ひと足先にApple Watch Series 7を試す機会を得た。

Apple Watch Series 7は機能や性能といった面では、Apple Watch Series 6に類似する部分が多い。CPUやメモリなどコンピュータとしての能力はほぼ同じで、生体情報や活動量、活動パターンを取得するセンサー類も追加されていない。

Apple Watch(Amazon)

主な違いはケースサイズが1ミリ拡大され、風防ガラスが1.5倍の厚みに変更になったこと。ディスプレイの有効面積が大幅に広く(狭額縁化)なり、無線充電に独自技術を用いることで短時間で充電できるようになった。省電力モード時のディスプレイの明るさが70%向上して見やすくなったのもニュースだろう。

とはいえ、アルミニウムケースのカラーも全面的に変更されるといった違いを合わせたとしても、電子デバイスとして注目したときの大まかな概観に大きな違いはない。

ざっくりとApple Watch Series 7を眺めて「表示が大きくなっただけ?」という感想もまた、正直な印象なのだと思う。

しかし実際に使い始めてみると、スペック以上に違いがあり、実に細かな違いではあるが、”フィーリング”の部分で前進していることも確認できた。

Apple Watch Series 7の位置付け

Apple Watch Series 7の発売に伴い、Apple Watch Series 6はラインナップから消えた。Apple Watch SEはApple Watch Series 5相当の機能性を持つ基本モデルとして残り、ベーシックモデルとしてはApple Watch Series 3もある。言い換えれば、まだしばらくはApple Watch Series 3向けにもwatchOSのアップデートが提供されそうということだ。

▲Apple Watch Series 7の45mm(左)とApple Watch Series 6の44mm(右)

もし、Apple Watch Series 6オーナーから「買い替えるべきか」と問われたなら、その必要はないと即答する。Apple Watch Series 7は後述する様々な改良でApple Watchの体験を洗練させたものだ。

ディスプレイサイズの拡大や充電時間の短縮はスペックを追求した結果ではなく、あくまでより良いApple Watchを目指した結果であり、買い替えを促すものではない。あくまでも”その時点で最高のApple Watch”を提供するための改良だと考えるのが妥当だ。

Apple Watch Series 4 / Series 5のオーナーに同じ質問をされたなら「内蔵バッテリーはヘタっていると感じますか?」と尋ねると思う。これらには血中酸素ウェルネス計測機能がなく、Series 4には常時点灯モードもないが、処理速度に違いがあるわけではなく、多様な情報を表示するコンプリケーションもSeries 4以降であれば同じ情報量、機能が動作する。

毎日充電して使う製品すべてに共通する問題だが、毎日充放電を続けていると、約2年で内蔵バッテリーが明らかに劣化してしまう。そのような状況ならば買い換えを検討しても良いかもしれないが、主要な機能や体験は大きく違わない。

Apple WatchはSeries 4でも十分なパフォーマンスがあり、その前のSeries 3でも応答性に不足はないため、そもそもCPUパフォーマンスを理由にした体験の質の低下はほとんどない。実際のところ”CPUの速度”は、Apple Watch Series 4でSeries 3の2倍のパフォーマンスになって以降、最新のSeries 7でもSE(≒Series 5)比で20%しか向上してない(させていない)。

ただ、コンプリケーションから得られる情報の質には大きな違いがあるためApple Watch Series 3ユーザーには買い替えをすすめたいが、基本的な通知機能に大きな差はなく、充分と感じている人も多いと思う。

▲Apple Watch Series 7の45mm(左)とApple Watch Series 6の44mm(右)

こうした長期的な使用の中でも、体験レベルに残念な思いを感じないのは、おそらくApple自身が“腕時計というジャンル“に対して、頻繁な買い替えなくとも価値が衰えないモノづくりを意識しているからだろうか。

一方でwatchOS 8は順調に機能性を向上させており、最新のiOSと連動した各種通知機能やリモート操作などの利便性は、どの世代でもそのほとんどを享受できる。

バッテリーの劣化に関して根本的な解決は難しいが、このような製品寿命を長期に見据えてのアップデートは、積極的な買い替えは促さなくともApple Watchという製品の価値を高めていると思う。

“Apple Watchの基本形“に対するプラスα

さてApple Watch Series 7の話に立ち戻ると、ディスプレイの常時点灯と血中酸素ウェルネスセンサーを除けば、概ねApple Watch SEとも機能は共通。スマートウォッチに期待する利便性は、ほぼApple Watch SEでカバーできる。

これはApple Watch Series 6とSEの関係にも言えたことだが、毎年アップデートされる最新シリーズは基本形に対してスマートウォッチとしてプラスαの付加価値をトッピングした製品だ。

プラスαの方向性は様々だが、血中酸素ウェルネスセンサーと常時点灯モードに加え、今年追加されたトッピングが、ディスプレイの大型化狭額縁化、風防の厚み増加、充電速度の向上、常時点灯モード時の明るさが70%向上したことだ。

もちろん、カラーバリエーションやケース素材の選択肢が広いことを魅力に感じる人もいるだろう。では、それぞれはどのようなトッピング名のだろうか。少し掘り下げてみよう。

・ディスプレイの大型化

数字の上では、ディスプレイの額縁は40%小さくなり、画面サイズは従来モデルから約20%拡大した。現在もベーシックモデルとして残るSeries 3と比較すると50%以上の拡大で、確実に視認性は上がっている。

ちなみにケースサイズが1ミリづつ拡大している事もあり、腕に装着した際の存在感もパッと見た印象で大きいと判別できるほどだ。ソロループを装着してみたところ、ほんの少しだけ緩くなったようにも感じた。

大型化がもたらしているのは視認性向上だけではない。風防の縁、ラウンドした部分ギリギリまでディスプレイがあることで、盤面はレンズ効果を狙った視覚デザインが可能になっている。

ベゼルレスに近いこのディスプレイ専用のウォッチフェイスは2つ用意されているが、そのうちのひとつ「輪郭」は風防の局面にアラビア数字のインデックスが収まるようにデザインされている。もうひとつは多くのコンプリケーションを機能的に並べるモジュラー型で、大型の横長コンプリケーション2つを並べることが可能な「モジュラーデュオ」。

なお、アプリやコンプリケーションの画面デザインは従来と共通。今後、OSアップデートなどで新しいディスプレイに特化した盤面が増えることを期待したい。

・33%速くなった充電速度

Apple Watch Series 7に搭載される最新SiP(システムインパッケージ)「S7」は、パフォーマンスこそ従来と同じだが、パッケージサイズがコンパクト化されている。風防の厚みが1.5倍になり、耐衝撃性能が上がっているのもシステムがコンパクトになったため。システムがコンパクトになった分、搭載バッテリーを大きくしても良さそうだが、Appleは耐久性を高めることにしたようだ。

とはいえ、バッテリーに関して手をこまねいていたわけではない。充電速度を上げることでバッテリー持続時間に対する不満を解消しようとしている。標準規格であるQiによるワイヤレス充電技術を拡張した充電システムを搭載した。

ちなみに上位互換であるため、Series7に搭載された充電器とSeries6以前のApple Watchを組み合わせても充電速度は上がらないが、そのまま充電自体は可能だ。

充電速度が上がったことで、ほぼシームレスにApple Watchを使い続けることが容易(以前から可能ではあったが、より簡素に運用できる)となり、

新品のSeries 7を一日装着して夜を迎えると、おおむね4割ぐらいのバッテリーが残る。ランニングなどのワークアウトを行うとさらに1割以上を消費するが、それでも3割ぐらいは残る。2年ほど使用し、バッテリーが劣化したとしても一日は使えるだろう。

夕食を終えてお風呂を入れ始める頃に充電を始め、寝る前に起床時間を確認してApple Watchのアラームをセットする頃までには、おおむね100%の充電容量が回復する。そのまま就寝すると、朝起きてチェックするとバッテリー残量が82%ぐらいのことが多いだろうか。朝食を摂って出かける準備を終えるまでの間に充電しておけば、ほぼ間違いなく100%の充電にしておくことができる。

もちろん、これは充電サイクルを早めるだけではないか? という意見があると思う。充電サイクルが早まれば、バッテリー劣化はより早く進む。しかし、一日のシナリオを考えた時、充電速度が上がったことはApple Watchの使い勝手を上げる上で重要な部分だ。

なお、Apple Watchの場合、補償期間が切れたあとでも9680円(税込み)でバッテリーの修理が可能だ。

・省電力モード時の表示が70%明るく

常時点灯機能はありがたいものの、省電力モード時はあまりに暗すぎて視認性が悪いと感じていた既存Apple Watchオーナーもいるだろう。Series 7では7割も輝度が向上したため、室内であればほとんどフル発光と変わらない程度の視認性が得られる。

これは例えば、会議中や誰かと会食しているときなどに届いたメッセージを確認したいときなどに役立つ。さりげなく通知を見るだけで内容を把握し、対応が必要かどうかを判断できるのはありがたい。

リフレッシュレートを1Hzまで落とすことで実現している常時点灯モードだが、Appleは体験の一貫性を求めており、常時点灯モードの表示が明るくなってもバッテリー持続時間には影響を与えない。また常時点灯モードはオン、オフが切り替えられることも忘れてはならない。省電力モード時の明るさが向上した背景で予想されるのは、ディスプレイそのものの消費電力が下がったことが理由だろう。常時表示をオフにすることでのバッテリー駆動時間の延びもやや長くなっていた。

スペックからは見えない改良も?

Appleは、スペックでは明かされないが体感できる改良を加えることもある。

▲Apple Watch Series 7の45mm(左)とApple Watch Series 6の44mm(右)

今回も慎重にApple Watch Series 6との違いを体感することに努めたが、以外に大きかったのがスピーカー音声の音質だ。筆者の場合、キッチンで料理をしているときに着信した場合など、すぐにiPhoneを取り出せないときにApple Watchで受話することがよくある。

これまでも内蔵マイクの質、(発話時の)ノイズキャンセルなどに優れ、音声も充分に聞き取りやすかったが、Series 7ではさらに音質がよくなっていた。周波数帯ごとに位相のズレが変化しているような独特の音が、とても素直に耳に入ってくる音声になっている。

スピーカーそのものの改良なのか、それとも信号処理によるものかは解らないが、発話音声の質は変化していないため、信号処理が大幅に変化したわけではないようだ。

また本体サイズが変化しているせいもあると考えられるが、TapTicエンジンの動作もややシャープに感じられる。マスク付きでFace IDによるロック解除をアシストする際、起床時のアラーム、CarPlayを使って経路案内を受けているとき、そして着信した場合など、Apple Watchからの通知振動がほんの少し解りやすい。

これらの違いが、果たして41mmケースだとどうなのか? は実際に使用していないためわからない。

そのほか買い替えやライバル製品と比較しての決定的な差別化要因にもならないだろうが、感性に訴える部分での改良が重ねられているという信頼感がある。

毎日身に付ける製品としてこだわったもの選びたいのであればSeries 7

さて最後に、さらに個人的な感想を交えながら、新しいApple Watchの評価ポイントをおさらいしておこう。

▲Apple Watch Series 7の45mm(左)とApple Watch Series 6の44mm(右)

大きくなったディスプレイは、本体ケース全体に対するディスプレイ面積の割合という意味でも、物理的な表示サイズという意味でも充分に体感できる改良だ。繰り返しになるが、文字が読みやすくなるため、メールやメッセージの可読性が高まる。

より多くの文字を表示するのか、それとも大きく表示するのかは人それぞれで選択可能だが、文字情報を実用的な見通しの良さで得られるのは素直に便利だ。

デザイン面での貢献は、まだこの表示領域の広さを活かしたものが”輪郭”しかないため、今後のアップデートにも期待したいところだが、表示面積が大きくなったことで小さい方、すなわち41mmケースが男性にも魅力ある選択肢になるように思う(実際に手にしたことがあるのは、執筆時点では45mmケースのみ)。

ただしカラーリングや常時点灯に拘らないのであれば、Apple Watch SEが魅力的な選択肢であることに変わりはない。Apple Watchの良さは、なんといってもiPhoneとともに生活している大多数の人にとって”便利”と感じさせる気の効いた連携だ。

MacやiPhoneのロック解除を手助けし、CarPlayを使っているとき手首を通じてナビゲーションを助けてくれ、メッセージや音声コールを見逃さず、起床時にはやさしく気持ち良く起こしてくれる。

iPhoneとのペアリングしか考えられていないため、万人向けの製品とは言えないが、その分だけiPhoneの改良に沿ってApple Watchの使い勝手も向上していく。その大多数の価値はApple Watch SEでも享受できる。しかし、それでもApple Watch Series 7を手にすれば、こちらを選びたいと感じる人も多いことだろう。

スマートウォッチと似た機能の多くは、ディスプレイがリッチになってきた高機能フィットネスバンドでも利用できる。ほぼ同時期に発表されたFitbit Charge 5を反対の手首に装着し、並行して評価していたが、スマートウォッチとフィットネスバンドの世界は近付いていると実感した。

一方で”存在感を希薄にしたまま機能を高める”方向で進化しているフィットネスバンドと、むしろより多くの情報を快適にハンドリングした上で、ファッションとしての腕時計の世界にも近付こうとしているスマートウォッチが相容れないことも痛感した。

それは盤面デザインやバンドの色の選び方、仕上げの緻密さなどからも感じ取ることができる。たとえば筆者が試用した”ミッドナイト”というアルミケースのカラーは、黒に近い色合いながらも深みのあるブルーという実に繊細なカラーリングに仕上がっている。

スターライトはシルバーとゴールド、両方の要素を兼ね備えた絶妙の色合いだし、グリーンもまた落ち着いた色合い。その一方でブルーはスポーティーで明るい色合いだ。実際の製品を見ながら、そうした仕上げへのこだわりを楽しむのもいいだろう。

言い換えるなら、毎日身に付ける製品として、機能性だけではなく、自分なりにこだわったもの選びたいのであれば、それこそがSEではなくSeries 7を選ぶ理由になるはずだ。

最後にレビュー動画もアップしたので、こちらも合わせてどうぞ。動画の後半ではちょっとぶっちゃけてるのでぜひ視聴ください。

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