Apple TV 4K

Apple TV 4Kが新しくなると聞いた時、「さて次は何をするのかな?」と少しだけ期待をしつつも、あまり気分が乗ってこなかった。数1000円で購入できるこの手の端末がゴロゴロとある中、わざわざApple TV 4Kを選ぶ意味が薄く、日本ではApple TV向けのテレビサービス(ネット経由でライブのテレビ放送を楽しむサービス)が提供されていないからだ。

A10 Fusionを搭載した前モデルのApple TV 4Kの時代から、この製品はあらゆるIPセットトップボックスの中でもっとも応答性がよい高性能な端末で、Apple Arcadeのゲームまで遊べてしまう万能性も備えていたが、一方でゲームを遊ばないのであれば、もっとコンパクトで安い端末はある。

しかし時代は変わり、コロナ禍を通じてテレビでネットストリーミングの映像を楽しむことが当たり前になってくると、段々と意識が変化してきた。ストリーミング映像を楽しむ時間が増えてくると、テレビ放送やブルーレイなどのパッケージコンテンツを楽しむ時間よりも、ストリーミング映像を楽しむ時間の方が"僕の心を捉える力"が強く感じられるようになってきたのだ。

こうなってくると、動作が緩慢でカジュアルゲームも揃っていない安価な端末ではなく、Apple TV 4Kの方が"費用対効果が高い"と感じるようになっていた。それがさらに今回のアップデートで決定的になったと言える。

新型Apple TV 4Kは、採用するSoCが二世代進んだA12 Bionicへとアップデートされている。さらに懐かしいiPodのタッチホイールを想起させる改良がリモコンに施され、tvOSのアップデートで使用するディスプレイの色調整も行えるようになった。

それ自身も価格を考えるなら魅力的なのだが、そこに華を添えたのがApple Musicのアップデートである。これにより、Apple TV 4Kはトータルでオーディオ、ビジュアルの体験を引き上げるための鍵となる端末になったわけだ。

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Apple TV 4K

もちろんApple TV 4Kはテレビのための端末なのだが、映画のサラウンド音声や音楽ライブソフトなどを楽しむためにAVレシーバを所有している人ならば、さらにこの製品を活かすことができる。

Apple MusicがApple独自の仮想立体音響技術である空間オーディオを活用し、ドルビーATMOSによって楽曲を立体的にアレンジしたトラックの配信を開始すると発表したからだ。当初は数1000曲から始めるとのことだが、追加料金は不要で随時、楽曲が追加されていく。

ここでは仮に"3D音楽"と表現するが、 Apple Musicの3D音楽はATMOSを用いているため、HDMIでAVレシーバに入力すれば、そのまま自宅のサラウンドシステムでそのダイナミックな演出を体感できる。しかもヘッドフォンでの体験のように頭の周囲に広がるのではなく、部屋全体に立体的な音が広がるのだ。

これはSACDなどで体験できるマルチチャンネルのオーディオとも異なる全く新しい体験だ。同ジャンルはソニーも360 Reality Audioとして展開しているが、Appleが自社で展開する音楽配信サービスに追加料金なしで楽しめるようアドオンしたことで一気に身近になるだろう。

ATMOS対応のサウンドバーでも、似たような体感はできるはずなので、とりわけ従来からAV機器へ投資をしてきたユーザーには価値のあるアップデートと言えよう。

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加えてAppleはApple Musicで提供している7500万もの楽曲全てをロスレス圧縮でも提供する。中にはCD品質の楽曲もあるが、多くは48kHz/24ビットと高精細で、音質にこだわった制作が行われている楽曲の場合は、96kHzや192kHzといったハイサンプリングの楽曲もある。

これらもApple TV 4KのMusicアプリを使えば、HDMIを通じて既存AVシステムで楽しめるわけだ。Apple Musicに対応したAVシステム向け端末はほとんどないため、これだけでもApple TV 4Kを入手する動機になるだろう。

Apple TV 4Kで映像を楽しむ理由にもなる新リモコンと色調整機能

Apple TV 4K

え、テレビ向けなのに音の話ばかりだって? 確かにそうかもしれないが、もちろん、映像を楽しむ端末としてもApple TV 4Kは魅力的だ。しかもかなりマニアックに画質を追求したい人に価値ある製品になっている。いや、"なった"と言うべきだろうか。

tvOSのアップデートがかかり、従来のApple TV端末も含めて最新OSがインストールできるモデルならば、その全てにディスプレイのキャリブレーション機能が備わるようになった。この機能はApple TV 4Kを接続するテレビのホワイトバランスやトーンカーブをチェックし、正しくD65という本来、テレビに求められる色特性になるよう補正をかけるというもの。

ただし色測定のためにFace IDを備えたiPhone端末が必要になる。Face IDを備えたiPhoneが必要な理由は、Face ID搭載のiPhoneには全てTrueTone(表示色温度を周囲と馴染ませる自動色温度調整機能)が備わっているためだ。

TrueToneを実現するための測色センサーを用い、接続されたテレビの色温度をさまざまな輝度レンジで測定。明部から暗部まで、一貫してD65の基準値に近づけるよう色空間を補正する。

実際に使ってみると、色温度に一貫性が生まれてくる。液晶テレビはもちろんだが、あまり再現性が高くない安価なパソコン用ディスプレイなどでは尚更に効果的だ。いにしえのプラズマテレビ(パイオニアのKURO)でさえも補正してくれた。

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もちろん、テレビ側の補正を行うわけではないため、Apple TV 4Kで再生する映像や写真アプリを通じて写真を楽しむ際にしか通用されない。とはいえコンテンツ数がまだ多くはないものの優れた作品が多いApple TV+をはじめ、Netflix、Amazon Prime Video、YouTube、hulu、FOD、Paravi、U-Next、DAZNなどなど、ほとんどの映像サービスがApple TV 4Kで楽しめる。地上波テレビの見逃し視聴サービスTVerは利用できないが、言い換えれば地上波テレビ以外の多くは、Apple TV 4Kから楽しめるのだ。

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ただし、Apple Arcadeで提供されている150以上のゲームも含め、これらの利用価値は従来のApple TV 4Kでも楽しめるため、Apple TV 4Kの買い替えを促しているわけではない。まだ所有していないならば、価格の安さも含めて導入する価値があるということ。それに新しいApple TV 4Kには、より使いやすいリモコンが添付されていて、たとえ同じ映像サービスでもより使いやすさが向上している。

タッチパネルとクリックホイール、両方の使い方ができる新しいリモコン

Apple TV 4K

従来のリモコンも新しいリモコンもSiriを活用できることに変わりはないが、音声操作を呼び出すボタンの位置が変更された。

従来機は音量調整の隣という特等席にSiriの呼び出しがあったのだが、今回は右側部に移動された。こちらの方が多くの人は使いやすいだろう。加えてSiriの呼び出しボタンが側部に追い出されたおかげで、ミュートボタンが配置できている。

Apple TV 4KはHDMIを通じて接続端末の音量調整ができる仕組みなので、音量調整にしても消音にしても応答性よくシステムを操作できる。HDMIによる連動は、あらたに右上に小さくあしらわれた電源ボタンでも使われており、CECコマンドを通じて必要な機器の電源と入力切り替えが自動的に動くように。従来は「MENU」となっていたボタンも「<」と変更。これは戻るの意味で、実質、MENUボタンが戻るボタン的に使われていたことを考えれば妥当な変更だ。

しかし、何より使いやすくなったのは、クリックもできるタッチパネルだったのが、十字ボタン+中央ボタンのわかりやすいものになったこと。これまではリモコンの上下方向を間違って持ちやすかったが、上下の認識もしやすい。

この十字ボタンは実はタッチパネルにもなっており、従来機と同じように操作をすれば、そのままの感覚で利用できる。その上でかつてのiPodにあったタッチホイールのように十字ボタンを構成するリングをクルクルとタッチしながら回すと、再生位置を自在に移動させられる。

Apple TV 4K
Apple TV 4K
▲左が今回の新型、右が旧Siri Remote

再生中、中央ボタンは一時停止と再生に割り当てられるため、一度、中央ボタンで一時停止させておき、リングに指をタッチさせるとサーチモードに。そのままクルクルさせて位置を決め、中央ボタンで再生モードに戻ればいい。実際にやってみれば、その快適さを感じられるだろう。

もちろん、再生中に十字ボタンの左右をクリックすることで再生位置を瞬間的に進めたり、戻したりもできる。(15秒戻しはSiriを呼び出し"聞き逃した"と話しかけてもいい)

使いやすさをジワリと感じる機械学習によるリコメンド

さて、A12 Bionicに更新されたことによる進化はどうだろう? 遊べるゲームがより美しくなるなどの進歩を期待する向きもあるだろうが、現在提供されているゲームはA10 Fusionでの動作に最適化されているため違いは大きくない。

しかし今後は新しいApple TV 4Kに合わせて、グラフィックスの質が高められたものへと調整されていくはず。そのためには少し時間がかかるかもしれない。しかしすぐにでも感じられる進化もある。

それは機械学習によるユーザーインターフェイスの進化だ。しかし、これは使い続けることでジワリと効いてくるもので、使い続けなければ感じられないことかもしれない。

Apple TV 4Kにはマルチユーザー機能があり、家族のApple IDを登録しておけば、それぞれの好みを別々に管理できる。視聴履歴による映像作品のリコメンドは、端末内でその傾向が収集、判断されるので、クラウドにアップロードされることはない。たとえば若年層の子供を抱える家庭ならば、子供ごとに適切なコンテンツしか表示されないようにできるし、それぞれが好んで再生するコンテンツをもとに勧めてくる作品も変わる。

この機械学習による振る舞いの変化はSiriによる操作にも反映されるため「子供向けの面白い番組を探して」と声を掛ければ、(ユーザーを切り替えなくとも)普段から子供に見せているコンテンツから年齢層や好みなどを類推しておすすめのリストを作り出してくれるわけだ。

また、おすすめのリストは多岐にわたる色々なサービスから総合的に選ばれるため、特定のサービスのリコメンドとは別にユーザーが好んで視聴しているサービスアプリなども学習した上でお勧めが選抜される。こうした面での心地よさがプライバシーの問題なしに使えることもApple TV 4Kの利点だ。

もちろん、iPhoneなどとiCloudで連携して写真が共有され、思い出の写真ムービーなども大画面で共有できる。

低価格端末に投資するよりApple TV 4Kのほうが賢い選択

Apple TV 4K

総合的に考えて、もしあなたがiPhoneユーザーで、iCloudやApple Musicの契約をしているならば、Apple TV 4Kはぜひともおすすめしたい製品だ。筆者は色々なApple製品を使ってきたが、実はApple TVだけにはなかなか食指が動かなかった。

しかし、Apple MusicのアップデートやApple TV+の作品が充実してきたこともあり、いよいよこの製品を本格的に使い始める時期にきたと感じている。価格の安さもあって購入しやすいことも、その気持ちを後押しする理由だ。

操作の応答性も高く、色調整機能があり、また音楽を楽しむための端末としても使えるApple TV 4K、低価格の同種端末との差額は気にならないだろう。

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