docomo Masahiro Sano

冬のボーナス商戦から、携帯電話業界最大の商戦期となる春商戦期を控える昨今、携帯電話会社や端末メーカーからの新機種発表が相次いでいるようです。実際NTTドコモは2021年10月6日、冬春商戦向け新商品に関する記者説明会を実施しています。

中でも注目されるスマートフォン新機種は全8機種で、全機種5Gに対応したとのこと。ただし「Xperia 5 III」や「Galaxy Z Fold3 5G」などハイエンドモデルだけでなく、前日に発表された「arrows We」などローエンドモデルを含めた5機種は発表済みなので、純粋な新機種は3機種となります。

中でも力が入れられているのはシニア向けのスマートフォンで、そのラインアップにはかなり大きな変化がありました。NTTドコモのシニア向けスマートフォンといえばFCNT製の「らくらくスマートフォン」シリーズが広く知られており、今回もその最新モデル「F-52B」が新機種として投入されているのですが、それに加えて京セラ製の「あんしんスマホ」(KY-51B)が新たに追加されているのです。

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▲NTTドコモが発表したスマートフォン新機種は発表済みのモデルが多いが、低価格モデルやシニア向けのラインアップが大幅に強化されているのがポイント

「らくらく」と「あんしん」の違いを大まかにいうと画面サイズとデザインです。F-52Bは従来のらくらくスマートフォンのデザインやインターフェースを踏襲しているのに対し、KY-51Bは6.1インチの大画面ディスプレイを搭載し、なおかつより一般的なスマートフォンの形状に近く、スマートなデザインとなっています。

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▲「らくらくスマートフォン」最新機種のF-52Bは従来のらくらくスマートフォンのデザインやインターフェースを踏襲、ある意味いかにもシニア向けという印象もある

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▲一方の「あんしんスマホ」ことKY-51Bは物理キーを搭載するなどシニア向けを意識しながらも、より通常のスマートフォンに近いスマートなデザインだ

らくらくスマートフォンのようにシニア向けを意識した端末に安心感を覚える人もいれば、シニアらしいデザイン端末に抵抗感を示す人もいるのは確か。そうした多様なシニアのニーズに応えるべく、NTTドコモはシニア向けスマートフォンの幅を広げたといえますが、シニア向けを意識した端末はこれら2機種だけではありません。

実際もう1つの新機種となるサムスン電子製の「Galaxy A22」も、文字やアイコンが大きい「かんたんモード」が用意されていたり、使い方を電話で相談できる無料のサポートセンターが用意されたりするなど、シニアを主としたスマートフォン初心者に優しい仕組みに注力されているのが分かります。

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▲低価格モデルの1つとして投入される「Galaxy A22」も、文字やアイコンが大きい「かんたんモード」備えるなど、シニア向け対応を強化している

なぜここまでシニア重視のラインアップになったのかといえば、狙いは「巻き取り」にあるといえそうです。NTTドコモは2026年3月31日に3Gによるサービスを終了させる方針を打ち出していますが、3Gを円滑に終了させるためには、3Gのサービスを利用している人を4G、あるいは5Gといった新しい通信方式のサービスに移行させる必要があります。

そうした新しい方式への移行を促す施策を通信業界では「巻き取り」と呼んでいるのですが、3Gの終了が近づき、巻き取りに本腰を入れる必要が出てきたNTTドコモは、新サービスへの関心が低く3Gを利用し続けている人が多いシニア層の移行を急ぐべく、シニア狙い独自端末の調達を増やすに至ったといえるでしょう。

ただ2019年の電気通信事業法改正による端末値引き規制、そして2021年10月から販売される端末へのSIMロック原則禁止などによって、携帯電話会社がスマートフォンを独自に開発・販売する意義が薄れつつあるのも確か。発表内容を見てシニア以外のラインアップが薄く、面白みに欠ける印象を受けたという人も少なくないのではないでしょうか。

NTTドコモのプロダクト部 部長の安部成司氏は、「我々のネットワークを快適に使える環境を顧客に提供するのが重要」と話し、メーカーと協力して自社が免許を保有する周波数帯で快適に通信できるようにすることこそが、携帯電話会社が端末を販売する意義であると話していました。ですが総務省の有識者会議で、すべての携帯電話会社が保有する周波数帯に対応することを求める声が挙がるなど、特定の携帯電話会社の帯域のみに対応した端末の販売そのものを自体を問題視する向きも出てきています。

その是非については今回触れませんが、いずれにせよ行政の影響で、携帯電話会社がスマートフォンを販売して5Gの利活用を先導すること自体が難しくなってきたことは確かだといえます。それだけにNTTドコモは、スマートフォンだけに頼ることなく5Gの利用を活性化する策もいくつか打ち出しているようで、その1つは「kikitoデバイスガイド」になります。

同社は既に、周辺デバイスのレンタルサービス「kikito」を提供していますが、kikitoデバイスガイドはそうした先進的なデバイスに関する情報提供や利活用の提案をしてくれるサービス。興味あるデバイスの情報を得てkikitoでレンタルしたり、直接商品を購入することも可能で、その機器のマニュアルなどを参照しやすくなるなどの仕組みも整えられるようです。

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▲NTTドコモのプレスリリースより。「kikitoデバイスガイド」はデバイスレンタルサービスの「kikito」をサポートする存在で、すまーとふぉんのしゅうへんデバイスに関する情報提供や、レンタル・購入などをサポートする仕組みとなるようだ

NTTドコモは5Gのサービス開始前から、5Gスマートフォンとさまざまな周辺機器とを連携し、新しい体験価値を提供する「マイネットワーク構想」を打ち出していました。そうしたことからkikito、そしてkikitoデバイスガイドによって、スマートフォンだけにとどまらない5Gの利活用を推し進めたい狙いがあるといえるでしょう。

そしてもう1つは5Gに対応したノートパソコンの提供で、具体的にはレノボ製の「ThinkPad X1 Nano」がNTTドコモから販売されることとなります。ThinkPad X1 Nanoは既に販売されている製品であり、既存モデルと大きく変わる訳ではないのですが、NTTドコモから販売されるだけに5Gネットワーク対応モデルのみが取り扱われること、そしてスマートフォンなどと同様、「いつでもカエドキプログラム」が利用でき買いやすい仕組みが整えられていることがポイントといえるでしょう。

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▲5G対応ノートパソコンとして「ThinkPad X1 Nano」がラインアップに追加。デバイス自体は既存のものだが「いつでもカエドキプログラム」を適用できるのがポイント

NTTドコモとしては5G対応ノートパソコンの販売で、リモートワークなど新しい働き方のニーズに応え、5G契約を拡大したい狙いがあるといえそうです。ただNTTドコモは現在5Gのデータ通信専用プランを提供しておらず、個人が利用するには「5Gギガホ プレミア」などに月額1100円をプラスし、「5Gデータプラス」を契約するのが前提となりそうで少々ハードルが高い印象もあることから、その点が消費者にどう評価されるかは気になる所でもあります。

先にも触れた通り、行政の影響によって携帯各社はスマートフォンで競合との差異化を打ち出すことが従来以上に難しくなってしまっています。それだけに、スマートフォン以外のデバイスを強化して差異化を図るという動きは、今後NTTドコモ以外にも広がっていくことになるのかもしれません。


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