携帯3社のオンライン専用プランの中でも注目度が高い、NTTドコモの「ahamo」。申し込みが殺到してSIMや端末の配送に遅れが出るなど、人気の高さゆえに混乱も少なからず生じているようです。

ahamo docomo penalty Masahiro Sano
▲ahamoはその注目度の高さゆえか、サービス開始直後から契約者が殺到したようで、SIMや端末の発送に遅れが生じるなど混乱が起きているようだ

そのahamoが登場した背景にあるのは2020年11月20日、武田良太総務大臣がサブブランドでの料金引き下げを認めず、メインブランドでの料金引き下げを求めたことが背景にあると見られている……というのは本連載でも何度か触れてきたかと思います。

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そして2020年11月27日の武田大臣の会見内容を見ますと、サブブランドでの料金引き下げを認めない理由として、メインブランドからサブブランドへ移る際には番号ポータビリティや新規契約、古いプランであれば長期間の契約継続を前提とした割引、いわゆる“2年縛り”の解約金など多くの手数料がかかるのに対し、サブブランドからメインブランドへ移る際はそれらの手数料がかからない、優遇措置を取っていたことを理由に挙げています。

この大臣発言を受け、携帯3社は新料金プラン導入に際して自社、あるいは他社への移行にかかる手数料を0円にするなどの措置を打ち出し、消費者がより他社への乗り換えをしやすくなったことは確かです。ですがahamoをはじめとしたNTTドコモのプランをよくよく見てみますと、他社に乗り換える際の障壁となり得る「解約金留保」を、新料金プランでも温存しているのが気になります。

解約金留保とは要するに、先に触れた2年縛りの契約期間を、ahamoのように2年縛りがない、あるいは縛りが弱い新しいプランに移行しても留保するというものです。

例えば、NTTドコモが2019年5月まで提供していた「カケホーダイプラン」を契約していた人がahamoに乗り換えた場合、ahamoは定期契約が存在しないので、一見すると乗り換え直後に解約すれば解約金はかからないように見えます。ですがカケホーダイプランで料金を割り引くため「2年定期契約」をしていた場合、ahamoに乗り換えても2年定期契約の期間は留保されることから、その期間が終了する前にNTTドコモを解約して他社に乗り換えると解約金(カケホーダイプランの場合は税込1万450円)を支払わなければならないのです。

もちろん旧プランでの2年定期契約の期間が終了すれば、それ以降はahamoの契約に則るため解約金が取られることはなくなります。ですがahamoに乗り換えるタイミングによっては、2年近く他社への乗り換えを我慢しなければならなくなる可能性もあるわけです。

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▲ahamoのWebサイトを見ると、解約金留保が継続される旨の説明がなされている。「5Gギガホ プレミア」など他の新料金プランでも同様の措置が取られているようだ

他社が解約金留保を免除していることも、NTTドコモに対する不満を一層強くしている要因といえるでしょう。2年縛りの解約金は2019年10月の電気通信事業法改正で大幅な規制がなされたことから、KDDIとソフトバンクは新料金プランへの移行を促すべく解約金留保を免除する措置をとっているのですが、NTTドコモはこの動きに追随しませんでした。

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▲総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」より。2019年10月の法改正により、それ以降に提供されるプランのいわゆる“2年縛り”の違約金は税抜きで1000円と、従来の10分の1水準にまで引き下げられている

それゆえNTTドコモの解約金留保に対する姿勢は、総務省の有識者会議でも議論の遡上に挙がったことがあります。それが2020年11月20日に実施された「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第20回会合で、KDDIは「一部の他社」が解約金留保の免除をしていないことが、改正電気通信事業法の「趣旨に反する」として批判をしていますし、有識者からNTTドコモに対して、なぜ解約金留保をするのかという質問もなされていました。

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▲「モバイル市場の競争環境に関する研究会」第20回会合のKDDI提出資料より。同社のauブランドでは解約金留保を免除している一方、NTTドコモを指すと見られる「一部他社」は免除をしていないとして批判している

これに対してNTTドコモ側は、2年定期契約があくまで2年間利用することを約束した上で月額料金を安くする仕組みであるため、法改正後のプランへ移行する際解約金は取らないものの「既往契約の考え方に基づきまして、留保はさせていただくという考えにした」と答えています。

また2021年3月1日、NTTドコモがahamoで販売する端末などを発表した記者説明会において、筆者がahamoの解約金留保について質問した際、同社の常務執行役員 営業本部長である鳥塚滋人氏は「全体でどうするかは今後も検討が必要だが、スタート時点では留保される」と答えていました。留保のあり方について何らかの検討はなされているようですが、当面は解約金留保を継続する方針のようです。

同社が解約金留保を継続する理由は、同社は年配の利用者が多いことから古いプランの契約者も多く、留保を免除してしまうと他社への転出が加速してしまうためではないかと筆者は想像しています。ですが1つ気になるのは、古いプランから乗り換える際の解約金を問題視していた武田大臣が、その解約金を継続することにつながるNTTドコモの解約金留保に言及していない点です。

実際、武田大臣は2020年12月1日の記者会見で、記者から法改正で2年縛りの解約金などの解消が進められていることに言及された際、「それ自体が、ある意味『まやかし』なんです。9500円の中途解約金をやめるという、これは、2019年の電気通信事業法の改正以前の方には、この負担は軽減されてないんです。それ以降の新規契約の人しか適用されないんです。それ以前に契約した人は何の特典もないんです。そんなのって、あり得ますか」と強い口調で話し、古いプランの解約金に対する問題意識の高さをうかがわせていました。

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しかもこの記者会見は、先の総務省の有識者会議でNTTドコモの解約金留保が指摘された直後に実施されたものでもあります。なのであれば武田大臣が解約金留保にもっと言及してもいいように思えるのですが、少なくとも現時点に至るまで、武田大臣がそのことに言及する様子は見られません。

無論、単に大臣がこの問題を見逃しているだけという可能性もあるでしょうが、旧プランの解約金を問題視しながらNTTドコモの解約金留保を認め続けるという一貫性のない対応が続くことは、以前にも触れた“NTTひいき”との見方を強める要素の1つになりかねないとも感じてしまいます。それだけに武田大臣にはぜひ、解約金留保に対して何らかの言及をして頂きたいところです。

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