料金引き下げやエリア拡大に言及、au発表会で見えた高橋社長の本音(佐野正弘)

新機種を一挙投入、折りたたみ端末も増えた

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年09月25日, 午後 07:37 in au
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2020年にサービスを開始したにもかかわらず、なかなか盛りがりが見えてこない5G。そうした状況を打破するためか、KDDIは2020年9月25日に「UNLIMITED WORLD au 5G 発表会 2020Autumn」を開催し、新しい5G戦略を発表しました。

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▲KDDIは2020年9月25日に「UNLIMITED WORLD au 5G 発表会 2020Autumn」を実施。オフラインとオンラインを併用した発表会となった

その中で、代表取締役社長の高橋誠氏が打ち出したテーマが「みんなの5G」であり、これは5Gが特別なものではなく、みんなが使うものだということ。そのことを象徴しているのが新たに投入を発表したスマートフォン6機種です。

今回投入された新機種は、「Xperia 5 II」「Galaxy Note20 Ultra 5G」「AQUOS sense5G」などいずれも5Gに対応したもの。さらに高橋氏は、今後投入するスマートフォンは全て5Gにしていくと話しており、5Gの拡大に明確に舵を切ったことをアピールしていましたが、より注目されるのは、今回のラインアップの半数以上がサムスン電子製だということです。

ここ最近KDDIはサムスン電子との関係をかなり強めているようで、最近でも「Galaxy Fold」「Galaxy Z Flip」、そして「Galaxy S20 Ultra」を国内キャリアで唯一投入しています。しかも両社の関係はネットワーク設備面でも強化がなされているようで、例えば2020年9月23日には両社が、5Gのスタンドアローン構成におけるエンド・ツー・エンドでのネットワークスライシングの実証実験に成功したことを発表しています。

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▲新たに投入された5Gスマートフォン6機種のうち4機種はサムスン電子製。「Galaxy Z Fold2 5G」「Galaxy Z Flip 5G」といった折り畳みスマートフォンも国内で独占提供するとのこと

サムスン電子は世界最大手の端末メーカーであり、シェアが小さい通信設備事業に関しても、米中摩擦の影響もあり強化を図っているところです。一方のKDDIは、ネットワークだけでなく端末面でも5Gの充実を図りたいところですが、米中摩擦もあり中国メーカーに大きく依存する訳にもいかないことから、政治的リスクが比較的少なく、しかも5Gの端末とネットワークの両面で実績を持つサムスン電子との関係を強化しているといえそうです。

もっとも高橋氏は、かねて「5Gを主語で話す人を信用してはいけない」と話しており、あくまで同社では5Gがサービスを下支えする存在と位置づけているようです。それゆえ今回の発表でも、KDDIがサポートしてSHOWROOMが開発した、プロ品質の短尺映像を配信する有料アプリ「smash.」の提供開始や、渋谷区が公認したというVR空間上の渋谷「バーチャル渋谷」で楽しむハロウィーンイベント「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」など、5Gで楽しめるコンテンツ・サービスの紹介に多くの時間を割いていました。

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▲5Gに関してはコンテンツ・サービス面での取り組みを特に積極アピール。2020年3月に発表した「smash.」を、2020年10月22日より提供することを明らかにしている

さらに高橋氏は「これからの時代、コンテンツがネットワークを選ぶ時代になると思う」と話し、5Gの整備計画も改めてアピール。5G向けに割り当てられた周波数帯だけでなく、既存の4G向け周波数帯も使っていち早く5Gのエリアを拡大するとし、5G基地局を2021年3月末に1万局、2022年3月末までに5万局設置するとしています。

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▲5Gの基地局は2022年3月末までに5万局を整備すると改めて説明。4G向けの周波数帯も積極活用することも明確にしている

実は2020年3月の発表会時点では、2022年3月末の5G基地局数は「2万局超」とされていました。当時の計画から大幅に設置数を増やしているのには、ソフトバンクと同様に4Gの電波を5Gと共用するダイナミックスペクトラムシェアリングをより積極的に活用し、エリアを広げることを重視するようになったがゆえといえそうです。

ただ裏を返すと、KDDIなどに割り当てられている3.7GHz帯の、衛星通信との干渉が予想以上に深刻で、想定以上にエリアを広げるのが難しい可能性が出てきたと見ることもできそうです。それゆえ5Gらしい高速大容量通信が体験できる、“なんちゃって”ではない5Gのエリアが広がるのには、時間がかかる可能性がありそうです。

これだけ5Gに関する取り組みを大きく打ち出したKDDIですが、同社に関して最も注目を集めているのは、正直なところ新たに就任した菅義偉内閣総理大臣が公約として掲げている、携帯電話料金の引き下げでしょう。そうしたこともあってかKDDIは今回、料金関連の施策についてもいくつか打ち出しています。

1つはテレビ局が提供する映像配信サービス「TELASA」「Paravi」「FODプレミアム」をセットにした「データMAXテレビパック」で、こちらは5Gと4Gの双方に向けて提供されるプランとなります。5G向けの「データMAX 5G テレビパック」における、値引きなしでの通常料金(通信量2GB超の場合)は月額1万350円ですが、各種値引きを適用することで月額4460円で利用できるとしています。

そしてもう1つは、段階制プラン「ピタットプラン 5G」を2020年10月1日から1000円値引きし、4Gと同じ料金にすること。「データMAX 5G」に関しても、加入翌月から12か月間、月額1000円を割り引く「5Gスタート割」を、同日に開始するとしています。

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▲料金に関してもいくつかの施策を発表。「ピタットプラン5G」は月額1000円を値引きし、4G向けのプランと同じ料金にするとしている

さらに高橋氏は、2020年10月にUQコミュニケーションズから「UQ mobile」を事業承継することを機として「フォーメーション大きく変える」と説明。auは5Gによる使い放題と充実したサービスを提供するブランド、UQ mobileはシンプルでお手頃価格のサービスを提供するブランド、傘下企業が提供する「BIGLOBEモバイル」「J:COM MOBILE」は価格重視と、複数ブランドであらゆる消費者のニーズに対応できるマルチブランド戦略を取るとしています。

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▲「UQ mobile」の事業を承継したことで、au、UQ mobile、そして傘下のMVNOの位置付けを明確にしたマルチブランド戦略を推し進めるという

ですが菅政権がKDDIを含む携帯大手3社に求めているのは、総務省の内外価格調査で諸外国より高いとされる大容量プランを主体とした通信料の大幅な引き下げであり、KDDIの場合auの料金プランが主な対象と見られています。こうした政権の動向に対し、高橋氏は「真摯に受け止めないといけない。対応を検討していきたいと思う」と話し、何らかの対応を検討すると説明していました。

ただ、高橋氏は5Gのネットワーク整備が政府が提言する『Society 5.0』の基盤となるためにも重要であり、諸外国の整備スピードが速いことから整備に遅れが出れば「日本は1、2周遅れてしまう」とも話しています。また価格に関しても、海外との価格比較調査では足りないところがあるとしながらも、政府が求める料金引き下げには以前から取り組んでおり、料金引き下げのためには通信以外のビジネス拡大など、民間企業としての努力が必要であることも訴えていました。

こうした高橋氏の回答からは、政府から具体的な要請があれば従うとしながらも、5Gなど将来の事業を考えると、厳しい料金引き下げのプレッシャーに戸惑っている印象も受けます。菅政権の具体的な施策が見えていない現状ではアクションを起こしづらいというのがKDDIの本音であり、当分悩ましい状況が続きそうです。



 

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