本日オンライン開催されたアップルのオンライン発表イベント『One more thing.』にて、ウワサのApple Silicon(アップルシリコン)こと、Mac用の自社開発SoCがついに正式発表となりました。

名称は『(Apple) M1』。iPhoneで使われてきたAシリーズを引き継がない、新しいシリーズ名となりました(といっても厳密には、既にiPhone 5s搭載の『M7』モーションセンサーSoCがあるのですが)。

特徴は以前より同社がアピールしてきたように、CPUの基本アーキテクチャーとしてAシリーズと同じくArm系を採用する点、そして現状でのインテル製CPUと内蔵GPUを超える処理速度を備えつつも、電力効率も大幅に高めた点。

公式リリースでは、「省電力シリコンとして世界最速のCPUコア、ワット当たり世界最高のCPU性能、パーソナルコンピュータでは世界最速の統合型グラフィックスを備え、Apple Neural Engineにより画期的な機械学習性能を発揮します」と、その性能と電力効率に自信を見せます。


性能向上率はウワサ以上?

とくにGPUは現行世代から大飛躍

▲M1の主な特徴一覧。大枠としてはウワサ通り、Apple A14を強化発展させ、Mac向け回路(Thunderboltコントローラーなど)を統合したものとなっています

CPUとGPU部は、それぞれ8コア構成。CPUコアに関しては、昨今のiPhone向けAシリーズと同じく、高性能コアと高効率(電力性能に優れる)コアの非対称型――いわゆるBig-Littleタイプを採用。それぞれ4コアずつとなります。

また、アップルが昨今力を入れる機械学習用エンジン『Apple Neural Engine』も当然搭載。こちらは16コアを用意します。

▲M1CPU部の電力対性能効率アピール。目安となっている10Wという値は、同時発表されたMacBook AirのTDP値と思われます

気になるその性能ですが、公称値ながらTDP(消費電力と発熱の目安)10W枠におけるCPU性能は、最新のノートPC用(詳細不明)と比べて2倍、電力効率自体は3倍に。

またGPU、つまりグラフィックス部に関しても、10W制限の枠では2倍の速度に。性能を合わせた場合の電力は3分の1でOKとアピールします。

その差は実機レベルになるとさらに広がり、例えば同時発表の新MacBook Air(以下MBA)では、現行機(インテルIce Lake版)と比べて公称CPU性能は3.5倍、GPU性能は5倍に。

さらにバッテリー駆動時間はローカル動画再生時で18時間(6時間延長)、さらに発熱軽減でファンレス駆動も実現……と、全方位で強化された性能をアピールしています。

さらに現行モデルとの性能向上という点では、MBA以上のモデルもあります。たとえばMac miniではGPU性能は最大6倍となり、機械学習での性能は最大15倍高速に。そしてバッテリー駆動時間という点では、13インチMacBook Pro(Thunderbolt×2基仕様:以下MBP)において、最大2倍もの動作時間となっています。

こうした性能向上率を受けてアップル側は「Macはかつてないほど大きな進化を遂げます」とも謳います。

▲実機レベルでもこれだけの性能差に。CPUとGPU、機械学習のそれぞれで比較されるSoCが異なる点には注意が必要ですが、実機レベルでこだけの差となると、決して小さくはありません

また、とくに力を入れているのはGPU。浮動小数点演算性能の目安となるFLOPS(フロップス)値は、2.6TFLOPSという値が公開されています(精度に関しては記載がありませんが、単精度と思われます)。

これは2018年の15インチMacBook Pro上位GPU『Radeon Pro Vega 16』の2.4TFLOPSを超える値で、AMDの現行モデルでは『Radeon RX 560X』と並ぶ値です。

またわかりやすいところでは、家庭用ゲーム機のプレイステーション4(非Pro)の算出値が1.84TFLOPS。PS5がちょうど出るタイミングではありますが、MacBookにも使えるSoCでありながら、現行の据置型ゲーム機を超える性能というわけです。

アップル側は「パーソナルコンピュータの中では世界で最も速い統合型グラフィックス」と紹介しますが、確かにこうした性能であれば、このアピールは妥当性がありそうです。


パッケージ内にDRAMチップも封入

RAMは現状では16GBまで?

▲発表会では半導体パッケージ(外装)内の構造も紹介。右に上下2チップあるのがRAM。MacとPC用としては、こうした実装パターンは異例です(スマートフォン用では珍しくありませんが)。

さて、PC/Mac用のSoCとしての見どころは、半導体パッケージ(いわゆる外装)内への“統合率”が高いこと。

というのも、半導体ダイ(シリコンウェハから切り出される、狭い意味での半導体チップ)に加えて、本来は別チップとなるDRAMも1つのパッケージ内に封入するという、スマートフォンやタブレット的な物理構造を採用しているためです。

これは実装面積を縮小するのみならず、本来は性能面でも有利。その理由は、RAMからの信号を最短経路でダイと結べるため。アップル側も「専用のパッケージ内で高帯域幅を持つ低遅延のメモリを1つのプールに収めています」と、そのメリットを強調します。

しかし、対してRAM容量ごとに別のパッケージを作らなければならないため生産に関しては手間が増え、コスト面では不利。またパッケージ内に(物理的に)収まるだけのRAMしか搭載できないため、最大RAM容量といった点でも不利となります。

実際に今回発表されたM1搭載Macは、全機種共通でRAM容量は標準8GB。最大はオプションにて16GBまで。言い換えれば、32GB構成はオプションでも不可能です。とくにMac miniでは、インテル版では64GBまでのオプションが選べる点も魅力の1つだったため、悩ましいところとなっています。

もちろんこのあたりは、今回のM1搭載Macの価格帯が比較的安価なもの(=32GB非サポートでも価格的に問題となりにくい)という点もあり、またM1側の設計も32GBや64GBまでは見据えているはずです。

▲アップル側のアピールでは、GPU性能の高さからか、MacBook ProとPro Display XDRを組み合わせたパターンの使用例も。アプリによっては最大16GBというRAMが若干の不安になるかもしれません

しかしともすれば、しばらくの間、M1搭載MacにおけるRAM容量の選択はこれまで以上に慎重に行なう必要が生じるかもしれません。とくにPro Display XDRをはじめとする高解像度ディスプレイを接続する(=ビデオ側のRAM容量が増え、その分実質RAMが減少する)ユーザーなどは、悩ましいところになるかもしれません。


謎が残るThunderboltバージョン

PCI Expressは4.0に順当強化

▲M1の主要機能ブロック一覧図でも、Thunderboltのバージョンは表記されず。一方でUSB 4への対応という点では現行より世代が進んでいます

また周辺機器との接続に関しても、順当にアップデート。内部デバイスの接続に使われるPCI Expressは4.0(アップル側の表記ではGen.4)となり、実際に搭載機でのSSD速度などが向上しています。

また、一部CPUマニアの間で注目されていたThunderbolt/USB 4コントローラーも、半導体ダイの中に統合される形で実装。現状ではThunderboltバージョンが謎ですが、速度に関しては「最大40Gbps」と公開されてます。

そしてもう一つの隠れたポイントとしては、「Appleで最も新しい画像信号プロセッサ(ISP)」を搭載するという点。つまり、iPhone 12(A14 Bionic)と同じというわけです。

昨今アップルが力を入れる「コンピューテショナルフォトグラフィー」ノウハウが導入されたことで、実際にM1搭載のMBAや13インチMBPでは、Webカメラの画質向上を大きくアピールしています。

また、セキュリティ機能に関しても、AシリーズとApple T2を継承。OS起動前や起動プロセスでのセキュリティ保護などを継承します。


このようにM1チップは、アップルがiPhoneなどで発揮していたAシリーズの性能を、Macに合わせてより強力にしたSoCといった印象。言い換えれば大枠はウワサ通りではあるのですが、とくにGPUなどは非常に力が入っているものと感じます。

性能アピールなどに関しての文章は、アップルにあってもかなり強めですが、同社製SoCの性能に関しては歴代のiPhoneやiPadでほぼ証明されていることからも、言葉だけではないのは間違いないところ。

一方で現状ではRAM容量の制限(厳しいですが、現状ではそう言っても良いでしょう)など気になる点もありますが、Mac用のApple Siliconとして見れば、初代製品からかなり高い完成度と言っても良いでしょう。

こうした点でも、Aシリーズとの共通点が多い設計などのメリットが活かされていると呼べるでしょう。実機での性能と使い勝手がどれほど上がるのか、今から楽しみです。

Source:アップル(日本語)


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