Appleは12月8日(2020年)、ワイヤレスオーディオの最上位モデルとして「AirPods Max」を発表しました。12月15日に発売されますが、無刻印モデルは12月30日到着と年内ギリギリ。刻印を入れるともう少し早く手に入るようです(※編集部注:12月8日発売直後の状況ですでに変動しています)。

Apple AirPods Max (Amazon)

とくにスカイブルーは人気で年内入手は難しそうだ

AirPodsシリーズは左右のイヤーピースが独立した完全ワイヤレスイヤホンとして登場・存在してきましたが、今回はオーバーイヤー型の「ヘッドホン」。アルミニウムのハウジングはぷっくり丸みを帯びていて、なんとなくレトロな雰囲気が個人的に好みです。

ここにApple Watchでおなじみの「デジタルクラウン」とボタンが備わり、音量調節や曲の再生・一時停止、長押しでSiri呼び出しといった操作が行なえます。ボタンはアクティブノイズキャンセリングのモード切り替えに使います。

ハウジングから光沢あふれるステンレスのフレームが伸び、その先には少し変わったパーツが備わっています。ちょうど頭頂部に当たる部分はニットメッシュ素材でできており、ヘッドホン全体の重さを分散することで長時間、快適に装着できるような配慮がされています。

コンピュテーショナルオーディオ、再び

Apple製イヤホン・ヘッドフォン用チップ「H1」を搭載

AirPods Maxのアクティブノイズキャンセリングでは、計9基のマイクのうち8基を用いて耳の内外のノイズを拾い、これを打ち消す処理を行ないます。また、アダプティブイコライゼーションは耳に届く信号を測定し、イヤークッションの吸着度や密着度に合わせて中低音を調節する仕組み。もちろん空間オーディオにも対応します。

Appleはこうしたオーディオ再生技術を「コンピュテーショナルオーディオ」と紹介しており、HomePodシリーズやMacBook Proのスピーカーシステムと同様に、Apple設計のチップによる処理が介在し、最適化したうえで再生する仕組みを備えています。H1チップには10コアのオーディオコアが備わっており、オーディオソースやマイクから拾った音を瞬時に処理して機能を付加し、耳に届けてくれます。

しかし、H1チップの搭載と、こうしたオーディオ処理は、AirPods Proでも行なってきたことでした。最上位モデルとしてAirPods 「Max」たる理由は、オーディオ機器の要となるドライバーにあります。

AirPods Maxは「デュアルネオジムリング磁石モーター」を備える40mmダイナミックドライバを搭載しました。低音の豊かさや中音域の正確さ、高音域の透明感をつくり出すドライバは、最大音量にしてもモーターの働きによって歪まず、可聴音への影響を1%以下に抑えます。

コンピュータ処理と、アナログ部分へのこだわりの両立による品質向上は、iPhone 12 Pro Maxのカメラにも現われていたことで、研究開発だけでなく、ひとつの製品として成立させる開発力・デザイン力を総合的にもつAppleらしいアプローチと思います。

ネーミングとLightning、そして価格…

AirPods Maxについて意外に思ったのことが、3つほどありました。

ひとつ目は「AirPods Max」というネーミング。少し違和感があります。これまでオーバーヘッド型の製品は、「AirPods Studio」のような名称になのではないかと言われていましたし、私もそのほうがしっくりくると思っていました。しかし、iPhone 12 Proの上位モデルのように「Max」と付けられました。そう考えると、iPhoneと整合性が取れているようにも見えます。

一方で、積極的に「Studio」というネーミングを避けたのではないかとも思いました。これだけステイホームと言われているなか、この製品も、積極的に持ち歩くと言うより、家の中で使われることを想定しているはず。348グラムと割と重量もありますし、家で使うのに「スタジオ」はないだろう、という単純な話で避けたのなら納得できます。

2つ目は充電端子がLightningということ。AirPods Max本体を充電するにはLightningケーブルが必要で、なぜUSB-Cにしなかったのか、ということです。端子の大きさや充電の規格に対応させる際の問題など、様々な事情があると思いますが、充電端子の共通化を目論む人々にとっては当てが外れてしまったかもしれません。

もっともiPhone 12同様、Lightning - USB-Cケーブルが付属品リストにありますので、Macとつないで充電という使い方はできます。また、Lightning端子にLightning - 3.5mmオーディオケーブルをつなぐことで、飛行機などでオフラインで音楽を楽しむ際にも利用できる仕掛けになっています(まぁ、USB-Cでも実現できますが……)。

最後は価格です。米国で549ドル、日本では6万1800円(税別)と、これまでのAirPodsシリーズに比べ、はるかに上位に位置づけされていることがわかります。オーディオ製品として考えても決して安くはない部類で、まだ実際に音を聴いていないのでわかりませんが、老舗オーディオメーカーの製品に迫る価値を発揮するかどうかは、実機の到着を待つほかありません。

とはいえ、Appleは相当な自信があってリリースしたわけですから、AirPodsがそれまでのワイヤレスオーディオの市場を一変させたように、ハイエンドオーディオの世界をひっくり返す可能性はあると思います。これで6万は安い! と思えるほどに……。

Apple AirPods Max (Amazon)

毎月製品リリースするつもり?

AppleはAirPods Maxの発表と共に既に9月にアナウンス済みだったApple Fitness+を12月14日に開始することも明らかにしました。当初はアメリカのほか、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、イギリスと、英語圏の6ヵ国に限られ、残念ながら日本向けにはまだ案内されていません。

Apple TV+と違い、字幕を見ながらフィットネスを楽しむのは現実的ではないことから、少なくとも各国の言語への吹き替えを行なわなければならないでしょう。また、Apple Musicのラジオのように日本側での制作を促すかもしれず、どういうつもりなのかはまだわかりません。

それにしても、9月のApple WatchとiPad Air、10月のiPhone 12シリーズ、11月のM1搭載Mac、そして今回のAirPods Maxと、4ヵ月連続で製品をリリースするという怒濤の戦略を目の当たりにし、ワクワクした2020年後半でした。

新型コロナウイルスの感染拡大で各国でロックダウンがあり、依然として大きな懸念を抱かざるを得ない状況ではありますが、Appleは3月、4月、5月と3ヵ月連続で新製品を出し、6月は完全オンラインによるWWDCを開催、7月にiMacのアップデートもありました。2020年前半も、ほとんど毎月何かしら発表を行ってきたわけです。

製品以外にも、直近ではエイズデーの取り組み、2020年のベストアプリの発表、アクセシビリティに関する発表などがあり、膨大なメッセージを顧客に届け続けています。もはやAppleはすっかり新しい日常を前提とした戦略にスイッチしており、他メーカーの対応が遅れていることすらも助け、テクノロジー業界の話題を鮮やかに独占していると言えるでしょう。