カシオ計算機とアシックスがリリースしたランナー向けコーチングサービス「Runmetrix」。その人の走り方を分析したうえで、ランニング時の体の動きをスマートフォンアプリで可視化し、文章や動画でコーチングしてくれるというものです。カシオ計算機が持つセンシング技術とアシックススポーツ工学研究所の知見を合わせたコラボで、将来的には課金型コーチングサービスやサプリメントの販売など、様々な展開が予定されています。
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そんなRunmetrixの体験会が都内の駒沢オリンピック公園総合運動場にて開催されたので参加してきました。今回はその模様をお届けします。
まずRunmetrixの仕組みをざっくり説明しておくと、スマートフォンアプリへのデータの取得にはGPSや9軸センサーを内蔵したクリップ付きのモーションセンサー「CMT-S20R-AS」や「G-SHOCK GSR-H1000AS」が必要となります。CMT-S20R-ASを腰に装着して走ることで、走行距離やペース、ピッチ、ストライドのほか、体幹の傾きや骨盤の回転、接地衝撃などフォームに関する指標を記録してくれる仕組み。
フォームの乱れを検知したり、目標ペースをクリアしたり、トレーニングをしているうえでの注意点が発生すると、心拍計などを内蔵した「G-SHOCK GSR-H1000AS」に通知され、スマートフォンにインストールしたRunmetrixアプリでは、計測データをもとに走りの改善点や推奨するトレーニングなどを示してくれます。
「CMT-S20R-AS」と「G-SHOCK GSR-H1000AS」を併用することにより、G-SHOCK側で通知表示のほかモーションセンサーのスタート / ストップ(走り始め / 終わり)なども行えるので、センサー単独で使用するよりも使い勝手が向上するとのこと。ちなみにモーションセンサーの価格は1万4080円(税込)、モーションセンサーとG-SHOCKのセット価格は5万7200円(税込)です。発売はいずれも3月4日。
自分の走りが可視化されることのワクワク感
実際に使用する前にまずはモーションセンサーとRunmetrixアプリがインストールされたiPhoneをペアリングします。
基本的にはこの組み合わせだけで使い始められますが、G-SHOCKを併用すると通知が来るので、一人で走っている孤独なトレーニングでもモチベーションアップに繋がりそうです。
Apple Watchにもランニングアプリがあり、トレーニングのコーチングをしてくれるものもありますが、腕を振ることで得られる走りのデータはあくまでも腕の動きから体の動きを推測しているに過ぎません。モーションセンサーを腰につけることでより詳細かつ、正確なデータが得られるわけです。
実際に走ってみると、G-SHOCKから「その調子」みたいな通知が届くなど、くじけそうになる気持ちを支えてくれるのが嬉しかったです。
自分の走行データをチェック
さて、走り終わったら、モーションセンサーのデータをiPhoneアプリ「Runmetrix」に取り込みます。走り初めからゴールまでのペースや走行姿勢などがグラフ化されて表示され、設定した目標に応じた走りのスコアが表示されます。
走りの動きがアニメーション化され、理想の動きと実際の動きを比較検証することができます。
ちなみに他の人(目標設定や走りが異なる)と比較したところ、走りのデータに違いが確認できました。
Runmetrixアプリでは走りを分析して、より良い走りにつながるトレーニングも提案してくれます。
ここまでアドバイスしてくれるならコーチが不要になるのでは? という心配をしてしまいますが、実際にはこのような解析データを元に、より詳細なコーチングがしたいというトレーナーもいるのだそう。
多くの人は、体育の授業や部活動などにおいて「正しい走り」を習っていないことが多いそうです。また、集団で行う授業や部活では、みんなで一律のトレーニングが主で、個人に適したトレーニングにならないことも多いです。
体型も骨格も人それぞれ異なるわけで、各々に最適化されたアドバイスやトレーニングを案内してくれて、無理なく走りを向上させられるとしたら、もっと走ってみたくなることでしょう。
学生の時は走るのが苦手な(好きではなかった)筆者でしたが、このようにグラフ化され、良いところと悪いところを示しながらアドバイスがもらえていたなら、もしかすると走るのが好きになっていたかもしれません。
今回のRunmetrixはランニング用のアプリということで、習慣的にジョギングをしている人やマラソン大会を目指している人がターゲットになりますが、カシオ計算機とアシックスによれば健康目的やフレイル対策としてウォーキングをする人向けへの提供もできるようにしたいとのことです。
手軽に使えて的確なアドバイスも
今回の体験会でRunmetrixを試用して感じたのは、モーションセンサーを腰につけて走るだけという手軽さと、そこから得られる豊富なデータとアドバイスの良さです。
他社のソリューションでは、センサーだけでなくスマートフォン持って走らなければならないなどの不自由な側面があることも。体にセンサーを装着して詳細なデータが得られるサービスもありますが、気軽に利用できるものではないのが難点でした。
その点、Runmetrixはこの価格帯で日常的にデータ収集と解析、改善トレーニングのサイクルを回せるためかなり良いと思いました。好調の時だけでなく不調時のデータも継続して収集することで、好不調の原因を特定しやすくなるなどの効果が得られるでしょう。
実際に試す前はそんなにデータを集めてどうするのだろうか? 本当に役に立つのだろうか? と疑問に感じる部分もありましたが、得られたデータとそこから導かれたアドバイスなどを見ると思い当たる節もあり、興味が湧くようになったのは不思議です。
せっかくなので「G-SHOCKだけでなくApple Watchなどの他スマートウォッチとも連携できるといいですね」と感想を伝えたところ、「ご要望が多ければ対応も検討したいです」と前向きな回答をいただけました。
コロナ禍で運動不足になりがちな昨今、トレーニングもなるだけ密にならないよう少人数で黙々と……そんな感じにならざるを得ないのはちょっと辛いところ。それでも、そんな時にRunmetrixがトレーニングの見える化、アドバイスをしてくれたら心折れずにがんばれそうな気がします。