している超音波型画面内指紋センサーのような高機能なタイプであってもです」

Rubin氏はこうも記述します。「シャオミのコンセプトMi MIX Alphaのように、スマホの背面まで画面が包み込むようなデザインの拡張も考えられます。が、これには物理的ボタンの配置を難しくする課題があります。SenselやSentonsのようなインターフェイスを開発する企業は、わずかな物理ボタン配置の不足を補うセンサーを開発しています」

フル画面化へのこだわりは、フォルダブルディスプレイや2画面スマホのムーブメントをうけて、新たな次元に突入しつつあります。額縁をなくすだけでは不十分で、画面のスタイルを好みにあわせて曲げたりねじったりするようになっています。

■ボーダーレスの未来へ

テレビ
▲サムスンの"ゼロベゼルテレビ"「QLED 8K」(2020)

ディスプレイの技術トレンドがベゼルレスに移行しつつあるののに理由を見出すのは難しくはありません。技術の進化によって、これまでよりもはるかに柔軟で効率的なディスプレイが製造できるようになっています。そして、消費者は間違いなくSFで観たような"近未来の画面"に憧れを抱いています。過去10年を通して、スマートフォンは"ユビキタスなブロードバンドレベルのセルラー通信"を通して、実際に私たちの身体の延長線上にあるといっていいほど身近なデバイスとなりました。

私たちは手元のデバイスを通して学校やオフィスのコンピューターに紐付けられています。スマートホームの夢は音声で応答するスピーカーの登場によってようやく実現しました。先ほど言及したように、私たちが使う画面はその境界線の存在によって区分されています。したがって、私たちの生活と技術とを区切る壁が溶けはじめ、シームレスな融合を果たしつつある現代においては、画面と現実の物理的な境界も消えていくのが理にかなっていると言えるでしょう。


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