昨今は帯域バンドル数の激化などにより、通信速度の高速化が急速に進むWi-Fiルーター(とアクセスポイント)ですが、同時に「周波数帯域の逼迫」という、無線通信の宿命も見えてきつつあります。

そうした状況の解決法の一つとして期待されるのが、新しい無線通信バンドである6GHz帯を使う無線LAN仕様『Wi-Fi 6E』。Wi-Fi仕様の標準化団体であるWi-Fi Allianceが2020年1月に発表した、新しい仕様です。

参考記事:

Wi-Fiの新周波数6GHz帯が規格化へ。「Wi-Fi 6E」と命名(2020年1月)

標準化仕様がこの時点で固まったことで、Wi-Fiのヘビーユーザーにとっては「では、対応機器はいつ、どこが発表するのか」に注目が集まっていたわけですが、蓋を開けてみれば(少なくとも発表ベースでは)意外とも思えるメーカーが一番乗りでした。

各種PCや自作向けパーツで知られる、台湾ASUSです。昨今同社は高速なWi-Fiルーターにも力を入れていますが、製品発表ベースとはいえ、無線機器の老舗メーカーに先んじるとは、正直驚きでもあります。


▲GT-AXE11000の特徴。タグライン(キャッチコピー)はズバリ「World's First Wi-Fi 6E Router」です

さて、同社が海外発表した世界初のWi-Fi 6Eルーターが、『ROG Rapture GT-AXE11000』。

同社のファンであればシリーズ名からも想像が付くと思いますが、同社製Wi-Fiルーターの中でも最上位モデルであり、可能な限りのレイテンシ(遅延)低減を是とする、ヘビーゲーマー向けとなる製品です。

▲高速Wi-Fiルーターで重要となるアンテナ配置ですが、本機は「物理的に隙をなくす」ある意味で正統派な作りです

理論上の無線通信速度は、モデル名からも想像が付くように最高で約11000Mbps。

実はこの値自体は現行のWi-Fi 6(まで)対応モデルでも存在しますが、本機は6GHzへの対応により、より実効速度面が期待できるのがポイントです。外観上は8本のアンテナを搭載しますが、本機ではこのうち4本が6GHz帯用に割り振られています。

価格は現状で未公開。ですが既に発売中の兄弟機となるWi-Fi 6(まで)対応モデル『GT-AX11000』の実売価格は5万円前後のため、これより安価とはならないでしょう。米国での発売予定は12月となっています。

なお日本では、これまでの無線LANでは使用されていなかった周波数帯が使われることから、無線周波数の割り当てに関する認可が必要となります。現状の予測では6GHz帯が利用可能となるのは2021年以降と目されていることから、残念ながら日本での発売は当面なさそうです。

▲オンライン発表会にてASUS側は、「6GHzのバンドは輻輳のない(他の機器で使われないため)、安定した回線」である旨を強調。5GHz帯さえ混んできた昨今では、確かに重要な利点です

さて、本モデル最大の特徴は、もちろんWi-Fi 6E対応――すなわち6GHz帯に対応した“トライバンドルーター”となる点。現行のWi-Fiで使われる2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、6GHz帯の無線電波が加わり、より高速かつ安定した通信を支えます。

とくに6GHz帯は新しい無線バンドであり、既存のWi-Fi機器との混信が起こらない“独立回線”となるため、通信安定性という面での貢献はかなりのものが期待できます。

ただし当然ながら、6GHz帯を使った通信はクライアント(対応機器)側も対応が必要ですが、上述のように標準化は済んでいることから(さすがにこれまでのWi-Fi新仕様までの普及速度までは速くはないものの)高級デバイスでの対応はじょじょに進むものと目されています。

加えて、昨今同社が力を入れる、複数ルーターによるメッシュネットワーク構築機能『AiMesh』もサポート。当然相手が対応していれば6GHz帯でもルーター間通信が可能なため(5GHz帯との電波強度による自動判別が可能)、本機の複数運用であれば、対応クライアント機器がなくても実効速度と通信安定性への貢献が期待できます。

▲上流(WAN)側もしっかりと高速モデム対応。ゲーム向けモデルだけあり、レイテンシを削減する各種設定も手厚くサポートします

そして上流側(WAN側)は2.5Gbps対応端子(LAN兼用)を搭載。さらにリンクアグリゲーション(IEEE 802.3ad)対応モデムを利用できるISPに備え、WAN側に2基のポートを割り当てての高速化も可能です。

もちろんROGシリーズのルーターだけあり、現行モデルに搭載されたゲーム用のレイテンシ低減機能は網羅。トレンドマイクロのセキュリティ技術『AiProtection』も継承します。


▲ルーターの発表では珍しい(が、今後は当たり前となりそうな)冷却エアフローの図も登場。底面と側面吸気、天面排気の基本をきっちり守ります

そしてもう一つの注目点は、ASUSが昨今強くアピールする熱設計の強みです。

昨今の高級Wi-Fiルーターは高速なネットワーク処理を支えるべく高速なSoCや無線通信チップを搭載することから、ちょっとしたPC並みと言っても過言ではない熱対策が必要となります。

このため、高速ルーターの熱設計に際しては、むしろ一昔前のルーターよりも、PCに近いノウハウが必要とされるようになっているのが現状。そうした面でPCメーカーは有利、というわけです。

▲SoC(CPU部)は最高1.8GHz動作の4コア。メインRAMは1GBと、高速ネットでボトルネックにならないための重装備となっています
▲発熱源となる部品は大型ヒートシンクで放熱。この時点で、一昔前のシングルボードPC以上の冷却装備です

本機では、SoCや無線チップなど、発熱の大きな部品に対して大型のアルミニウムヒートシンクを搭載し、さらに本体の要所に開けられた冷却孔によるエアフロー(空気の流れ)により、ファンレスながら効率的な冷却を実現。熱設計の基本となる天面側の排気を重視している(=冷却孔の面積が大きい)点がポイントです。

なお、天面に搭載されたROGロゴは、もちろんフルカラーRGBライティング仕様。同社製ルーター用アプリやWeb経由での設定により、色や照明効果の制御が可能です。


▲Wi-Fi通信を示すバンド別インジケーターは「6GHz/5GHz/2.4GHz」の3基に。写真奥側のROGロゴが、いわゆる「ゲーミングデバイスとしての雰囲気」を盛り上げます

このように本モデルは、Wi-Fi 6Eで期待される高速化を活かすべく、現行の家庭用ルーターとしてボトルネックとなりそうな箇所を徹底的に排除した作りとなっているのが特徴。

上述したベースモデルAX11000がそもそも高級かつ超高速仕様ということもあり、単に「6GHz対応の無線部を搭載した」レベルとは異なる仕上がりと呼べそう。

昨今は高速ルーター市場での評価が高まりつつあるASUSですが、本機はそうした評価をますます高める要因の一つとなるやもしれません。

Source:ASUS ROG Blog