「チェルノブイリのカビ」が飛行士を宇宙放射線から守る?火星基地にも活用の可能性

放射線で育つカビ

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2020年07月28日, 午後 04:40 in radiation
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Space Tango, Inc.
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宇宙飛行士が地球から他の惑星へ向かおうとするとき、また火星に居住施設を作るときに最も懸念される危険要素のひとつが、宇宙放射線の被曝。現在、米国をはじめいくつかの国々が火星への有人飛行計画の実現に向けた開発を行っていますが、過去の探査機で計測したデータによれば、火星とのあいだを1往復するだけで、人間が生涯に許容できる被曝量の少なくとも60%を受けるとされています。また火星には地球のように宇宙放射線から地表を守る磁場も、厚い大気もありません。

ではこの問題を解決するにはどうすれば良いのでしょうか。たとえばステンレス鋼などは、それで火星に居住施設を作れば、宇宙放射線を遮るシールドにもなりますが、必要な資材を地球から打上げ輸送する手間と費用がかかってしまいます。

この問題を解決できるひとつの可能性としてスタンフォード大学とノースカロライナ大学の研究者が発見したのは、カビでした。研究者らはウクライナにあるチェルノブイリ原発事故の現場近くから採取した、放射性環境でも繁殖できるカビ菌が、ISSにおける宇宙放射線をブロックし、さらに月や火星へ向かう宇宙飛行士を守れることを発見したと述べています。

このカビは放射線を吸収し、それを自身のエネルギーに変える能力を備えます。研究者らはNASAと協力してこの種類のカビのひとつ”Cladosporium sphaerospermum”のサンプルを培養したペトリ皿を国際宇宙ステーション(ISS)に送りました。そして、そこを透過する射線量を何もないペトリ皿と30日間をかけて比較したところ、カビのあるほうが2%ほど透過量が減少することがわかったとのこと。もちろん2%の放射線の減少だけでは宇宙放射線を安全レベルにまで引き下げることはできませんが、21cmほどのカビの層で火星基地を覆えば、地表で被爆する放射線の影響を穏やかにすることが可能とのことです。

カビが放射線で増殖することはわかっているので、火星に送り込む際は最低限の量にすることができます。そして火星の地上で少量の栄養を与えて増やすことで、必要な量に増やすことができそうです。

なお、今回の実験に用いられたカビだけで、将来火星の赤い大地に降り立つ飛行士の、あらゆる放射線防護ができるわけではありません。NASAは2018年にはOrion宇宙船に搭載した放射線防護ベストを試験していました。火星で安全を確保するにはあらゆる方法を検討し、適材を適所に採用する必要があります。

source:bioRxiv
via:Phys.org, NewScientist

 
 

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