iPhone 12 で全機種が対応、アップルは5Gで何を目指すのか(佐野正弘)

スマートフォンのプロ化が進む

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年10月15日, 午前 06:46 in Apple
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米国時間の2020年10月13日、アップルが新製品発表会を実施して新iPhone「iPhone 12」シリーズ4機種などを発表しました。すでに多くの報道がなされているのでご存知の人も多いかと思いますが、今回発表された新iPhoneは普及モデルの「iPhone 12」「iPhone 12 mini」と、上位版というべき「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」の4機種で、いずれも5Gに対応している点が大きなアピールポイントとなっています。

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▲アップルが新たに発表した「iPhone 12」シリーズは、全機種ともにデザインを一新し、なおかつ5Gにも対応したのが大きなポイントとなる

振り返れば、アップルにとって5G対応は苦労が絶えないものでもありました。すでに主要なスマートフォンメーカーが5G対応機種を投入する中、アップルだけ5G対応が遅れたのには、アップルにモデムチップを供給していたインテルの5Gモデムチップ開発遅れが大きく響いています。

この出遅れを受けアップルは、モデムチップでは大手でありながら、アップルとは訴訟合戦を繰り返し犬猿の仲となっていたクアルコムと2019年に電撃的に和解。なんとかiPhoneの5G対応に目途を付けたわけですが、一連のアップルの対応からは5Gへの出遅れに相当の危機感を抱いていた様子を見て取ることができるでしょう。

そうしたことから今回の発表会では、米国最大手キャリアのベライゾンのCEOが登壇して5Gのネットワークやサービスに言及するなど、5G対応をかなり大きくアピールする内容となっていました。ようやくライバルとの差を詰められたことで、アップルとしてもひとまず胸をなでおろした、といったところではないでしょうか。

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▲今回の発表会にはベライゾンCEOのハンズ・ベストバーグ氏も登場。5Gの特徴や米国での5Gの展開状況などについて説明していた

すでに世界各国で5Gの整備競争が進められている中、アップルのような高付加価値のハイエンドモデルを得意とするスマートフォンメーカーが5Gに対応することは、市場競争を勝ち抜く上で必要不可欠なものであることは確かです。ですが単に5Gに対応したというだけではスマートフォンの通信速度が速くなるだけに過ぎず、iPhone、ひいてはアップルらしさを打ち出せないのもまた確かでしょう。

それだけにようやく5G対応が進んだ今後は、iPhoneに5Gが載ることで何ができるのか、という利活用の提案が求められるところです。そして今回の発表の中で、アップルの5G活用に向けた狙いを見ることができたのが、iPhone 12 Pro/12 Pro Maxの存在です。

両機種はともに、iPhone 12よりカメラが1つ多いトリプルカメラ構造を採用しておりズーム撮影が可能なほか、物体との距離を測定するLiDARも搭載。さらにiPhone 12 Pro Maxは広角カメラに1.7μmの大型センサーを搭載して暗所での撮影がしやすくなるなど、より高度なカメラ性能を備えています。

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▲iPhone 12 Pro/12 Pro Maxは3眼カメラを搭載するなどカメラ機能に一層力を入れたモデルだが、それを5GやA14 bionicと組み合わせることで、多彩な用途に活用できる

ただ5Gという視点で見た場合、より重要なポイントとなるのがプロユースへのこだわりです。実際両機種は、アップルが新たに提唱するRAW撮影フォーマット「Apple ProRAW」に対応するほか、動画に関してもスマートフォンで初めて、ドルビーの「Dolby Vision」方式による最大4K・60fpsでのHDR撮影に対応するとしており、それらはいずれも非常に高いコンテンツの質を実現する一方、データ容量も大きくなると考えられます。

ですがiPhone 12シリーズはいずれも最新の高性能チップセット「A14 Bionic」を搭載しています。そこで発表会ではその高い性能を生かして、撮影した高品質かつ大容量の写真や動画をiPhone 12 Pro/12 Pro Maxで直接編集し、さらにシェア、つまり5Gのネットワークを活用してデータをクラウドやSNSなどに伝送できることもアピールされていました。

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▲高度なカメラとA14 Bionicの搭載で、撮影から編集までを1台のiPhoneで、ワンストップでこなせるようになったという

iPhone 11 Proの時は「Pro」と名前が付いていながらもプロ向けという印象が弱かったのですが、5Gを搭載したiPhone 12 Proでは、その充実した機能・性能によってプロユースに応えられることを明確に意思表示しているように感じました。それゆえアップルは5Gの活用によって、映像や写真をトリガーにしながら“プロ向けiPhone”を事業の1つとして確立しようとしているのではないかと感じるのです。

常に価格競争力が求められるコンシューマー向けとは異なり、プロ向けのデバイスは価格よりも仕事に応えられる機能・性能が重視されることから、iPhoneのプロ化が高い性能と高い利益を追求するアップルの方向性とマッチするのは確かでしょう。従来の4Gのネットワークではプロが求める大容量データ伝送に応えるのが難しかったですが、5Gではそれが実現できると踏み、今後「Pro」シリーズを明確にプロユースモデルと位置付け、さらなる高機能化と高額化を推し進めてくる可能性はありそうです。

ただ5Gによる映像伝送でプロのクリエイターを狙い、スマートフォンのプロ化を進めるという動きは、すでにソニーモバイルコミュニケーションズが「Xperia 1 II」などで目指しているものでもあります。同社はさらに、現在開発中の「Xperia PRO」でビデオカメラなどと連携する機能を搭載、プロの映像制作の現場に5Gの活用を推し進めようとしています。

またシャープも、やはり8K映像のエコシステムに5Gの活用を打ち出しており、その手段の1つとしてスマートフォンの活用を訴えています。そうしたことからスマートフォンのプロ化は、実は意外と競争が激しい分野となりつつあるのも事実です。

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▲ソニーモバイルコミュニケーションズはミリ波にも対応した「Xperia PRO」を、ビデオカメラなどと連動させる仕組みを用意するなどして、プロクリエイター向けの活用を勧めようとしている

もちろんアップルは、Macなどで長年培ったクリエイター向けツール開発事業者との連携、そしてクリエイターからの信頼という点で優位性を持ってはいます。ですがスマートフォン単体でのクリエイティブ活動は、現在のところSNSを主体とした比較的ライトな層が中心で、プロがどこまでスマートフォン単体でクリエイティブ活動をしてくれるか?という点は未知数でもあります。それだけに、5GによるiPhoneのプロ化に向けてアップルが今後どのような動きを見せ、それがプロのクリエイティブの世界にどのような影響を与えるのかは、大いに関心を呼ぶところかもしれません。


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