11月17日に発売されたM1搭載のMac。第一弾はMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、そしてMac miniの3モデルです。MacBook Airは全てのモデルをM1チップに置き換え、MacBook Pro 13インチとMac miniは下位モデルからM1チップが導入されました。

「下位」といっても、パフォーマンスでみれば、Geekbench 5のスコアでシングルコアは1700を上回り、どのMacよりも高速。マルチコアも7700前後をマークし、MacBook Pro 16インチの8コアIntel Core i9よりも10%高いスコアを叩き出します。Mac最強ノートを制したのが、10万円ちょっとのMacBook Airだというのだから、これまでのコンピュータのパフォーマンスの概念を一度リセットする必要がある、とわかります。

そしてスタミナ。今回のM1搭載MacBook Proを使って悟りました。もう、バッテリーはコンピューティングの言い訳にならない、ということ。

カフェで電源がある席を探したりコワーキングスペースを利用したり、パソコンを持ち出すとどうしても電源を探さなければ不安になります。PCの電池切れで仕事も止まるからです。電池切れで「今日の仕事終了!」なんて、オーバーワーク防止の指標にすることもありますが、それが嫌でタブレットを利用したりしてきました。しかしこれももう過去の話です。

M1搭載MacBook Proで、こうした原稿を1時間半にわたって書いても、バッテリーは1%しか減りません。もう1時間半仕事をして98%になったところで、4Kビデオ編集を開始して3時間経過しましたが、それでやっと75%まで電池を減らすことに成功しました。そもそも、普段4Kビデオ編集を3時間も出先ではやらないわけで、MacBook ProはM1チップ搭載で、人間の仕事を持続できる体力では太刀打ちできないスタミナを手に入れてしまった可能性が高いです。

もうこの2点だけで、今回のM1チップへの移行の価値は十分すぎるほどではないでしょうか。端的にいえば、私が根負けし、レビューの4日間、フル充電から電池を使い切れた日はありませんでした。

M1の性能と省電力性は過酷な大学の授業を救う

では、このMacを誰におすすめしたいか。ビジネスパーソンにとってもスタミナはとても大きな戦力になると思いますし、写真編集、ビデオ編集を行うユーザーにとっても、モバイルでバッテリーをもたせながらここまでパワフルなMacもありませんでした。

しかし、筆者が大学で教鞭を取っていることもあって、このマシンを最もお勧めしたいのは大学生です。現在、大学生はオンラインと教室を授業ごとに受講形態が混ざった状態で過ごしています。ビデオ会議中はファンが回ってうるさいし、バッテリーもみるみる減っていく……。現在のハイブリッドな授業形態は、PCにとって非常に過酷な状況なのです。M1チップ搭載のMacBook Proはそうした現状を一変させることになります。

学生ならMacBook Proは8GBメモリと256GB SSDのモデルが12万3800円(税別)で手に入りますが、統合メモリは8GBでも8Kビデオ編集を十分こなせるだけの余力があり、余力があるなら増やすべきはストレージの方じゃないか、と思いました。今後もハイブリッドで授業が進んでいくことが予想される中、パワフルさとスタミナの両立は強い味方になるはずです。

PVPを手に入れろ

これだけではありません。M1チップ搭載Macは新しいスキルの獲得の可能性も広がります。その最も大きな可能性が、「PVP」と呼ばれるスキルです。これはビデオの作成とともに、今後重視されるでしょう。PVPとはProfessional Video Presenceの略。M1チップ搭載Macの発表ビデオに登場したmmhmmのフィル・リービン氏が、「今後確実に重要となるスキルとして残る」とビジョンを語るのがPVPです。

オンライン授業やオンライン会議など、コロナ以前は一部でのみ取り入れられてきたコミュニケーションのモードがコロナ以降、ほぼ全ての大学、企業で取り入れられました。ZoomやTeams、Google Meetなど、快適な会議環境を整えるべくアップデートが進みますが、それでもテレビ番組のような合成を多用した飽きさせない絵作りとは異なる、味気ない体験しか作り出せていません。

mmhmmは、自分の映像と背景、スライドやビデオなどの素材を自由に合成して楽しませることができるアプリで、M1チップに対応する形で正式版が配信されました。これまで何百万もかかる放送機器や、30万以上かかるパソコンを揃えなければ実現できなかったことを手軽に実現できるようになり、存在感を増していくことができる、というのです。

しかも、M1搭載Macなら、そうした合成で会議に参加しても、ファンが回って不快な騒音をお届けすることもないでしょう。そうした新しいスキルの可能性に、手軽に踏み出せることになります。

電源やパフォーマンスの制限が一挙に外れるM1チップ搭載MacBook Proは、同時に「自分がどんな成長をするか?」という一点によりフォーカスを当てることにもなります。そんな心構えが必要だと感じるほど、手にすると未来に近づく1台と評価できるのです。


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