SCARLETT JOHANSSON
Mario Anzuoni / reuters

現在公開中のマーベル映画最新作「ブラック・ウィドウ」主演のスカーレット・ヨハンソン氏が、ディズニーが劇場公開と同時に動画サービス「Disney+」で配信したことが契約違反だとして、米ロサンゼルス高等裁判所に提訴したと報じられています。

ヨハンソン氏側の訴状では、ディズニー傘下のマーベル・エンターテイメントとの契約では劇場での独占公開が保証されており、本人の報酬のほとんどは映画の興行成績に基づいているためと述べられています。

つまり多くのDisney+ユーザーが家にいながら映画を楽しむことで、劇場への動員人数や興行収入が減ってしまえば、ヨハンソン氏が受け取る額が大幅に損なわれる可能性があるというわけです。訴状では「ディズニーは、ヨハンソン氏がマーベルとの契約の利益を十分に享受できないようにするために、正当な理由なく意図的にマーベルの契約違反を誘発した」と主張しています。

実際、米Variety報道によれば、7月29日時点での「ブラック・ウィドウ」の全世界興行収入は3億1900万ドルに過ぎず、これまでで最も収入が低いマーベル映画の1つになる見通し(2018年初以降に公開されたマーベル映画のうち、10億ドル未満となった映画はこれまで1つだけ)とされ、劇場へ足を運ぶ人数が伸び悩むのをヨハンソン氏が危ぶむのも理解しやすいことです。

これに対してディズニーの広報担当いわく、ヨハンソン氏の訴えにはメリットがなく「COVID-19感染拡大の恐ろしく長期にわたる世界的な影響を無視している点で、特に悲しく、心苦しい」「ヨハンソン氏の契約を完全に遵守し、さらに「ブラック・ウィドウ」がDisney+でプレミア・アクセス付き(日本では税込3278円)で公開されたことで、これまでに受け取った2000万ドルに加えて追加報酬を得る能力が大幅に向上した」と述べています。

また訴状では、ディズニーのロバート・アイガー会長ら幹部の年次ボーナスが「Disney+」の業績に連動しており、それが「ブラック・ウィドウ」を配信する動機になっていると指摘されているのも興味深いところです。

ディズニーが「Disney+」と映画館での同時公開を始めたのは、映画館が閉鎖されたり、入場者数が制限される新型コロナの感染拡大がきっかけであると同時に、立ち上げたばかりの「Disney+」を強化するためと見られています。

しかし同様の戦略を採る米ワーナーメディア(ストリーミングサービス「HBO Max」を運営)は、映画の興行収入に連動する出演者との契約を再交渉し、2億ドル以上を払ったと報じられています。今回の訴訟は、コロナ禍のもとで映画の視聴パターンも変わらざるをえないなか、俳優やプロデューサーといった大手メディア企業よりも弱い立場に置かれている人々が犠牲にならないよう、大きな転機となるのかもしれません。

Source:The Wall Street Journal