プエルトリコにある巨大なアレシボ天文台の、中央上空にあるグレゴリアンドームを含む受信プラットフォーム(重量約900t)が落下、崩壊しました。アレシボ天文台は8月と11月に、2度にわたって構造を保持するための支線ワイヤーが切れる事故が発生し、直径305mの反射鏡を破損しており、天文台を運営してきた全米科学財団(NSF)は安全面の問題から、57年続いたこの天文台の歴史にピリオドを打つことを明らかにしていました。
The instrument platform of the 305m telescope at Arecibo Observatory in Puerto Rico fell overnight. No injuries were reported. NSF is working with stakeholders to assess the situation. Our top priority is maintaining safety. NSF will release more details when they are confirmed. pic.twitter.com/Xjbb9hPUgD
— National Science Foundation (@NSF) December 1, 2020
NSFによると、プラットフォームの落下はそれを支える3つの鉄塔がすべて壊れたために起こったとのこと。やはりそれらを支えるケーブルも落下しており、反射鏡へのダメージはさらに酷くなりました。
すでに施設周辺は安全の評価をする技術者の立ち入りは以外は禁止されており、けが人はありませんでした。NSFとアレシボ天文台を運営するセントラルフロリダ大学(UCF)は、事故の翌日から環境アセスメントのための人員を配置、天文台の作業員は安全対策を講じるとしています。
なお、既報のとおり電波天文学の研究に使われる12m望遠鏡や、地理空間研究に用いられるLIDAR施設といったハリケーン被害を受けた周辺施設の修理復旧作業は継続して行われます。
NSFは今回の崩落の発生を「悲しく思う」と述べ「今後は科学界の支援とともにプエルトリコの方々との強固な関係を維持していくための方法を模索する」と述べました。
2016年に中国500m球面電波望遠鏡(FAST)が建設されるまでは世界最大の電波望遠鏡として知られ、映画『007 ゴールデンアイ』『コンタクト』といった映画に登場したことで、この特徴的な天文台の名前を知らずとも見たことがあるという人は多いはず。それが崩壊していくのはやはり残念でなりません。New York Timesによると、アレシボでは11月のワイヤー切断のあと、24日にさらに1本の構造支持ケーブルの断線が見つかったと伝えており、もう強度的にもその形をとどめるのは難しくなってしまっているようです。
source:NSF
via:New York Times