菅首相誕生で気になる「携帯値下げ」の行方(石川温)

携帯3社の株価は下落

石川温
石川温
2020年09月3日, 午後 03:50 in news
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内閣官房

9月2日、菅義偉氏が、安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選に立候補することを表明した。

記者会見では「世の中、数多くの当たり前でないことが起こっている。それを見逃さず、国民生活を豊かにし、国を成長させるための改革が求められている」とコメント。洪水対策におけるダムの水量調整とともに槍玉に挙げられたのが、携帯電話料金の引き下げだった。

「携帯電話料金。国民の財産である公共の電波が提供されているにもかかわらず、上位3社は市場の9割を占める寡占状態を維持し、世界的に高い料金で約20%もの営業利益を上げている。私が一昨年、4割程度引き下げられる余地があると表明したのも問題意識があるからだ。事業者間でしっかり競争が働く環境をさらに徹底していきたい」と、改めて携帯電話料金の値下げに意欲を示した。

菅氏の発言に反応したのが 3日の株式市場だ。

市場が開いたと同時にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの株価が大きく下落。一方で、第4のキャリアとして参入した楽天、MVNOとして音声かけ放題プランを提供したばかりのMVNOである日本通信の株価は上昇した。

菅氏は、自民党内で圧倒的な支持を固めており「菅首相」が誕生するのは目に見えている。

あるキャリア関係者は「一国の総理が特定の産業に口出しするのは民主主義としてあり得ないのではないか」と憤る。

2018年夏に菅氏が「日本の携帯電話料金は世界的に比べて高すぎる。4割値下げできる余地がある」と発言したのち、総務省は携帯電話事業者に対して、様々な規制やルール変更を強要させてきた。

電気通信事業法を改正し、完全分離プランとして、端末の割引に「上限2万円」という制限を設けた。有識者会議の議論を無視して、ネットアンケートを実施し、1万円近かった解除料を1000円程度に引き下げさせた。

さらに2年縛りを見直させ、SIMロック解除をしやすくし、今度はMNPの手数料を無料にしようとしている。

「4割値下げ」発言がむしろキャリアを儲けさせている現実

しかし、我々国民が「スマホ代が安くなった」と実感することはほとんどない。むしろ、スマホ本体の割引が適用されなくなったことで「スマホを買い替えにくくなった」という、ネガティブな印象しかない。

菅氏は「携帯電話会社は儲けすぎている」と批判しているが、さらに儲かる構図を作ってしまったのは、この2年間、総務省が手がけてきた政策が失敗しているからに他ならない。

例えば、NTTドコモの2020年第1四半期決算を見てみると、端末販売台数が215万台と前年同期の344万台と比べて130万台近くも減っている。これによって、 777億円の減収になったのだが、一方で端末販売費用が前年同期比で849億円も減った為、結果として72億円の増収となったのだ。

つまり、コロナによるショップの営業時間短縮と改正電気通信事業法による割引規制により「スマホは売れなくなったが、端末の割引をしなくて良くなったので販促費用も減って、結果として儲かった」という構図になってしまった。

「儲けすぎ」な環境を作ったのは総務省の失策が原因に他ならないのだ。

また、各キャリアが決算資料で出している「解約率」を見ても、総務省のやっていることが間違った方向に行っているのが良くわかる。

NTTドコモのハンドセット解約率を見ると、2020年第1四半期が0.34%。前年同期は0.45%だった。KDDIは今期が0.51%で前年同期は0.75%(スマホ以外も対象)。ソフトバンクのスマホ解約率は今期が0.53%、前年同期が0.81%と、いずれのキャリアも解約率が落ちている。

つまり、ほとんどの人が契約しているキャリアを辞めずにそのまま使い続けているのだ。格安スマホを手がけるIIJの決算資料を見ると、個人向けサービスであるIIJmioにおいては前年から回線数が減少するなど、苦戦を強いられている。

この2年間、総務省があれこれ手を尽くしてきたが、菅氏が語る「事業間の競争が働く環境」など起きておらず、むしろ総務省のせいで顧客獲得競争が止まってしまったのだ。

本当に、あと何日かで首相になるであろう菅氏が本気でスマホ市場に競争を起こしたいのであれば、この2年間にやったことは全てリセットし、イチから競争環境政策を作り直す必要がありそうだ。

今後、キャリアは菅氏の発言に振り回されることになりそうだが、あるキャリア関係者は「菅さんは値下げしろという姿勢を見せるだけで、結果は求めていない。それを繰り返し、国民の味方であることをアピールできれば満足なのでは」と冷やかだ。

結局のところ、キャリアを槍玉にして、「値下げしろ」と期待を煽ることで、国民の人気がとれれば、菅氏としては、それで結果オーライなのかもしれない。

 
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