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4つのモデルすべてが5G対応となったiPhone 12ですが、5Gの高周波数帯、いわゆる「ミリ波」に対応したモデルは北米向けのみとなっています。日本でも数社がミリ波の提供を順次開始していますが、現時点で全国にエリア展開されているのは既存の4Gの周波数帯のやや高い周波数帯「サブ6」です。サブ6はその名の通り6以下、つまり6GHz以下からLTEの周波数の上、3.6GHzあたりまでの周波数帯の呼称です。

ミリ波、サブ6にはそれぞれ特性があります。ミリ波はより広い帯域を利用できますからスループットを高めることができます。しかし障害物に弱いという弱点があります。サブ6は4Gの周波数の延長ですから、基地局設計やアンテナ配置もこれまでのノウハウが行かせます。ミリ波よりも障害物に強く、広範囲に届きます。5Gエリアを早急に広げるためにもサブ6は有用なのです。そして国やキャリアによって5Gの周波数帯の導入は異なっているのが実情です。

それでは現在、世界各国の5Gの展開はどうなっているのでしょうが。ノキアが10月15日に開催した「Connected Future 2020」では、最新の5Gの状況をノキアソリューションズ&ネットワークスのCTO、柳橋達也氏が説明しました。

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2020年8月時点で、5Gを展開しているキャリアは世界で92社。その多くがアメリカ、ヨーロッパ、アジアに集中しているとのこと。日本は5Gで出遅れたと言われますが、世界レベルで見ればむしろ早期に開始したと言えます。ちなみにアメリカと韓国で5G NR方式のサービスが始まったのは2019年4月。日本はそれからわずか1年後にサービスを開始しています。

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では各国の5Gの通信速度はどれくらいでしょうか?OPENSIGNALの速度テスト調査を見ると、スループットはアメリカ1815Mbps(1.815Gbps)と世界の中でもダントツに高速であることがわかります。続くのはオーストラリア、スイス、韓国で1200Mpbs(1.2Gbps)前後。アメリカとの差は歴然としています。

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これはアメリカの5Gが主にミリ波を使用しているからで、ミリ波の高速特性が十分に発揮されているからです。一方他の国はサブ6を主体に5Gの展開を行っています。iPhone 12のミリ波対応が北米のみとなったのもここに理由があるわけです。アメリカで販売する5Gスマートフォンはミリ波対応は必須、他の国では現時点ではサブ6が主流のためあえてミリ波に対応させるメリットは多くありません。

ところが5Gによりアメリカの通信環境が世界一になった、というわけではないようです。同じくOPENSIGNALの調査によると、アメリカの5Gの平均スループットは50.9Mpbsにすぎません。韓国の312.7Mpbs、オーストラリアの215.7Mbps、台湾の210.2Mpbsと比べると1/6から1/4程度とかなり落ちるのです。

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これはアメリカがミリ波の展開を進めている一方で、サブ6の展開が追いついていないからとのこと。ミリ波は障害物に弱いことから建物を回り込むことができません。現在4Gでカバーされているエリアをミリ波でカバーするとなると基地局の数をいま以上に増やさなくてはなりません。ミリ波だけでは5Gは成り立たないのです。

ノキアのイベント会場では5G NRの3.4-3.6GHz、つまりSub6を使ったSA方式の通信デモが行われていました。テスト端末の速度は1.2Gbpsをマーク、サブ6でもしっかりと「ギガ」の速度を出しています。iPhone 12の発表会ではVerizonの5Gへのフォーカスが目立ったために、「ミリ波こそが5G」のような印象を受けたかもしれませんが、サブ6とミリ波を組み合わせてこそ最高の5G環境が得られるのです。

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アップルとしてはiPhone 12の全モデルをミリ波に対応させたかったでしょうが、世界の5Gの展開がまだサブ6を中心としていることと、ミリ波対応iPhone 12は本体側面にアンテナを設置する必要があるなどコスト高で設計も難しくなります。2020年時点での各国の5G展開を考えると、北米モデルだけをミリ波対応させるのは現実的と言えます。

とはいえアメリカ以外の国も、サブ6でエリアを広げつつ、2021年以降はミリ波も拡充されていく予定とのこと。スマートフォンもミリ波に対応したモデルが今年に入ってから増えています。

5Gの周波数帯はサブ6、ミリ波に加えて今後は4Gの周波数帯も転用されていきます。またアメリカのT-Mobileの600MHz帯のように低い周波数も利用されていくでしょう。各キャリアはそれぞれの周波数帯の特徴を生かしながら、スマートフォン向け以外にもさまざまな通信サービスを展開していく予定です。

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さて、iPhone 12のおかげで急に注目を集めるミリ波ですが、高速性だけではなく遅延の低さも特徴です。その低遅延性はクラウドへのレスポンスの早さから自動運転やリモート医療などへの応用が期待されています。しかしノキアは低遅延性をGPSのような位置情報測定にも使えると考えています。

遅延が低くなれば、基地局と端末の間のデータ送受信時間が短くなり、タイムスタンプの精度が高まります。つまり端末が移動した際、その移動時間をより正確に計測できるようになるわけです。3つの基地局と端末の間の移動時間を正確に測定することで、リアルタイムに端末の位置を算出することが可能になるというわけです。柳橋氏によると将来はセンチメートルの単位で位置を測定できるようになるだろうとのこと。

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5Gには「超高速」「超低遅延」「同時多数接続」という3つの特性があります。ここに「高位置情報測定」が加われば、5Gの応用展開はさらに広がっていくでしょう。スマートフォンだけではなく産業向けにも5Gは重要なインフラになると考えられています。新しい特性が加わったことで、各国の5Gの展開速度はより加速していくかもしれませんね。

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