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例年とは異なり、iPhone不在となったアップルのスペシャルイベント。発売の遅れはあらかじめ告知されていたため、予想通りの展開ではありましたが、逆にiPadの拡充ぶりには期待を上回っていました。特に、ラインナップ全体のバランスを取る上で、iPad Airの投入はインパクトが大きかったと総括しています。

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▲フルモデルチェンジを果たしたiPad Air

元々、iPadは、9.7インチの初代iPadがあり、そこから徐々にバリエーションを広げていきました。薄型がAir、小型がminiといった形でしたが、次世代のコンピューターとしてiPadの用途を広げるにあたって、アップルが用意したのがiPad Proです。現行モデルを見ていただければ分かるとおり、iPad Proはチップセットに「A12Z Bionic」を搭載、測距ができるLiDARを搭載するなど、その機能はまさにプロ向けです。

一方で、それがゆえに、価格もプロ用になってしまった側面があります。現行モデルを見ると、もっとも安価な11インチのWi-Fi版iPad Proでも、128GBの最低容量で8万4800円。セルラーをつけたり、容量を1段階上げたりするだけで、税込み価格は10万円を超えてしまいます。機能の先進ぶりを考えると、高性能なタブレットがほしいユーザーでも宝の持ち腐れになってしまう可能性はあります。

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▲iPad Proはプロのニーズを満たす端末として研ぎ澄まされていった。写真は3月発売のiPad Pro

“プロ用”に対して“一般用”と位置づけられたiPadは、価格こそリーズナブルですが、スペックを見ていくと物足りない部分がありました。新しいiPad Airが出る前までは、デザインもホームボタンがある形状で、充電端子もLightning。いずれも第1世代のApple Pencilには対応したものの、第2世代のようにiPad本体に磁力でパチッと止めることはできませんでした。

とは言え、制作のプロでなくとも「Magic Keyboard」は使いたいですよね?ホームボタンがあるのは便利な半面、どうしてもベゼルが太くなってしまうため、映像を楽しむときには邪魔になります。一般用iPadの最上位に位置づけられていた19年モデルのiPad Airでもチップセットは「A12 Bionic」とiPhoneから半年遅れで、少々物足りなさを覚えたのではないでしょうか。

そんな中、アップルはiPad Airを一般用iPadの最上位モデルとして、しっかりポジショニングし直したような印象を受けます。形状はiPad Proに近くなり、ディスプレイサイズは10.9インチに拡大。Face IDこそ採用されませんでしたが、代わりにTouch IDをトップボタン(電源キー)に統合して、ホームボタンがない形になりました。iPadOSとの相性を考えると、俄然こちらの方が魅力は増します。

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▲ホームボタンがなくなり、ディスプレイは10.9インチに拡大

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▲Face IDは非対応だが、トップボタンと指紋センサーを初めて統合

さらにサプライズとして、チップセットにはiPhoneにもまだ搭載されていない「A14 Bionic」が採用されています。19年モデルとは投入月が異なるため、一概には言えませんが、iPad Airとして見ると、一気に2世代分の進化を遂げたことになります。おそらく、A14 BionicはiPhoneにも搭載されることになりそうですが、それをiPadが先取りしたのは異例と言えるでしょう。

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▲新型iPhoneに先行する形でA14 Bionicを搭載した

それでもA12 Bionicをゴリゴリにチューニングした「A12Z Bionic」のiPad Proにはパフォーマンスは及ばないそうですが、普段使いなら違いは分からないかもしれません。LiDARや120Hzディスプレイなどが必要なければ、iPad Airでもプロ用として使えてしまいそうです。動画編集や映像制作などを突き詰めるとiPad Proをチョイスした方がいいのかもしれませんが、これで十分という人も多いはずです。

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▲高い処理能力を生かし、ゲームのグラフィックスもよりリアルに

しかも価格は6万2800円から。カラバリもiPad史上最多になる5色展開で、グリーンやスカイブルーのように、攻めた色も用意されているため、選ぶのが楽しくなりそうです。元々iPad Proと無印iPadの間に位置づけられていたiPad Airですが、新モデルによって、よりその関係がはっきりしたと言えそうです。各種制作などのクリエイティブに使うというのでない限り、背伸びをしてiPad Proにする必要なく、ユーザーはiPad Airと無印iPad、ないしはiPad miniから選べばいいというわけです。

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▲カラバリや価格でも攻めた端末だ

ただし、ストレージの選択は少々悩ましいところ。新しいiPad Airには64GB版と256GBの2つが用意されていますが、その中間にあたる128GBはありません。経験上、64GBだと動画などをダウンロードしているとすぐにいっぱいになってしまう一方で、256GBはちょっと多すぎるかも……と思うところがあります。ただ、256GBにすると、価格が11インチ版、128GBのiPad Proと5000円程度の差になってしまい、iPad Proシリーズに比べてリーズナブルなiPad Airの魅力が薄れてしまいます。

このスペックなら256GBあった方が安心なことも事実で、条件の異なる128GBのiPad Proと比べたら価格が近づくのは当然ではありますが、いちiPadユーザーとしては、やはり選択肢として128GBはほしかったと感じています。