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アップルとGoogleが共同開発した新型コロナ接触通知APIは世界各国のアプリに採用され、特に英国では60万人の感染を防ぎ6000人の命を救ったとの推計もありました。しかし両社の本国である米国では、このAPIを使ったアプリはほとんど失敗に終わったとの調査結果も報告されています

この接触通知API開発を率いた当時の責任者が、各国政府に本技術を採用するよう呼びかける上での苦労話や、米国が連邦全体で統一せずに各州政府ごとに別々のアプリになってしまったことへの不満を語っています。

これは2020年春、アップルとGoogleが共同で接触通知APIを開発したさい、アップル社内で健康戦略イニシアチブを担ったMyoung Cha氏がTwitterで明かしているものです。Myoung氏は最近オミクロン株の感染が広がっているなか、友人達から接触通知アプリのスクリーンショットを送ってくる友人が昨年よりも増えていると述べつつ、開発当時のことを振り返っています。

Myoung氏らが各国の政府から受けた最大の反発は「なぜ政府がAPIを使ってオプトインしたユーザーに関する大量のデータを集めるのを許可しないのか」だったとのこと。ちなみに、アップルとGoogleは本APIを使うアプリは収集するデータは最小限に抑え、陽性判定の申告も患者の自主性にまかせ、位置情報にはアクセス不可など、政府が個人情報を得ることが厳しく制限されています

これらの反発に対して、Myoung氏は「より中央集権的な悪しき政府が、感染拡大の防止を大義名分にして個人情報や位置情報が吸い上げることから、ユーザーのプライバシーを守るためだ」と説明したそうです。

そうした政府からのありがちな反論は「私たちを信じてください、政府なんですから」だったとのこと。しかし、これは理論上の話ではなく、シンガポールとオーストラリア(シンガポール政府接触通知アプリはアップルとGoogleのAPI不使用で、集めた情報を警察が捜査に利用。オーストラリアはシンガポール製アプリを元にした)で実際に起こったことだと述べられています。

またEU諸国ではアップルとGoogle開発APIの採用も早かった一方で、米国ではかなり苦労したそうです。

「最終的には、米国の各州がパッチワークのように独自のアプリやEN Expres(公衆衛生当局に代わって、アップルとGoogleがサービスを提供するシステム)を通じてEN(接触通知APIの略称)の技術を採用した。他の国と違って、米国には統一したメッセージと展開を保証する連邦政府の関与がありませんでした。これが、米国での普及を妨げる最大の要因だったと思います」と不満が語られています。

またCDC(アメリカ疾病予防管理センター)などの公衆衛生の専門家から、Myoung氏らが発表した論文や技術によって命が救われたことを示す証拠を集めてほしいと言われても、「数カ月前に発明されたばかりなのに」(十分なデータがあるわけがない)と叫ぶしかなかった、とぼやいています。

Myoung氏は米バイデン政権がもっと協力的になると期待したものの、大量のワクチン接種プログラムだけが必要だ(米国全土で共通の接触通知アプリには関心が無い)と考えているようだと述べています。

オミクロン株やその亜種の感染拡大を封じ込める上で、Myoung氏が主張している対策は大規模で迅速な検査、EN(接触通知アプリ)および飲み薬の3つ。接触通知を受け取った人はすぐに検査を受け、隔離して感染を防ぎ、陽性の場合は迅速に治療を受けるべきだと訴えかけられています。

Myoung氏の主張は正鵠を射ているとも思えますが、もともと米国の連邦制度のもとでは各州政府の自主性が尊重されるため、連邦政府が管理する接触通知アプリを受け入れさせることは極めて困難なのかもしれません。

Source:Myoung Cha(Twitter)

via:9to5Mac