2021年に入って早々に再び緊急事態宣言の発令がなされるなど、コロナ禍での混乱が続いているようですが、携帯電話業界も2020年誕生した菅政権の影響を強く受け、2021年も料金に関する動きに大きな注目が集まることは間違いないでしょう。
すでにNTTドコモの「ahamo」などのサービス開始が3月に控えており、現在はライバルとなるKDDIの対抗策が待たれている状況です。しかしながら年明け早々から大きな動きが起きているわけではないようですので、今回は料金以外の業界動向、具体的には5Gとスマートフォンの2021年の動向を予測してみたいと思います。
まずは5Gに関してなのですが、2020年は国内でのサービス開始のタイミングにコロナ禍が直撃し、散々なスタートを切ってしまったことに間違いありません。では2021年はどうなるのか?といいますと、なんとなく地味に普及することになるのではないか……というのが筆者の見方です。
なぜ“地味に普及”なのかといいますと、1つは当面コロナ禍が継続するので、5Gを活用した大規模イベントの実施は2021年中も難しく、派手なアピールができない状況がしばらく続くため。その一方で、5Gの環境整備自体が急速に進むというのが、もう1つの理由になります。
2020年は東京都心でさえスポット的にしかエリアをカバーできていない状況が続いた国内の5Gネットワークですが、2021年はようやく本腰を入れてエリアの面展開を本格化する予定です。とりわけ4G向けの周波数帯を5Gにも積極活用しようとしているKDDIとソフトバンクは、2022年3月末までに5G基地局を5万局設置し人口カバー率90%超を達成するとしていることから、(速度面は期待できませんが)2021年中は5Gのエリアがかなり急速に広がると考えられます。
一方のNTTドコモは、あくまで5G向けの周波数帯を使ってエリアを拡大する方針であることから先の2社と比べればエリアは広がらないでしょう。ただそれでも2022年3月末には5G基地局を2万局整備し、5Gらしい高速通信ができるエリアを人口カバー率55%にまで広げるとしており、こちらの方が5Gエリア内での高速通信ができる可能性は高いといえます。
このように各社のエリア戦略による違いはありますが、2020年は人口カバー率を比較できる段階にすらなかった5Gエリアの整備が予定通り進めば、2021年にはかなり身近なものとなることは間違いないといえそうです。
そしてもう1つ、5Gの普及を促す要因となるのがスマートフォンです。5Gスマートフォンの値段が高止まりしていた最大の要因であるチップセットの低価格化が徐々に進んでおり、それに伴って低価格の5Gスマートフォンが急増すると見られているからです。
実際2020年後半には、ハイエンドより下のクラスに向けた、クアルコムのチップセット「Snapdragon 765」シリーズを搭載し、5〜7万円台の5Gスマートフォンが急増しました。ですが2021年にはより下のクラス向けチップセット「Snapdragon 690 5G」を搭載したスマートフォンの投入が本格化し、3万円台の5Gスマートフォンが急増すると見られています。
すでにNTTドコモやKDDIのauブランドが、同チップセットを搭載した「AQUOS sense5G」を春に発売するとしていますが、他社からも同様のモデルが次々登場する可能性が高いでしょう。国内の低価格モデルは3万円前後が売れ筋とされていることから、Snapdragon 690 5G搭載スマートフォンの本格化で、特に携帯大手のメインブランドが扱うスマートフォン新機種はほぼ全てが5G対応になるのではないでしょうか。
その5Gに関連してもう1つ、2021年は“ミリ波”に対応した5Gスマートフォンが急増するのではないかとも筆者は見ています。ミリ波は周波数が非常に高いので障害物にとても遮られやすく、遠くに届きにくいことから5Gスマートフォンの中でも対応機種が非常に限られており、アップルの「iPhone 12」シリーズもミリ波対応モデルは米国でしか販売されていません。
しかしながらミリ波こそが5Gの実力を発揮できる帯域だという見方は強く、2021年はとりわけ海外の携帯電話会社がミリ波の活用を積極化してくると見られていることから、2021年はミリ波に対応したスマートフォンが増えてくるのではないかと考えられます。それゆえ利用が難しいとされるミリ波に対応させることで何を実現できるのかという各社の提案も、2021年は注目されることになりそうです。
一方、そのスマートフォン自体の進化はどうなるのか?といいますと、2021年は消費者に分かりやすい部分での進化はあまり見られないのではないか、というのが筆者の読みです。
例えばカメラを主体とした性能の強化は2021年も続くでしょうが、2020年のサムスン電子やファーウェイ・テクノロジーズのハイエンドモデルはカメラの性能強化のため出っ張りが非常に目立つようになり、スマートフォンとしてのバランスを崩してしまっていました。それだけにハード面での制約をクリアできなければ、一層の進化を進めるのは難しいのではないでしょうか。
また近年話題となっている折りたたみスマートフォンに関しても、安心して使えるレベルに進化したとはいえ技術や部材調達などの問題もあって他のメーカーが容易に追随できるとは考えにくく、価格を大幅に下げるのも難しいことから、依然マス層に向けた販売拡大は難しいのではないかと考えられます。
とはいえ最近では、オッポが巻取り型ディスプレイを採用したコンセプトモデル「OPPO X 2021」を打ち出すなど新たな動きが見られるのも事実。具体的な製品として登場するかどうかは分かりませんが、新たな形状のスマートフォンを模索する動きは2021年も積極的に進められることになりそうです。