buddhamachine

2021年2月、突如発表・発売された、日本発ブッダマシーン(電子念仏機)『天界』。

“日本初のオリジナルブッダマシーン”ということや、人気アーティストが多数参加した収録内容も話題になり、発売開始から約2日でネット通販分は完売。2月中旬に都内で開催された、制作者「光と音のハオハオハオ」さんの個展でも、天界を買い求める人がわんさか集まったのだとか。

筆者は発売開始初日に通販で購入。当初は3月上旬より発送開始予定とのことでしたが、2月下旬に到着しました。今回はブッダマシーン天界を実際に使ってみて、このガジェットは一体どんなものなのか、どんなことができるのか、解説します。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天界(外箱)

「ブッダマシーン」ってなに?

ブッダマシーンは、別名「念仏機」とも呼ばれる、宗派や体系・教義の垣根を越えた、あらゆる種類の念仏、民謡、仏教ソングなどが収録された、ジュークボックスのようなデジタルガジェットで、主に中国などのアジア仏教圏で流通しています。“ブッダマシーン”という名称は、中国のアーティスト集団「FM3」の、念仏機をもとにした電子楽器「Buddha Machine」(こちらは念仏ではなくアンビエントミュージックを奏でます)に由来し、いつしか“ブッダマシーン”が念仏機の通称となったそうです。

日本初のオリジナルブッダマシーン・天界を制作したハオハオハオさんは、2005年からブッダマシーンにハマり、世界中のブッダマシーンを探し集めているブッダマシーンコレクター。ブッダマシーンの魅力をより多くの方々に伝えるべく、SNSでブッダマシーンの情報を発信したり、イベントや自身が運営している通販サイトで、世界各国で見つけた珍しいブッダマシーンを販売したりと、様々な活動を行なっています。

天界は、5宗派(真言宗・浄土宗・浄土真宗・天台宗・臨済宗)総勢8人の僧侶による念仏・声明・読経・御文、さらに、国内外で活躍するアーティストによる、仏教をテーマに制作された人気曲や“電子念仏機”をテーマに制作した書き下ろし曲など、全部で52トラックを収録(参加アーティストについては後述)。税込価格は5280円です。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天界の本体と外箱

チープ感と不思議さが共存する筐体

天界のサイズはW155mm×H102mm×D45mm。赤地に金の装飾と、一見ブッダマシーンの“定番カラーリング”ですが、中の基盤や部品などが透けて見える、美しいシースルーボディが特徴で、浪漫を駆り立てられます。筐体正面左側に描かれた仏様のイラストは、「バカドリル」や、週刊SPA!「バカはサイレンで泣く」などでおなじみ、クリエイターの天久聖一さん描き下ろしです。レンチキュラープリントで、見る角度によって顔の向きが変わったり、手足が飛び出して見えたりします。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天久聖一さん描き下ろしの仏様

背面には収録内容とアーティスト名全52トラック分が書かれています。スピーカー穴や電池カバーの場所の都合もあるなか、52トラック分すべて一面に収めているため、文字の間隔にかなりのバラつきがあり、右上は特に混み合っています。しかしこの、無理矢理収めた“やけくそ感”のあるアンバランスなデザインこそ、ブッダマシーンにありがちな、摩訶不思議な世界観を演出しているのではないでしょうか。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天界(裏側)

天界を動かすには単3電池3本(別売)が必要で、背面の電池カバーを開けてセットします。筆者のもとに届いた天界は、いまひとつ電池の収まりがよろしくなく、電池を入れて閉めたときに電池カバーが少し浮き上がってしまいましたが、この計算し尽くされていないアバウトな造りもブッダマシーンの“味”のように思えます。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲電池カバーが……

側面には電源スイッチ兼ボリュームと3.5mmステレオミニジャック、そしてAC入力端子があります。パチッと鳴るまでボリュームを上に回すと電源がオンになります。勢い良く上に回し過ぎると1曲目の「Green Tara Mantra」が大音量で鳴り響いてしまうので注意してください。電源オフはその逆で、パチッと鳴るまで下に回し続けます。ちなみに筆者の天界にはボリュームスイッチ部分に小さなバリが付いており、電源オンオフや音量調整時、けっこうな頻度で刺さります。しかしバリがあるくらい作り込みが甘くても、なぜかニッパーやヤスリを使って取り除こうという気が起こらないのです。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天界(側面)

天面には再生/停止ボタンと、その両脇は1曲戻る・進むボタンが付いています。中央のボタンを長押しすると、全曲ループになります(通常時は1曲ループ)。シャッフル再生はありません。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲天界(天面)

トラックナンバーを表示する液晶や7セグメントは搭載されていないので、聴きたいトラックが真ん中の方にあると再生が大変そうですが(特にお経の聞き分けが難しいと思います)、「それもご愛嬌」と笑って許せてしまえるほどのチープな魅力があります。

有線イヤホン・ヘッドホンも利用できるので、特に集中して聴きたかったり、公共の場所でも聴けるのが嬉しいですね。音質はトラックによってばらつきがあるように思えました。

ブッダマシーン「天界」
ブッダマシーン「天界」
▲一般的な有線イヤホンで聴いてみた

様々なものがデジタル化・スマート化していくなか、いつでもどこでも手軽に念仏などが聴ける“だけ”でハイテク感のない不思議アイテムが2021年に日本初登場というのもさることながら、総じてツッコミどころ満載な、B級感溢れるチープの妙を味わえる、無性に愛おしさを感じられるガジェットです。

収録アーティスト紹介

冒頭で「人気アーティストが多数参加」と書きましたが、一体どんなアーティストが展開に参加しているのでしょうか。計14組の参加アーティストをご紹介します。

田島ハルコさん(01.Green Tara Mantra)

幼少期から経由してきた2000年代カルチャーをはじめ、様々な時空間をサンプリング、コラージュ的に張り合わせて心象風景をユニークに表現する箱庭的な作風が特徴の、ニューウェーブギャルラッパー/トラックメイカー。自身のMVなど映像・ビジュアル面も手掛けることも。ギャルサークル「Zoomgals」での活動や、オンラインセレクトショップ「ニューウェーブぎゃるショップ」の運営など、マルチに活動中です。天界にはマントラを提供しています。

さよひめぼうさん(02.Xylophone China Break)

アメリカ・Vaporwaveレーベル「PLUS100」や「BusinessCasual」にてアルバムを多数リリースしている、海外でも人気のアーティスト。直近ではEP「深圳DIVA」(Maltine Records)、アルバム「ALIEN GALAXY MAIL」(P-VINE)のリリース、「パソコン音楽クラブ」のリミックス、「ぷにぷに電機」の楽曲アレンジ、「beatmania IIDX」への楽曲制作など、活動の幅を広げています。

Tariki Echoさん(03.念仏・和讃二重「解脱の光臨きわもなし」)

龍教寺(島根県)住職・釈一平さんのお経ダブユニット。宗派宗教の枠を越えた1stアルバム「ブッダサウンド」がヒットし、フェス・テレビ・ラジオにも出演。タイやインドでも活動しています。サウンドプロデューサーedamameさんとのコラボでは「ZIP-FM」でTOP40にランクイン。天界はお経とダブを組み合わせた人気曲『念仏・和讃二重「解脱の光臨きわもなし」』が特別カットで収録されています。

菅原慎一さん(04.BUDDHA TO REJECT MIDI)

2020年に解散した「シャムキャッツ」のギタリスト。管楽器を取り入れた小楽団「菅原慎一BAND」の主宰でもあります。音楽家・プロデューサーとしてだけでなく、台湾を中心としたアジアのポップカルチャーや音楽をテーマにした執筆活動、トークショー、DJ、メディア出演も行なっています。映画「ドンテンタウン」の主題歌と劇伴を担当。Podcast番組「好玩電台」のナビゲーターも務めています。

明和電機さん(21.DEYON)

1993年に結成された、土佐信道さんプロデュースの芸術ユニット。「オタマトーン」「魚コード」など様々なアイテムを開発し、国内外のライヴや展覧会でパフォーマンスを行なっています。天界収録曲『DEYON』は、「イカリを揚げよう」前奏の「デーヨンカッサン~」を念仏にした楽曲です。

メコンスさん(22.Cyber Potalaka)

ブッダマシーンのサンプリングに、リズムマシンとアナログシンセで楽曲を作成しています。

炒飯骨(mansooon)さん(29.裡在夢/廟/夢夢做夢II)

「マンスーン」名義で、「オモコロ」などで記事を執筆している工作系ライター。壊れたブッダマシーンも秒で直せるほど、電子工作が得意な“下町の発明王”。ハードオフのジャンクコーナーで“いらないもの”をよく購入しているそうです。※名前の「飯」は簡体字

セキグチサトルさん(32.蓮茶/49.amitabha)

天界では唯一、2曲の書き下ろし楽曲を提供し、天界のミキシングも担当しています。音楽活動だけでなく、DU BOOKS「ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド」のディスクレビューにも参加。

赤坂陽月さん(39.四弘誓願文)

2020年、声を即興的に多重録音して創る音楽にお経をのせる「般若心経ビートボックスRemix」がYouTubeで300万回以上再生される大ヒットとなり、世界的人気を博している、即興音楽家兼僧侶。僧侶になる前は、ヒューマンビートボクサーとして、ニューヨークなど世界8都市で音楽活動をしていました。音楽×仏教×テクノロジーで、音楽体験の新しい次元を切り開いています。天界では、特別カットの『四弘誓願文』を収録。

ナマンダーズさん(40.ナマンダーズのテーマ)

浄土真宗本願寺派僧侶の今野沙恵子さん、釈真證さん、木山寧海さんを中心とした念仏ミュージックグループ。2019年に1stアルバム「わたし、あなた、なもあみだぶつ」をリリースし、関東を中心に活動しています。今野さんはバンド「Minmoa」のヴォーカルとしても活動中です。

關PUNKSPIRIT2000(g.a.g/テクノウルフ/NDG)さん(48.GOD ELBOW)

バンド「NATURE DANGER GANG」のMC。メンバーのぼく脳さん、プラズマさんと「g.a.g」としても活動しており、「朝まであらびき団SP」に出演したことも。即興型ライヴテクノユニット「テクノウルフ」ではベースを担当しています。

nehanさん(50.08-8)

FM3の「Buddha Machine」や念佛機を軸に、様々なガジェット楽器やおもちゃからドローンアンビエントノイズを制作する、関西在住の2人組ブッダマシーンユニット。

薬師寺寛邦さん(51.般若心経(cho ver.))

僧侶兼音楽家。臨済宗・海禅寺(愛媛県)副住職。2018年に般若心経に声を重ねアレンジしたアルバム「般若心経」をリリース。関連動画の再生数はYouTubeや中国などのSNSで5000万回を超え、アジアでの反響が大きかったことから、2018年と2019年にはアジアツアーを開催しています。

Omodakaさん(52.ドダレバチ(津軽甚句))

2001年に始動した、音楽とモーショングラフィックスの突然変異的融合を試行錯誤してきた実験企画。巫女装束姿でカオシレーターや携帯ゲーム機などを演奏したり、液晶ディスプレイに映し出された仮想シンガー(金沢明子さん)に歌わせたりといったライヴパフォーマンスを、2009年から世界8か国で行ないました。

今回は、天界のCM動画にも使われた、ドダレバチ(津軽甚句)が収録されているOmodakaさんに、少し質問してみました。

―― 日本には様々な民謡がありますが、なぜ今回天界の収録曲にドダレバチを選んだのですか?

Omodaka 金沢明子さん(民謡歌手。Omodakaの歌い手)との話の中で「ドダレバチをやるのはどうか?」という案が出て、そのインパクトある曲名に惹かれたから。元々は「津軽甚句」という曲名で、「ドダレバチ」というのは方言由来のあだ名らしいです。

―― 楽曲の制作期間はどのくらいでしたか?

Omodaka 制作期間はおおまか2~3か月くらいだったと思います。

―― Omodakaさん自身はブッダマシーンが好きだったり、持っていたりしますか?

Omodaka 3年くらい前にプレゼントでもらってから、ブッダマシーンというものを初めて知りました。そのときに「こういう再生機があるのか~!」と思って興味が湧いたので、今回の企画に参加できて嬉しかったです。

Omodakaさん、ありがとうございました。

ハオハオハオさんは現在、大阪で個展を開催されており、そこに天界もあるとのことです(完売している可能性もあり)。

なお、4月以降に通販サイトのキャンセル分を一部数量再販できる可能性もあるそうなので、興味を持った方は、ハオハオハオさんのSNSをチェックしては如何でしょうか。