Apple WatchがiPhoneから解き放たれる。形を変えて実現した3年前の予想(松村太郎)

セルラー搭載製品の法則

松村太郎(Taro Matsumura)
松村太郎(Taro Matsumura)
2020年09月17日, 午後 12:10 in apple
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Appleは2020年9月15日のイベント「Apple Event Time Flies」にて、Apple Watch Series 6、Apple Watch SE、iPad(第8世代)、iPad Air(第4世代)、iPad(第8世代)を発表しました。特にiPad Airはフルモデルチェンジで、iPhoneにもまだ搭載されていないA14 Bionicが採用されました。とはいえ、iPhoneよりも先に登場してしまうと、パフォーマンスのネタバレにもなってしまうため、もうしばらくは実機に触れる事ができないかもしれません。

一方のApple Watch Series 6には、新たに「血中酸素ウェルネスアプリ」が搭載され、血中酸素飽和度を15秒で計測できるようになりました。エクササイズの効率などを高める際などで活用できる新しい指標が追加されますが、日本人にとっては、心電図(ECG)アプリの認証が取れたことも、Apple Watchに注目すべき大きなニュースになるのではないでしょうか。

加えて、初めてApple Watchを手にする人にぴったりとされるApple Watch SEも登場しました。日本ではGPSモデルで2万9800円(税抜)からに設定され、より手頃な価格で存分に楽しめるモデルとして注目を集めていきそうです。

これらとは別にApple Watchには非常に重要なインパクトのある変化がもたらされます。それは、iPhoneとのペアリングからの開放でした。

ファミリー共有設定によるバッテリー管理の最適化

英語では「Family Setup」となるwatchOS 7の機能は、これまでのApple Watchの当たり前を覆すことになります。

その名のとおり家族向けの機能です。これまでApple Watchを使うには、自分のiPhoneとのペアリングが必要でしたが、watchOS 7では、例えばiPhoneを持たない子ども用のApple Watchを親のiPhoneとペアリングして使うことができるようになります。

しかも、各国の一部キャリアで対応が始まった回線サービスによって、Apple Watch単体に電話番号が割り振られ、通話やデータ通信を行うことができるようになるのです。日本ではKDDIがウォッチナンバーという、iPhoneと別の電話番号を割り振ることができるサービスによって実現します。

家族用にセットアップされたApple Watchは、GPSを通じて現在位置を知ったり、運動時間をカウントしたり、通話やメッセージを交わしたりはもちろん、Apple Watch単体でアプリを追加することもできます。また、親が子どものApple Watchの機能を制限し、学校の授業の時間は操作できなくする「スクールタイム」など、iPhoneを持たない子どもに持たせる前提の機能が盛りこまれていました。ファミリー共有設定は、Apple Watch Series 4以降のセルラーモデルが対応します。

今までセルラー版Apple Watchを使ったことがある人ならわかると思いますが、こういった使い方の場合、最も懸念すべきはバッテリー持続時間です。iPhoneとのペアリングなし、Apple Watch単体でセルラー通信をしながら使うと、電池の消費が激しくなってしまうからです。

しかし、ファミリー共有設定を行ったApple Watchは、単体でセルラー通信をしながら1日過ごすことが前提となるため、バッテリー管理の最適化によって、14時間の持続時間を確保できるようになります。ハードウェアは同じで、通信や処理などの最適化で、そんなにバッテリー持続時間を延ばせるのか、とやや不思議に思う部分もあるのですが、これはぜひ確認してみたいところです。

iPhoneから解き放たれるApple Watch

Apple Watch Series 3に初めてセルラーモデルが登場したとき、筆者は未来をこう想像しました。「現在はiPhoneとペアリングをするサブデバイスとして存在しているApple Watchだが、近い将来、iPhoneの座に取って代わり単体で活躍するようになる」と。

5〜6インチのディスプレイサイズと大きなバッテリー、高速通信、強力なアプリケーションプロセッサやグラフィックス、カメラを備えるスマートフォンが、現代の我々の生活の主たるデバイスになっています。

しかしApple Watchのセルラー版を見た時、スマートフォンの役割が解体され、高速通信と一部のプロセッサの部分はスマートウォッチに役割を移し、むしろスマートウォッチが基本デバイスになるのではないか、と想像したわけです。セルラー契約をしたApple Watchは、ある意味で、そうした未来を部分的に見せてくれていました。

例えば、ある日、iPhoneを家に忘れ、Apple Watchだけで出かけたことがありました。いつものように、AirPodsで音楽を聴きながら駅へ向かい、手首で改札を通り、友人からのメッセージを手首で確認し、家人からの通話にそのまま応答しました。普段となんら変わりません。結局、iPhoneを忘れたことに気づいたのは、目的地の駅を降りて、行き先を地図で確認しようとした時だったのです。

積極的に使ったときのバッテリー持続時間を除けば、生活に密着した部分においてはすでにスマートウォッチがスマートフォンの役割を叶えてくれていることに気づかされた経験でした。

Apple Watchのファミリー共有は、スマートフォンをスマートウォッチへ置き換えたわけではありません。iPhoneを前提とせず、Apple Watch体験を家族にもたらすオプションという位置づけです。Appleの本音としては、やはり、iPhoneを持って欲しい、と思っているでしょう。

しかし、スマートフォンなしでスマートウォッチが活躍する場面を実現してくれた技術的な進歩に対し、個人的に大きな評価を与えているのです。

セルラーの法則

Appleのこれまでのビジネスにおいて、急成長した製品の共通項には「セルラー」があります。iPhoneはもちろんですが、iPadは、ビジネスや教育の現場で、セルラーモデルの導入が進んでいます。固定系の通信や設備がある場所にかかわらず、目的を果たし続けられるからです。

そして、Apple Watchもまた、セルラーが入り現在急成長中。今回のファミリー共有設定というユニークな機能の実現によって、iPhoneに頼らずウェアラブルデバイスを広める活路を見出しましたが、これもセルラーのおかげです。

Appleは次に、何へセルラーを持ち込むのでしょうか。AirPods? オーバーヘッド型のヘッドフォン? バッテリ駆動の小さなHomePod? あるいはMac? 様々なオプションがあると思いますが、どこでも通信ができ、役割を果たすことは、デバイスから使用場所の制約を取り去り、新たな用途を切り拓く可能性をもたらしてくれます。

もちろん、Appleだけでなく、世界中の通信キャリアが一生懸命顧客に売り込んでくれる、という側面も無視できません。なんといっても、スマートフォンが飽和し、通信回線を持てる新しいデバイスを渇望されているわけですから。

 
 
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