Apple Watch Masahiro Sano

2020年末から話題をさらっている「ahamo」「povo」「LINEMO」といった通信量20GBのオンライン専用プラン。2021年3月のサービスを控え、これまで判明していなかったサービスの詳細情報が明らかになってきましたが、その内容を見て「あれが使える」「これが使えない」といったことが話題になっているようです。

例えばahamoでは「spモード コンテンツ決済サービス」が使えず、「dメニュー」掲載コンテンツの決済に関しては代替の決済手段が用意されません。そのためdメニューの決済を使っているアーティストのファンクラブサービスが、ahamoに乗り換えると自動退会されてしまう可能性があると警告し、話題となりました。

そしてもう1つ、大きな問題が出てくるとして話題になったのがApple Watch利用者、とりわけApple WatchのGPS+Cellularモデル利用者です。GPS+CellularモデルはeSIMを搭載しているため、Apple Watch単体での通話や通信が可能というのが大きな特徴なのですが、それを利用するにはiPhoneと電話番号を共有するサービスの契約が必要です。

Apple Watch Masahiro Sano
▲GPS+Cellularモデルであれば単体での通話や通信も可能なApple Watchだが、低価格のオンライン専用プランに移行するとそれが使えなくなることが話題となっているようだ

具体的には「ワンナンバーサービス」(NTTドコモ)、「ナンバーシェア」(au)、「Apple Watchモバイル通信サービス」(ソフトバンク)といったサービスで、いずれもiPhoneを扱っている大手3社のメインブランドが提供しているものなのですが、オンライン専用プランではこれらのサービスが利用できないことが判明したのです。

Apple Watch Masahiro Sano
▲初めてGPS+Cellularモデルが投入された「Apple Watch Series 3」に合わせ、携帯大手3社はiPhoneの電話番号をApple Watchと共有する「ワンナンバーサービス」などの提供を開始している

そうしたことから、現在ワンナンバーサービスなどを利用している人は、一度それらサービスを解約し、iPhoneとBluetooth接続して一緒に持ち歩いて利用するしかなくなってしまいます。iPhoneを持ち歩かず、Apple Watchだけで利用する機会が多い人にとっては、料金が安くなる代わりに不便を受け入れなければならないのは確かでしょう。

とりわけahamoやpovoはメインブランドのオンライン専用プランという位置付けなので、これらサービスが利用できない点はやや納得がいかないところかもしれません。ではなぜオンライン専用プランでApple Watch向けのサービスが利用できなくなるのか?と考えた場合、ネットワーク側の問題が大きく影響しているのではないかと筆者は推測しています。

そもそもApple WatchはeSIMを搭載しているので、よくよく考えてみればeSIM向けのサービスを提供している楽天モバイルや、インターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmio」が提供するサービスでもApple Watchで通信ができていいはずです。にもかかわらず、現状は大手3社以外のeSIM向けサービスでApple Watchを利用することはできません。

そうしたことからIIJは2020年6月25日に実施された「競争ルールの検証に関するWG」の第4回会合で、大手3社でしか利用できないApple Watchが囲い込みのツールになっているのではないかと批判、利用できない理由の検証を求めていました。

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▲「競争ルールの検証に関するWG」第4回会合におけるIIJ提出資料より。Apple WatchはeSIMを採用しながら、大手3社以外のサービスが利用できないことが囲い込みにつながっている懸念があるとし、他社サービスが使えない理由の検証を求めていた

そして2020年6月30日に実施された第5回会合の議事録を見ますと、同会合に参加したアップルジャパンが有識者からこの問題について指摘を受けた際、「弊社のeSIMのプラットフォームでございますが、こちらはGSMAのeSIMの仕様を遵守したものとなっております」と回答。eSIM自体は独自仕様ではないとしています。

一方で、アップルジャパンは「セルラー機能が単体では機能せず、iPhoneとペアリングしてお使いいただく仕様」であり、「技術的に非常に複雑なオペレーションが必要」なことが、大手3社以外では利用できない理由だとも説明しています。さらにアップルジャパンは、MVNOなどがApple Watchに対応するには「MVNO様経由で弊社のウォッチがどれぐらい売れるのか、そこに投入するためのリソースにどれぐらいコストがかかるのかというビジネス上の判断にならざるを得ないのではないか」とも答えているようです。

一連の発言からは、Apple Watch向けの通信サービスを提供するにはネットワーク側に独自の技術によるカスタマイズを加える必要があり、相応の手間とコストがかかることからアップル側にメリットがなければ対応が難しい、という様子が見えてきます。オンライン専用プランは元々多くのサービスをそぎ落として低価格を実現していること、そしてApple Watchの取り扱いがなくアップル側がメリットが見いだしにくいサービスだということもあり、各社は対応しないという判断に至ったのではないでしょうか。

電話番号を共有する仕組みが難しいのであれば、KDDIのauブランドが提供する「ウォッチナンバー」なら対応できそうでは?と考える人もいるかもしれません。ウォッチナンバーは「watchOS 7」で対応した「ファミリー共有設定」を利用したサービスで、電話番号を共有するのではなく、Apple WatchにiPhoneと異なる電話番号を割り当てて通話や通信をできるようにするものです。

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▲KDDIは番号をシェアするのではなく、Apple Watch単独の電話番号を割り当てる「ウォッチナンバー」をauブランドで提供している

それゆえウォッチナンバーは「ピタットプラン 4G LTE」と同じ料金(割引なしで月額3150円)がかかるなど、スマートフォン1台を別途契約するのと同じような内容です。電話番号を共有する他のサービスと比べ、単独で契約して利用できる可能性はあるように見えるのですが、KDDIに確認したところpovoのウォッチナンバー対応は「しない」とのことです。

こちらもiPhoneとApple Watchの密な連携が求められるサービスであり、国内では現在のところ大手3社の中でもKDDIだけ。世界的に見ても同種のサービスを提供する携帯電話会社は限定されており、簡単に対応できる訳ではないということも、その背景には影響しているのかもしれません。

もちろん将来的にアップルが将来的にiPhoneとApple Watchのネットワークを完全に分離するという判断を下す時が来るかもしれませんが、それまでApple Watchユーザーはには、料金を取るかサービスを取るか悩ましい選択が求められることになりそうです。