New World
Amazon Games

アマゾンのオリジナル動画コンテンツは一定の成功を収めている一方で、ゲーム事業は独自のヒットタイトルに恵まれているとは言いがたい現状があります。その背景にあるAmazon Game Studios関係者ら30人以上の証言を元にした、過去と現在の苦闘が伝えられています。

約9年にもわたる物語に一貫しているのは、1つの要因がゲーム事業を拡張する上で苦戦に繋がっているということ。それはアマゾン本社の堅実な経営スタイルと、ゲーム開発者にとって最善の方法とのミスマッチです。


そもそもアマゾンのゲーム部門トップであるマイク・フラッツィーニ氏は、スタジオ立ち上げ前にはビデオゲームを作った経験がなかったとのこと。書籍のWeb販売部門で頭角を表したフラッツィーニ氏はベゾス氏に信頼され、「1つのビジネスを経営できれば他のビジネスもやっていける」という社内哲学のもと、ゲーム部門を任されることに。

2014年当時話題となったゲーム動画配信Twitchの買収もフラッツィーニ氏の指揮とアマゾンの莫大な資金力により実現した成果です。さらには「EverQuest」や「Portal」のクリエイターやEAほか大手パブリッシャーの幹部など、ビデオゲーム業界の大物を何人も雇い入れています。

しかしフラッツィーニ氏は彼らゲームのプロからの助言の多くを無視してきたとのこと。たとえばアマゾンのゲームはすべて「10億ドル規模のフランチャイズ」にする必要があると頻繁にスタッフに伝えつつもプロジェクトを人手不足にさせ、業界標準の開発ツールを使う代わりにアマゾン独自のツールを開発するように主張。

そしてフラッツィーニ氏の下の幹部はPC向けのMMORPG「New World」(新大陸の発見や植民地化が盛んだった15~16世紀の世界がモチーフ)がアメリカ先住民に酷似した住民を殺害することをプレイヤーに求めるのは人種差別的だという告発を拒否していたそう。この件に関しては、結局アマゾンは部族コンサルタントを雇って和解したと伝えられています。

そのためか2020年発売予定だった本作は2021年に延期されていますが、現在公開されているトレーラーでは敵の人間色が薄まり、クリーチャー寄りになっている模様です。

ほかアマゾンではデータが重視され、主要な決定事項を承認してもらうため6ページもの文書を作成するよう求められる企業文化があり、この点もゲーム開発者には嫌われているようです。

そして当初はゲームメーカーの相場の2倍の報酬がもらえたものの、送り出したゲームが成功してもインセンティブはなく、会社に過ごす時間だけが報われ、何よりも仕事を維持すること(開発期間を延ばすこと)を優先している人もいるとの証言も伝えられています。

その一方で、従来のゲーム会社と同じように女性には男性と同じ機会が与えられない「bro culture」(男性優越主義で体育会系の文化)があるという、職場の性差別問題が存在するとも語られています。


アマゾンは2020年秋に独自ゲームサービスLunaを発表し、10月から米国限定でアーリーアクセスとしてサービスを開始しています。ジェフ・ベゾスCEOがゲーム業界を制覇する野望を抱いているのはほぼ確かと推測されるものの、「アマゾン勝利の法則」はゲーム業界では効果を発揮しにくいのかもしれません。

Source:Bloomberg