VCG/VCG via Getty Images
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中国の長征5Bロケットが「制御不能」になったことが、一時日本でもTwitterのトレンドに入るなど話題です。しかし、それがわれわれの頭上に落ちてくることはほとんどなさそうです。

問題の長征5Bは中国が独自に軌道に建造しようとしている宇宙ステーションの最初のモジュールを抱えて打ち上げられました。常識的に運用される宇宙ロケットはブースター部分がいくつかの段階に分かれ、最も大きな1段目は宇宙空間に到達する前に分離して安全に落下させる手法が用いられます。

しかし中国はその長さ30m、重さ22tもある大きな機体がすべて軌道まで到達する設計になっており、大気圏で燃え尽きずに地上に落下する可能性が元から指摘されていました。

長征5Bはすでに運用を終えて放棄された状態にあり、もやはコントロールすることができません。軌道上に約2万7000ある人工物の位置を追跡している米国宇宙軍は、このロケットの居場所も追跡しているものの、それが「大気圏に再突入する正確な時間や場所は、直前にならないと特定できない」と述べています。ただしおそらくそれは5月8日になると推定しています。

ロケットが落下すると見られる範囲は緯度±41.5度の範囲で、北はニューヨークやマドリード、南はニュージーランドにかかるあたりまでが含まれます。日本はというと、北海道の函館が北緯41.8度ぐらいなので、北海道はほとんど逸れますが、それ以南はすべて含まれます。

とはいえ、地球はその表面の多くが海であり、確率で言えば長征5Bが落下したとしても人口密集地域はおろか陸地にロケットが落下するリスクは低いと見積もられます。もっとも、大気圏の再突入時に機体の大半は燃え尽きてなくなるため、危険度はさらに低下するはずです。

もちろん、完全にロケットの残骸が地上に落下しないというわけでもありません。ハーバード大学の宇宙物理学者ジョナサン・マクダウェル氏は「人工物の大気圏への再突入はほぼ毎日発生しています。このうちごく一部が数か月に一度、地上に到達することもあります。ただ、これほど巨大な(10tを超える)ものが制御もなしに再突入するのは、この30年間で2回目です」と述べました。30年間で2回目とはいうものの、では1回目はいつかと言えば昨年5月のことで、同じ長征5Bロケットの破片がアフリカのコートジボワールに落下しています。つまり今回も地上に落下すれば、2020年以降は毎年発生しているとも言えるわけです。

中国は国際的な慣例に従わず軌道上でロケットを放棄して落下するに任せるようなやり方を採用しており、宇宙ステーション用モジュール打ち上げるたびに巨大な物体が落ちてくることにヒヤヒヤしないといけないようなことが続くのなら、各国の反発も高まりそうです。

先日、G7が台湾海峡の問題に関し「重大な懸念」を表明する共同声明を採択するに至るなど、経済力を持った中国は国際的慣行を無視する傾向を強めています。そしてそれはもう地上だけのことではなくなりつつあるようです。

Source:The Verge

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