▲M1版MacBook Pro。メモリー8GB・ストレージ256GBのモデル。色はスペースグレイだ。

Apple Siliconこと「M1」は速いらしい。実際速かった。手元にある試用機材を使ってみて、ここまで驚いた製品は久しぶりかもしれない。(あ、PS5のロード時間にも驚いたので、意外と久しぶりでもないか……)

じゃあそのパフォーマンスがどのくらいなのか? 使ってみるとどんな感じなのか? ちょっとシンプルに説明してみたい。

今回使ったのはMacBook Pro。メモリー8GB・ストレージ256GBのモデル。13インチのMacBook Proとしてはエントリーになってしまった製品だ。だが、エントリーとは思えない可能性を見せてくれる。

今回は比較用として、Intel Core i5-1038NG7(いわゆる第10世代Core i5)を搭載した、2020年モデルのMacBook Pro(メモリー16GB)も用意したので、そちらと合わせて見ていこう。

ゲームにビデオ会議に動画編集……。まさに圧倒的なM1の性能

M1版であろうがIntel版であろうが、MacBook Proの外観は変わらない。キーボードの印刷がちょっと違うがそれくらいだ。Intel版MacBook Proだと、上位モデルとしてThunderboltポートが左右に2つずつあるのだが、M1版は「下位モデル」なので、左に2ポートしかない。なので、2つを並べても実に……新しさは感じない。

▲どちらがIntel版でどちらがM1版か、わかるだろうか?(正解は右がM1版)

だが、中身はすごい。ベンチマークソフトで語るのもいいが、せっかくなのでアプリを動かした結果から見てみよう。

まず、ゲーム。

「Rise of the Tomb Raider」で、画質を「最高」(グラフィック設定を「最高」にし、さらにMacBook Pro・13インチのディスプレイパネル解像度となる「2560×1600ドット」に設定)で動かしてみる。かなり綺麗な画面だ。

この設定だと、Intel版では「毎秒9.45フレーム」しか出ない。解像度は下げないとゲームにならないだろう。だが、M1版では同じ設定で「毎秒22.69フレーム」になる。これならギリギリ大丈夫。少し設定を見直せばヌルヌルな動作になる。

▲「Rise of the Tomb Raider」。MacでMetalを活用したゲームの一つ。グラフィック設定を全て「最高」にし、解像度もパネルに合わせて上げた。
M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲Intel版では毎秒10フレーム以下でゲームにならないが、M1ならば同じ設定でも十分ゲームとして楽しめる値に。

これは、同じ「Intel版」のソフトでの違いだ。Apple Silicon最適化版「ではない」ことに留意していただきたい。

もう1本ゲームを見てみよう。時間泥棒として有名な「Civilization 6」だ。こちらもIntel版をそのまま動かしてみた。

▲ご存知悪魔のゲームの1本、「Civilization 6」。Mac版はけっこう重いソフトだった。

Intel版Mac Book Proでは毎秒24フレーム、平均ターン時間が14.47だったが、M1版では「毎秒61フレーム前後」「平均ターン時間10.73」に高速化し、快適さが大きく変わった。

M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲M1版はIntel番に比べフレームレートが倍以上になった。
M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲AIの処理速度は4割程度高速化している。

さらにビデオ会議。合成などが巧みにできて話題の「mmhmm」を使ってみる。こちらはApple Silicon最適化が行われた「Universalアプリ」だ。

▲先日正式版が出たばかりのビデオプレゼンソフト「mmhmm」。こちらはApple Siliconに最適化され、Intel版にない機能「ビッグハンドモード」も追加されている。

違いは動画を見ていただくのがいいだろう。バーチャル背景を使って筆者を写したのだが、シルエットを「抜く」精度が上がっている。Intel版では、手をひらひら動かした時、指の間などの認識が遅れがちだったのだが、M1版では比較的ちゃんと追従していた。しかも、手のジェスチャーを認識して画像を重ねる「ビッグハンドモード」はM1版でのみ使える。この違いは、M1に搭載されている機械学習最適化用のエンジンである「Neural Engine」の賜物だ。また、撮影されている映像が非常に見やすくなっているのもポイント。これは、M1に搭載されている「イメージシグナルプロセッサ」による高画質化の影響である。ビデオ会議に関しては、Intel版とM1版で大きな差が出てきた。

最後に動画処理。Adobeの「Premire Rush」を使い、4K・60フレームで1分53秒の動画に、色々なエフェクトをかけたものを、最高の画質設定で書き出すまでの時間を測ってみた。

▲Adobe Premire Rush。マルチプラットフォーム動作する動画編集ソフトとしてテストに選んだ。4K・毎秒60フレームの動画(1分53秒分)にいくつかエフェクトをかけたものを書き出す時間を計測。

これがまた大きく差が出た。Intel版では15分4秒かかっていたものが、M1版では3分36秒で終わってしまう。4倍以上の高速化だ。しかもこれも、「Rise of the Tomb Raider」や「Civilization 6」と同じく、Intel版をそのまま動かした結果である。

なによりも大きいのは、こうした処理をしても「静かだ」ということだ。

ファンが回っていないわけではないし、発熱もしていないわけではない。だが、Intel版のように「なにかあるとすぐにファンが大きな音で回り出す」印象はない。ファンはずっと回っているようだが、大きな音ではないし、ファンの音が最大になったと思われる時でも、Intel版のように耳障りではない。実に「心静かに」使える。

16インチMacBook Proを超えるパフォーマンスをエントリークラスで実現

ではお待ちかね。ベンチマークを見てみよう。結果は一目瞭然だ。

Geekbench 5の結果でも、Cinebenchの結果でも、M1版の性能はIntel版を大きく上回り、倍に近いパフォーマンスが得られている。

M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲Geekbench 5のテスト結果。白がM1版、黒がIntel版でのCPUテストの値。M1版の方がかなり数値が高く、特にマルチコアテストでの結果が良い。
M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲Geekbench 5のテスト結果。同じく白がM1版、黒がIntel版でのGPUテストの値。M1版はIntel版の倍を超える値になっている。

M1版MacBook Pro
Intel版MacBook Pro ▲Cinebenchの値。Geekbench 5同様、M1版はIntel版の倍に近い値となっている。

Geekbench 5のサイトから検索できるデータベースから判断すれば、CPUの値では、MacBook Pro 16インチが採用しているCore i9のものを超えている。GPUはNVIDIAのGeforce GTX 1050クラスの性能、と見ていいようだ。Cinebenchのデータをみると、前後にあるのは「第11世代Core i7」や「Xeon」で、これがモバイル向けの、しかもAppleとしてはエントリーレベルとして提案したApple Siliconである、ということが恐ろしくなってくる。

Intelアプリの互換状況は良好、ただしiOS/iPadOSアプリの動作には「見切り発車」感も

前述のような「Intel版アプリでCore i5を積んだMacBook Proを抜き去る」結果が確認できるくらいなので、Intel版アプリの動作状況は非常に良い。日本語入力ソフトである「ATOK」も、Intel版がそのまま全く問題なく動作している。ウェブブラウザ「Chrome」の動作も特に問題ない。タブを20、30開いて作業しても重さは感じなかった。

もちろん、100%の動作状況ではない。特に不具合がはっきりしていたのは、Adobeの「Lightroom」。画像の読み込みや書き込みが10倍〜20倍のレベルで遅くなる。Creative Cloudから得た画像の編集などでは問題が起きないので、なにか固有の問題なのだろう。同様に、今回の短いテスト中では気づけなかった不具合が存在する可能性がある。なので、自分が仕事などで依存しているソフトについては、ちゃんと動作状況を確認しておいていただきたい。

また、M1版Macでは「iOS/iPadOS用アプリ」も動作する。こちらもなかなか便利なのだが、どうもIntel版Macアプリの互換動作に比べ、ちょっと不安定かつ機能不足な面が見られた。

iOS/iPadOSアプリの場合、ウインドウサイズが固定で変えられないものも多い。一部、iPhoneとiPadでの共用ができるアプリについては、Mac用アプリと同じくウインドウサイズが変えられたが、それはむしろ例外と言っていいだろう。また、画面をタッチ操作できないので、「両手を使ったマルチタッチ操作」が苦手だ。だからゲームによっては、動くが遊びづらいものもある。

▲iOS/iPadOS用アプリをいくつか動作させてみた。「ビックカメラ」アプリ(左)も、ゲーム「風来のシレン」(右)も動作。ただし画面サイズは固定。中央の動画編集ソフト「LumaFusion」はウインドウサイズを自由に変えられる。
▲人気ゲーム「アズールレーン」もちゃんと動いた。だが、両手タッチでの自由な操作は、タッチパッドだけでは少し難しい。

Mac版AppStoreでは公開されていないiOS/iPadOSアプリもある。ウェブで使える動画配信サービス系や、Googleのアプリなどはなかった。また、一部ゲームもない。そもそも現状、ストアにあるアプリのほとんどは「macOSでの動作検証は行われていない」前提での公開になっている。確実な動作を保証するにはまだ時期が早いようだ。

どうも、Intelとの互換についてはかなり長い時間をかけてテストした雰囲気があるが、iOS/iPadOSアプリの互換については急いで見切り発車したような印象も受ける。じっくり動作検証が必要だろう。なので、「iOS/iPadOSアプリが使える」ことを1番の理由にしてM1版Macを買うのは、現状は止めておいた方がいい。

バッテリー動作時間も倍、コスパの面でも、もはやIntel版を選ぶ理由はない

iOS/iPadOSアプリの互換が未成熟ではあるが、「Mac」として見れば、M1版MacBook Proは非常に良い製品だ。パフォーマンスが高く、動作音が静か。さらには、バッテリー動作時間も長い。

ウェブを見つつ、文書をクラウドストレージに同期し、Microsoft Wordを立ち上げて文章を書くという作業を3時間続けてみたが、M1版でのバッテリー消費は21%だった。それに対し、Intel版は45%消費した。ここから計算すると、同じ作業はM1版の場合「14時間」、Intel版の場合「7時間」続けられることになり、おおむね倍の時間、使える事になる。

もうこの段階で、Intel版を選ぶ理由は「互換性」と「仮想環境上でWindowsやLinuxなどを使う必要性」という点になった、と言ってもいいのではないか。上位のMacを使っている人でも、コストパフォーマンスを理由にM1版を選ぶ人がいても不思議はない。ここまで破壊的な製品は、本当に久しぶりだ。

一方、もっとインターフェースが欲しい、もっとメモリーやストレージ、GPUパワーが欲しい……というニーズをどう満たすのか、逆に興味が湧いてくる。「Apple Silicon版Mac Pro」があるとすれば、それはどういう存在で、どこまでパフォーマンスを伸ばせるのか。Macユーザー以外も注目しておいて欲しいところだ。


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