Getty Images/iStockphoto
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近年、不妊症治療で発覚することが意外と多いとされるのが男性のほうの不妊症。精巣のなかで作られる精子の数が少なかったり、活動が弱かったりといったことが原因とされます。

韓国ソウル大学の研究者は、ある種のタンパク質を含ませたナノ粒子を精巣へ直接送達することで、精子の生産を改善する方法を開発しました。この方法をオスの不妊マウスに試してみたところ、すぐに効果が現れて小作りに成功したとのこと。

精巣には未熟な精子細胞を血液内の有害物質から保護するため、血液精巣関門(BTB)と呼ばれる障壁構造があります。しかし、何らかの理由でこれが損傷すると、せっかく作られた精子が減少し、生殖能力が低下する原因になってしまいます。

研究者らは当初、この治療のために遺伝子操作による治療を検討しましたが、生殖細胞に望ましくない遺伝的変化を引き起こす可能性があり危険と判断、BTBの修復と改善にPIN1と呼ばれるタンパク質が効果を示すことがわかったため、精巣にこれを送達して、その部分のPIN1レベルを上げることで、生殖能力を改善しようと考えました。

ACS Nano 2020, DOI: 10.1021/acsnano.0c04936
ACS Nano 2020, DOI: 10.1021/acsnano.0c04936

研究者らは多孔質構造を持つシルクフィブロインのナノ粒子にPIN1を含ませ、それを脂質でコーティングしたFibroplexと称するシステムを構成しました。そして、これをPIN1の欠如で不妊化したオスのマウスの精巣に直接注入したところ、機能が低下し縮小してしまっていた精巣が通常の大きさにまで回復し、生産される精子の量にも増加がみられました。

健康なマウスに比べれば、まだその量は50%程度にとどまるものの、生殖能力には大きな影響はなく、治療を受けたマウスは5か月ほどの間に健康なマウスと同じていどの子どもを作ることができたとのこと。

睾丸(精巣)に直接タンパク質を注入して改善が確認できたのはこれが初のことだと研究チームは述べています。ただし、あくまでマウスでの成功例と言うことで、これが人の場合にも必ず上手くいくという保証はまだありません。とはいえ冒頭に述べたとおり、不妊は治療中の方々には切実な問題であるため、できるだけ早期での実用化が望まれます。

source:ACS Nano