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総務省は2021年5月17日、有識者会議「競争ルールの検証に関するWG(第18回)」を開催した。

3キャリアから安価なオンライン専用プランが登場し、MVNOが厳しくなる中、MVNOにとって音声の定額プランを提供できるかが、今後の焦点となる。

また、2019年10月に電気通信事業法が改正され、スマホの販売への割引額にメスが入った。昨年は各社で5Gがスタートしたものの、同じタイミングで世界的に新型コロナウイルスが発生。日本では緊急事態宣言が出る中、キャリアショップは営業時間の短縮などを余儀なくされた。割引規制やコロナなど、この1〜2年、スマホの売り上げにどのような影響があったのか、検証する場となった。

今回、プレゼンテーションにオンライン登壇したのはMVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会やIIJ、オプテージ、メーカー側を代表して情報通信ネットワーク産業協会がプレゼンを行った。

注目は、アップルのAnn Rollins・政務部APAC統括上級本部長が本社からプレゼンを実施したことだろう。

これまで総務省はSIMロックの解除や2年縛りの見直し、解除料の値下げなど、ユーザーがキャリアを乗り換えしやすくし、料金競争を促す施策を次々に投入してきた。しかし、Ann Rollins氏はその成果が何ら出ていないことを指摘する。

『電気通信事業法が改正された2019年10月以降、MNPを利用したキャリア間移動は大幅に減少しており、その傾向は依然として継続しているものと考えられる。適正な競争の促進によりユーザの選択肢が広がり、またユーザがキャリアを移動しやすくなったのであれば、実際の移動も促進され、MNPは増えるものと考えられるが、実際はそのような状況には至っていない』と手厳しい。

総務省の調べでは、2019年10月の電気通信事業法改正やコロナ禍により、スマホの販売台数や売り上げ高は一時的には落ち込んだが、現在では回復した状態にあるという。ただし、ハイエンド機種よりもミドルクラスの製品が売れ筋の中心になっている。

Ann Rollins氏は日本市場について『スマートフォン普及率は上昇する一方で、出荷台数自体は伸び悩んでいる。端末の買替えサイクルの長期化や中古端末のご利用等、 様々な要因が推測されるが、新規の端末市場の観点では、5Gへの切り替えという大きなイベントがありながらも、活況を欠く状況であると言えるのではないか』と指摘している。

確かに電気通信事業法改正によって、多額の端末割引が無くなったにもかかわらず、販売台数は横ばいというのは「割引を規制しても影響がなかった」と総務省は判断しているのかも知れない。

しかし、日本市場は昨年3月から5Gが始まったタイミングでもある。アップルのようなメーカーの立場とすれば「もっと売れてもおかしくないのでは」とツッコミたくなるのだろう。

実際、コロナ禍で世界的には絶好調のアップル・iPhoneだが、日本では世界に比べて厳しい状態に陥っているようだ。

『事業法が改正された2019年10月を起点として、前後15か月の決算の数値を、前年同期比で比較した。アメリカ、ヨーロッパ、中国と他の地域がすべて前年比増となり、またiPhoneの全世界での打り上げが14%増となっているにも関わらず、日本の売り上げは前年比11%に留まっている』(Ann Rollins氏)というのだ。

特にアップルが懸念するのが、日本における5Gの普及だ。

Ann Rollins氏は『残念なことに、5G端末の普及について、携帯電話契約者数に占める割合をみると、全体のたった3%に止まっている。例えば、韓国での普及率は17%との公式データがある。実際にお客様が5Gを通じて 新しい技術やサービスの利益を享受するためには、対応端末の普及が不可欠だが、現状は5Gの普及は全体として低調であると言わざるを得ない』という。

日本では5Gの普及を促進させようと、令和2年度税制改正大綱で「5G導入促進税制」盛り込み、5Gシステムの構築を国家戦略に位置づけている。

しかし、5Gスマホに対しては上限2万円の割引しか適用させず、5Gスマホ普及の足を引っ張っている状態だ。

Ann Rollins氏は『インフラと端末は車輪の両輪といえる。どんなに高速道路を作っても、そのうえを走る車がなければ意味は無い。このことから、通信料金と端末の分離が達成された今、5G端末普及促進の観点から、5Gへの乗換えとして購入する端末について、例外を設けることが必要ではないか』と指摘する。

今年春から各キャリアからオンライン専用プランが登場し、月々の通信料金の支払いは安くできそうだ。しかし、5Gスマホに買い換えるのは、割引額もほとんどなく、心理的な障壁はかなり高い。

Ann Rollins氏は『5G普及を遅らせないための何らかの施策が必要だ。ユーザーの方にとって重要なのは携帯電話にまつわるトータルコストだ。完全分離が進み、低価格プランが登場した今、市場競争に任せるべきことは市場競争に任せることが望ましく、それによってさらなるトータルコストの低下が期待できる。ユーザーにとって多様な選択肢を提供するためにも、一律の端末購入補助を維持する必要性を精査し、5G向けの例外をご検討いただけるよう要望したい』と締めくくった。

一部には「割引がないならミドルクラスのスマホで充分ではないか」という指摘もあるようだが、やはりハイエンドのスマホの普及が技術的なイノベーションを起こし、我々の生活を変えていく必要があるだろう。

日本でも世界に後れを取っている5Gの普及を加速させるためにも、「スマホの売り方はどうあるべきか」を改めて議論する必要がありそうだ。