Deepfake by shamook
Shamook / Lucas film


(※ Disney+で昨年配信された『マンダロリアン』シーズン2のネタバレを含みます。)

映像のなかの顔をAI技術で別人と入れ替えることで、身に覚えのないリアルな「証拠動画」を捏造するなど、嫌がらせや情報操作への悪用が懸念されるDeepfake (ディープフェイク)技術の話題。

スター・ウォーズなど有名映画の出演俳優を勝手に別人にしたり、CGを独自に「改善」した動画をYouTubeに投稿していた人物が、スター・ウォーズの製作会社Lucasfilmに正式採用されるできごとがありました。

ルーカスフィルムに採用されたことを明らかにしたのは、YouTubeやSNSで「Shamook」と名乗る人物。

「最新鋭のディープフェイク技術により、あなたの推し俳優が実際には出ていない映画に出演するもうひとつの現実を作り出します」と称して、アイアンマンからスター・ウォーズまで多数の改竄動画をYouTubeに掲載していました。

例を挙げれば、『マッドマックス怒りのデス・ロード』の主演トム・ハーディーを、マッドマックス旧作でマックスを演じたメル・ギブソンに入れ替える、ロバート・ダウニーJr.のかわりにトム・クルーズが演じるアイアンマン、新旧『スパイダーマン』シリーズの主演トム・ホランドとトビー・マグワイヤを勝手に交代させる等々。

Deepfake by shamook
Shamook / Warner Bros


こういった別配役ネタのほか、最近の映画でよく使われるようになったアーカイブ映像とCGを組みあわせた出演、故人の俳優を新作に蘇らせたり、俳優を若返らせるCG効果について、独自に改良したという映像も多数掲載しています。

題材のひとつが、昨年末に配信されたDisney+スター・ウォーズ ドラマ『マンダロリアン』シーズン2最終話の衝撃のシーン(ネタバレです)。

演じた俳優の顔をCGでマーク・ハミルの若い頃に置き換え、旧三部作当時のルーク・スカイウォーカーを出演させるサプライズは大きな話題になりました。

し一方、ルークの登場自体はファンを熱狂させたものの、CG出演や若返りエフェクト(de-aging)の例に漏れず、いかにもCGらしく不自然ではないか、生身の俳優と落差がある、あまり似てないんじゃないかとの批判が多かったのも事実です。


Shamook の動画は、このルークを自前の技術で「改善」したもの。左右を比べてみると、確かにShamook版は旧作の映像やスチルで見慣れた若き日のマーク・ハミルそのものに見えます。

Shamookは別の動画のコメント欄でカジュアルに「しばらく前からILM / Lucasfilmで働いてたからあまりYouTubeに新作を上げる時間がなかった」と書いていたものの、身元を明かしていないため真偽は不明でした。本人によれば、役職は「シニアフェイシャルキャプチャアーティスト」。

この件について、映像エンタメニュース媒体の IndieWire がルーカスフィルムに照会したところ、Shamookを採用したのは事実であるとの回答を得ています。担当者いわく、ルーカスフィルムは常に才能あるアーティストを求めており、ネット上で「Shamook」として知られるアーティストを採用したことも事実。

さらに、「過去数年にわたり、ルーカスフィルムは説得力ある視覚効果を実現する手段として機械学習や人工知能に投資を続けており、技術の進歩によりこの分野が勢いを増しているのは素晴らしいこと」とコメントしています。

「(本職ではない)YouTuberが高い技術で抜擢された」お話なのか、業界経験あるCGアーティストが変名で小遣い稼ぎとポートフォリオ拡充にYouTubeやPatreonを使っていたら求職活動に役立ったのかで見方は変わるかもしれませんが、いずれにせよ、ハリウッド映画や著名俳優の肖像を使いまくった二次創作を投稿したり有料でリクエストを募っても、権利者に地の果てまで追われることなく、「前回のは怒られたのでちょっと編集して上げ直します」程度でキャリアにもつながる緩さが、才能を育て業界の発展につながった例とはいえそうです。