WWDC21の発表の中では(iOSやiPadOSに比べると)地味かもしれないが、着実な進化を遂げているのが「ホームネットワーク」だ。その中核を担うのはApple TVに搭載されている「tvOS」の進化であり、各デバイスのOSが使うホームネットワーク・フレームワークである「HomeKit」の進化である。

2021年はどんな進化を遂げるのか、WWDC21で明らかとなった点を確認していこう。

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Appleの「ホームネットワーク」とはどんなものか

進化を解説する前に基本的な仕組みを紹介しておこう。

Appleのホームネットワーク機器は、家庭内LAN上にある対応機器を、iPhoneやMacなどの各デバイスから呼び出すフレームワークとして構築されている。

ようするに、

  • ホームネットワークの中でどう管理されるか

  • 機器からどう呼び出してコントロールするか

が規定されていて、その仕組み全体が「HomeKit」というわけだ。

操作する人が家の中にいて、ホームネットワーク機器をすべて家庭内LANから操作できる場合はいいが、そうでない時、例えば宅外から家電をコントロールしたい場合には、どうしても「中核」となる機器が必要となる。

HomeKitの場合には、それが「Apple TV」もしくは「HomePod」になる。特にApple TVは、テレビというディスプレイがあってアプリも動作するため、利用の幅が広くなる。だからHome Kit対応製品でホームネットワークを作る場合、Apple TVやHomePodは必須の存在ではないのだが、「あったほうが活用の幅が広がるもの」になっている……と考えればいいだろうか。

というわけで、「新OSによるホームネットワークの進化」という場合には、2つの技術の組み合わせで成り立つのだ。1つは「iPhoneなど、デバイスのOSの新機能」であり、もう1つが「ハブとなるApple TVなどの新機能」、ということになる。

「映像機器」としてのApple TVが進化

ホームネットワークの新機能として考えた場合、「Apple TVなどの新機能」と「HomeKit対応機器の連携」で実現される機能に分けて考えた方がわかりやすいだろう。

まずは前者から説明する。こちらの方がわかりやすいからだ。

Apple TVのOS「tvOS」は「tvOS 15」へバージョンアップする。UIなどに大きな変化はないようだが、iOSなどと同様、FaceTimeを軸にした機能が大きく変わる。特に、FaceTimeで通話中の人同士で同じコンテンツが楽しめる「SharePlay」は、スマホ同士・タブレット以上に、テレビ+スマホという組み合わせで価値を発揮しそうだ。

▲Apple TVが「SharePlay」に対応。スマホやタブレット以上に見やすく、活躍しそうだ

Apple TVの価値は映像の視聴やゲームにある。アプリやサービスの購入・ID連携が必須になるが、Apple TVのリモコンは宿命的に「文字入力が苦手」である。Siriでの音声入力もあるが、もう少し楽な方法が欲しい。

というわけでiPhoneをリモコンがわりにする機能が以前よりあったのだが、これからはもう少し楽になる。iPhoneが搭載しているFace IDやTouch IDなどを認証に使えるようになるからだ。

また、AirPods ProやAirPods Maxの連携も強化される。Dolby Atmosによる「空間オーディオ」の再生にこれらのヘッドホンが使えるようになった。

AirPods Pro/Air Pods Maxでの空間オーディオ対応は、iPhone/iPadでも利用可能だが、それらとApple TVのものは「少し変わる」ようだ。リビングでゆったりと見ることが多いApple TVの特質に合わせ、音場空間の設計が広めになる。

そして、モーションセンサーもさらに活用される。自宅で映画を見る場合には、トイレやキッチンなどに移動することもある。その時に「リアルな音場」が再現されると、とても変なことになる。目の前に絵がないのに音がリアルな方向から出ることになるからだ。

それを避けるため、「席を立って動いた」と判断すると、一時的に空間オーディオの再現を止める。そして、また移動して戻ってくると再現する空間の方向が「ロック」され、空間オーディオの再生が再開される仕組みだ。

さらに、HomePod miniを持っている場合、それをApple TVのスピーカーとして活用することも可能となり、2つあればもちろんステレオになる。

▲HomePod miniを2つ使い、Apple TV用のスピーカーシステムに

ビデオカメラ連携強化で「置き配」認識も

次にHomeKit対応機器との連携について触れていこう。

前述のように、Apple TVやHomePodは、Apple機器によるホームネットワークにとって「必須」のものではない。だが、ハブとしての存在があると、使える機能が増えるので重要度は増している。新機能の多くは、そうした「ハブ」の存在を前提にしているものが少なくない。

例えば「置き配の認識」。以前よりホームセキュリティカメラとの連携はあったが、今回はそれがさらに強化され、「玄関の外に荷物が届いた」ことを認識することで、iPhoneへと通知で教えてくれる。

▲カメラ映像から荷物の到着を認識、iPhoneへと「通知」する機能も登場

この機能はカメラがAIを使って行っているのではない。カメラの画像を、Apple TVやHomePodの中の「デバイス内AI」が認識して処理しているのだ。だから、それらの機器がないと通知ができないことになる。一方で、カメラとしてはシンプルなものでも実現可能であり、さらに、映像をクラウドの向こうに送らないため、プライバシー面でも有利になる。

▲WWDC21の基調講演では、屋外のカメラや照明の連携がアピールされた。この辺はアメリカらしい

もともとHomeKitでの監視カメラ映像は、Appleを含めたサービス運営側にも中身が見られないよう、暗号化した形で伝送され、暗号化したまま蓄積されるようになっている。これを「HomeKit Secure Video」というが、前述の「置き配の認識」は、それを拡張したローカルでの映像認識、ということになる。

スマートキーは「NFC」で実現。詳細は夏以降

HomeKitが絡む新機能の中でも注目なのが、iPhoneのWalletに「自宅の鍵」をスマートキーとして登録する機能だ。

▲iPhoneのワレットの中に「スマートキー」を登録できるようになる。自宅の鍵として導入するには、HomeKit対応の新しいスマートキーが必要になるようだ

今までもHomeKitに連携したスマートキーはあったが、それはHomeKitの宅外アクセス機能を利用するとか、音声認識を使うとか、そういった意味での連携だった。だが今後実装されるのは、「タッチ」によるスマートキーだ。

詳細の公開は夏とされており、現状でわかっていることは少ない。だが、いくつかの興味深い情報が明らかになってきている。

まず、対応するスマートロックには「NFC」が必須であること。従来のBluetoothでの通信によるロック解除ではなく、NFCでのタッチ解除が採用されるためだ。

また、NFCによるスマートキーはiPhoneの「エクスプレスカード」として登録可能になる。結果として、iPhoneのバッテリーが少ない時でもタッチが可能だし、Walletアプリを開かなくても動作する。これは、モバイルSuicaなどの交通系ICカード決済で使われている特性と同じものである。ただしこのとき、スマートキーとモバイルSuicaなどが「同居」できるかどうかまではわかっていない。

おそらくは、夏以降に具体的な対応機器が出てきてから自宅に導入する際の条件が見えてくるのだろうが、これまで多かった「Bluetoothによるスマートキー」とはずいぶん違うものになり、導入のハードルも違うものになるだろうことは予想できる。

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