NTTドコモのahamoはスマホ業界に大きなインパクトを与えた。ソフトバンクが「SoftBank on LINE」、KDDIが「povo」を相次いで投入。楽天モバイルを含む4キャリアが3000円を切る値付けとなった。

昨年12月3日の発表会で、ahamoは「サブブランドではなく、NTTドコモの料金プラン」ということだった。どう見ても「サブブランド」のような気もしなくもないが、同じことは総務省も思っていたようだ。

NTTドコモの井伊基之社長は「総務省に事前に『これはサブではありません』と説明に行ったが、『これはサブだ』と言われた。キャリアメールもなければショップでも扱わない。どう見てもサブブランドだろうと。ちょうどその頃、総務省でメールアドレスの移転の議論があり、ahamoでキャリアメールを外したのは「あてつけか」と言われたりもした。しかし、20代の人はもうキャリアメールにこだわっていない。僕らも含めて、年代の高い人は誰も理解できない。オプションでドコモメールを使えるようにしたらどうかとと社内で掛け合ってみたが『要らない。コストもかかるし無駄だ』と反対されてしまった」とahamo導入の経緯を明かした。

ahamoは若者をターゲットにしており、メールはもはや「余計なもの」というコンセプトに徹していえるのだ。

ahamoに関しては20GBを海外でも利用できるというのも魅力だ。ただ、NTTドコモの海外ローミングサービス(200以上の国と地域)に比べて、対象の国が82の国と地域で少なかったりする。実はこれには理由があった。

「ahamoの料金(2980円)で海外ローミングを提供しようとすると、ローミング契約の安い国しか選べない。ただ、対応地域は日本人が訪れる場所はほぼ網羅されているのでは充分なはず」(井伊社長)。

ahamoは安い料金でNTTドコモのネットワーク品質ということで、海外から来ている家族が一時的に使いたいという声も出始めているという。

「在日米軍関係のご家族から引き合いがある。ahamoはオンライン専用なので契約してもらえる。ahamoの英語化もまだできていませんが、これから頑張ります」(井伊社長)。

ドコモショップの看板を外してもいい

オンライン専用のahamoが普及することで気になるが、ドコモショップの行く末だ。今後、ドコモショップを閉鎖し、数を減らしていくなんてことはあり得るのか。

井伊社長は「現実問題として、ショップに依存している販売体制を見直さなくてはいけない経営課題がある。これまでは販売にコストをかけすぎていた。ドコモショップは全国に2300店舗あるが、年間で数千億円の維持費がかかる」とドコモショップに対しては何らかの変化が必要であると認めている。

そこで井伊社長が考えているのが、ドコモショップという広いスペースを活用し、新しいビジネスの場にしていくことだ。ユーザーに対して、有償でさまざまなサポートやレクチャーをする拠点にシフトさせていく。

「マイナンバーの普及や利用促進など、デジタルデバイドの方々を支援する。その費用はきちんと自治体や国からいただいて運営する。また、現在展開しているメルカリ教室のように、他社のサービスのためにドコモショップを使っていただき、収益源にする。これが新しいドコモショップの活用法になるし、今後、代理店の収益につながり、マルチな機能を提供できるようになれば、ドコモの看板を外してもらってもいいと思っている」(井伊社長)。

ahamoの衝撃により、もうひとつ不安視されるのがNTTドコモの収益面だ。通信料金収入が下がれば、収益も悪化しかねない。井伊社長は、まずはコストカットに着手するという。

「営業とネットワークは削減できる部分だらけの宝の山だ。特にネットワークに関しては、コアネットワークの作り方を変えていく。本来、設備増設は先々の需要に対して前もって用意していく。お金があると1年分、まとめて設備投資してしまうが、それではダメ。短期的に容量が減ってきたら追加するという方法は面倒だが、コストをコントロールするにはそうした手法が求められる。短期に対応すると設備よりも工事の人件費がかかるが、そのバランスを見極めていきたい」(井伊社長)

もうひとつのコストカットとして期待されるのがインフラシェアリングだ。5Gなどの基地局を複数のキャリアで共有するというやり方だ。実は井伊社長はNTTの持ち株会社時代に、JTOWERというインフラシェアリング会社に2割出資を行っている。

「インフラシェアリングはオフィスビルやショッピングモールが中心になる。JTOWERにドコモが直接、出資をすると他社に使ってもらえなくなるおそれがあった。そのため、NTT(持ち株)が2割出資することにした。こうすることでドコモも他社もシェアリングしやすくなる」(井伊社長)

SoftBank Airならぬ「docomo Air」誕生か

営業面やネットワークでコストを削減する一方、新たな収益源を作り出す必要がある。そこで、井伊社長が注力したいと考えているのが金融事業だ。

井伊社長は「dカード、d払い、dポイントといったあたりは収入につながる。金融事業において、ドコモは後れをとっている。PayPayさんはサービスをフルラインナップで提供している。決済や資金移動業、レンディングサービスなどに取り組んでいかないといけない。しかし、ドコモには金融事業のノウハウはない。どこかと組むか、一緒に会社を作り、人をスカウトするか。私たちと価値観が一緒でお互いの資産を掛け合わせて良いことができるパートナーを探さなくてはならない」と語る。

ちなみに先日、NTTドコモが三菱UFJ銀行と提携するという報道があったが、井伊社長は「当社が出した情報ではない」とした。

新たな収益源を作る出すには、これまでNTTドコモが手がけてこなかったサービスに進出するというのも一つの手だ。そんななか、井伊社長が目をつけているのが固定通信市場だ。

「ソフトバンクさんのSoftBank Airに脅威を感じている。自分はNTT東日本に13年間、在籍し、FTTHの立ち上げを進めていたが、導入してもらえるところにはすでに行き渡っている。賃貸住宅向けに傷をつけない設備などを考えたが、FTTHを入れてもらうにはどうしても穴が必要になる。でも、無線の威力はすごい。簡単な設置でLTEや5G通信ができてWi-Fiが使えるのはアリだと思っている」(井伊社長)

まさにSoftBank Airならぬ「docomo Air」を井伊社長は作り出そうとしているようだが、いまのところ、社内の反対にあっているようだ。

「まだ、みんな賛同してくれない。コストがいくらになるのか、何のためにやるのか財務部長に指摘されている。しかし、お客様から『SoftBank Airを買っちゃった』という声を聞く。我々にはFTTHがあるから安心感があるというか危機感がない。なんとしてもやりたい」(井伊社長)

すでにSoftBank Airが4880円ということで、料金のターゲットは4000円台になりそうだ。

井伊社長になって、ahamoというモバイル業界がひっくり返る飛び道具が出てきたが、ひょっとすると固定通信市場においても、今年、NTTドコモが大暴れする可能性が出てきたようだ。

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