Amazonが自社ブランドの新ハードウェアを発表した。いくつか新製品が登場しているが、その主役となったのは家庭向けロボット「Astro」だった。同社は7年前、音声アシスタント「Alexa」を搭載するEchoシリーズを発売、その後、継続的にAlexaを発展させながら関連デバイスを開発、販売してきたが、とうとう家庭向けロボットの発表に至ったわけだ。

ただし、現時点でこのAstroは”ベータ版”という位置付け。「Day 1 Editions」と題し、北米で999.99ドルで販売を開始するものの、全ての人が購入できるわけではない。招待制での購入申し込みを受け付けとなり、日本を含む他地域での販売は現時点では未定となる。

Astro以外にも、ピクチャーフレームを模した壁掛け型のディスプレイ兼スピーカー「Echo Show 15」、液晶ディスプレイとテーブルプロジェクタを組み合わせて遠隔で子供とのインタラクティブなコミュニケーションが行える「Glow」、フィットネスバンドの「Halo View」、呼び鈴と監視カメラを組み合わせたセキュリティデバイスキットの「Ring Alarm Pro」なども発表されている。

なお、このうち日本で発売されるのは「Echo Show 15(2万9980円)」のみだ。

Echo Show 15(Amazon.co.jp)

Alexaを発展させた”自宅パトロール”型見守りロボット

入手可能という点でまず紹介すべきはEcho Show 15なのかもしれないが、本誌読者の視点で言えばやはりAstroが気になるだろう。

Amazon自身はこのデバイスを「家庭用見守りロボット」と位置付けている。その紹介映像や説明を見ていると“自宅パトロール隊員“とでも言いたくなるような製品だ。

Amazonらしく実用的かつ経済的な作りにはなっているものの、家庭向けとあって愛嬌のある振る舞いは意識しており、ディスプレイに表情を映し出し、カメラで周囲の人間を確認しながら愛想を振りまきながら動く。

最も大きな特徴は高い位置から周囲を把握できる自動昇降型の潜望鏡カメラを内蔵していることだろう。Astroは自律的に部屋の中を移動しながら、潜望鏡カメラを必要に応じて伸ばして部屋の中の様子をスキャンし、留守中の自宅内を確認してくれるのだ。

Amazonによると、この潜望鏡カメラで部屋内の様子を把握するだけではなく、食材を冷蔵庫に入れるところをスキャンし、買い忘れなどを確認できる機能もあるとのことだが、コンセプトビデオと説明だけでは、まだどこまで管理できるのかはわからない。

“ただいま〜“と自宅に帰るとAstroが迎えてくれて、キッチンで食材を整理して冷蔵庫に保存。何を何個入れたかを記憶し、さらにはレシピを表示するためにAstroを呼び出して食材を取り出して調理すると消費したことも把握してくれる、なんてところまでできるようになる可能性もあるが、さて、どこまで発展させることができるのか、今後、世代を重ねていくごとにより実用的になっていくことは確かだ。

一方で、自動首振り型ディスプレイをもつ第三世代Echo Show 10の発展型として捉えることもできるはずだ。音楽再生や動画再生、音声操作によるデジタルアシスタントの機能も、呼び出すだけで自分のところに来てくれるとなると、より生活に密着したサービスと発展するかもしれない。

もちろん、ペットとの共存や子供の帰宅など家族との関係、コミュニケーションにも活用できるだろう。

AIアプリケーションはユーザーが実際に使うことでニーズが開拓され、アプリケーションとしても成熟していく。日本市場にはそうしたノウハウが溜まってからの展開となるはずだ。

Amazonの商品だけに価格面でも将来はさらにこなれたものになるのではないだろうか。サイズの面でも映像からはかなり大きいことが予想されるが、バリアフリーならぬ“バリアアリー“な場合が多く、リビングを中心とした同線にドアなどの仕切りも多い日本の住宅事情にマッチするのか、どのような価値をもたらしてくれるのか、日本市場からはやや野次馬的ではあるが、Astroの動向を興味深く眺めてみたい。

ただ、Astroだけではなく、他のEchoシリーズ、とりわけEcho Glowなどは、米国らしい家族の絆、祖父母と孫のコミュニケーションなどを重視した商品開発がされており、一貫したポリシーが感じられる。

それらに加えて各国ごとのローカライズは、かなり細かく対応してくるAmazonだけに第二世代以降で、日本での投入も考えられるかもしれない。

まるでピクチャーフレームなEcho Show 15

さて、“ファミリー“というテーマを背景に感じる新製品群の中で、唯一、日本で発売されるのが前述したEcho Show 15だ。シリーズ中、もっとも画面サイズが大きい一方でピクチャーフレームのように仕上げられているため、設置手法次第では存在感を消しやすいデザインになっている。

筆者宅にはリビングダイニングとキッチンを繋ぐカウンターにEcho Show 10が置かれており、毎朝、起き抜けにキッチンにいくとこちらを向いてくれる彼女(あるいは彼?)にその日の天気やニュースヘッドラインを訪ねるのだが、やはり手狭なマンションでは少々存在感が大きすぎる。

ピクチャーフレームのように使えるEcho Show 15ならばと思うが、15.6インチフルHDのディスプレイをスッキリかけられる“空いている壁“を見つけるのは、我が家では少々難しい気も。

もちろん、サイドボード上などに立てかけても良いのだが、インテリアとのマッチングは確認しておきたいところだ。また照明環境との馴染みも気になるため、表示色温度や明るさの調整機能なども、実際の製品で確認すべきところだろう。

ただ、そうした部分を除けばこのサイズで3万円を切る価格設定に興味はある。Echo Show 15では、他のEcho Show で使えるウィジェットを画面上に複数並べることができる。この製品だけが日本に投入されるのは、他のEcho Show向けにコンテンツ開発が進められていたということもあるはずだ。

Netflix、Paravi、ひかりTV、Apple Music、Spotifyなど、Amazon提供コンテンツ以外にも再生できるサービススキルは多く、過去7年の蓄積が活きている。カメラを通じて個人を認識するほか、“電子音“を学習して何かが起きた時にユーザーにアクションを促すなどの機能も興味深い。

こちらも”日本で提供されているサービス”とのマッチングがどう取られるかを見ていきたいが、少しばかり感じたのは日米のeHome製品に関するちょっとした温度感の違いだ。

日本人の生活スタイルにマッチしたローカライズ、カルチャライズを

以前ならば……といってもかなり昔の話ではあるが、米国で開発された製品やサービスは真っ先に日本市場を目指してローカライズ、カルチャライズが進められたものだ。

日本に強い家電メーカーがいたことや、製品の機能や品質にうるさい顧客が多かったことなどを理由に、日本市場での反応を活かしたい、そして大きな市場、成長する市場であったことなどもあって、かなり日本向け製品開発は優先順位が高かった。

しかし工業製品に対する要求品質や、高品位な製品に対して対価を支払う意欲などは逆転。市場としても将来的な発展が見込みにくい、あるいは住環境を含めてカルチャーギャップが大きいことなどもあってか、日本語化はされてもカルチャライズまではされないことが多くなったと、長年レビューをしてきた経験から感じている。

しかし、Amazonが提供しているAlexa関連製品はセキュリティカメラなどのシステムも合わせ、ライフスタイルに密着した製品ばかりだ。機能面では日本語に対応できても、商品の企画や対応サービス、コンテンツの立て付け、連動する製品などは、細かく日本向けに合わせ込まないと、なかなかしっくりと生活の中に取り入れにくい。

もちろん、出始めの”面白い”という部分は重要だが、Amazonが狙っているのは最先端というよりも、最先端に触れながらも生活に馴染むデバイスだろう。動画配信のAmazonプライムビデオでは、日本制作の番組に投資を始めているだけに、Alexa関連製品に関しても日本市場を意識した製品の”カルチャライズ”を期待していきたい。

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