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ドコモは、ミドルレンジの5Gスマホを拡充していく方針です。同社の代表取締役社長、吉澤和弘氏(以下、吉澤氏)がインタビューで明かしました。端末は複数になり、ラインナップとして展開していくようです。5G対応のiPhoneが登場することも織り込んでおり、年度末には250万契約を目標に掲げています。

エリア展開については当初、新型コロナウイルス感染症の拡大で遅れる見通しを示していましたが、2021年6月の1万局達成は実現できるペースを取り戻したとのこと。既存周波数の転用については他社より消極的ですが、「キャリアアグリゲーションをしたうえで、5Gとして使っていく」方針です。インタビューでは、サブブランドについての考えや、楽天モバイル参入の印象についても語られています。その主な一問一答は、以下のとおりです。

ついに始まった5G、エリア化の状況や新型コロナの影響は?

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インタビューに答えたドコモの吉澤社長

──5Gが3月にスタートしました。現状の契約数や、それに対するご見解をお聞かせください。

吉澤氏:直近での契約数は17万です。コロナの影響も少し加味した契約より、ちょっと高いぐらいですね。とはいえ、年度末の契約数は250万を見ています。それに比べると遅いといわれるかもしれませんが、年度後半にいわゆるエントリーモデルの投入も考えています。お買い求めやすいものが増えることを踏まえつつですね。iPhoneもいつ出るのか分かりませんが、ある程度それも入れた数値です。

年度末の主要500都市や、21年6月の1万局ですが、4月の決算のとき、場合によっては遅れるかもしれないとお話ししました。実際、3月、4月は機器の調達がちょっと遅れてしまい、もう少し長引くかと思っていたのですが、これは解消しつつあります。機器の調達を前倒しすることで、年度内500都市や来年6月に1万局の目標は達成できます。若干遅れつつありましたが、取り戻している状況です。

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新型コロナウイルスの影響で遅れが出ていた5Gの基地局建設だが、その遅れを取り戻しつつあり、21年6月の1万局はクリアできそうだという

──4月のお話では、もう少し深刻そうでしたが、リカバリーできたということですね。

吉澤氏:ネットワーク機器のある割合は中国からのものになるので、そこがコロナの真っ最中に止まっていました。しかしながら、(ロックダウン等が)解除されてからが割と速かった。次に何かあったら分かりませんが、それもあって、調達できるときにできるだけ調達するようにしています。

──日本でも緊急事態宣言が出ましたが、そちらの影響は何かあったのでしょうか。

吉澤氏:仕掛中のものは完成させましたが、機器が入ってこず、工事ができないところがあったのと、建設工事側も100%は出せませんでした。通信建設の会社側も体制を組み直し、その時に少し遅れは出ています。

──ただ、逆にエリアリストにないところで5Gの電波をつかむこともあります。どういった感じで広げているのでしょうか。

吉澤氏:(リストの)表示が追いついていないところがあります。今はエリアで示さず、拠点で示していますが、もう少し経ったら地図を塗っていけるようにしたいですね。エリアについては、屋外も含めて考えていますし、ソリューションやパートナーとの連携の中で設置しているところもあります。

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当初のエリアリストにはなかった高輪ゲートウェイ駅。ここも、「Magic Leap 1」を使ったイベントのためにエリア化したという

実は吉澤社長も通信速度を測っている

──ショップは屋内ということもあり、つながるととにかく速いですね。

吉澤氏:ここ(ドコモ本社の受付付近)も速いですよ。最高で1Gbpsぐらい出たことがあります。

──出たことがあるということは、ご自身で測られてるんですか(笑)

吉澤氏:測ってますよ(笑)。ただ、オリンピックにも関係してきますが、今後はダウンロードに限らず、アップロードも重要になってきます。映像などをアップロードすることが、どうしても多くなるからです。ダウンリンクとアップリンクの比率を決めてやっているため、auやソフトバンクとも合わせていかなければなりませんが、今後の使い方によって変わってくる部分だと思います。

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筆者が計測してみたところ、800Mbps超を記録。本社だけに、安定して速度が出ていた

──上りと下りを時間で分けているTDD方式なので、他社とそのタイミングを合わせなければいけないということですね。その他社に関連した質問ですが、auやソフトバンクは、比較的、4Gから5Gへの周波数転用に積極的な印象があります。総務省が計画値を3倍に引き上げるという話もありましたが、これについてはどうお考えでしょうか。

吉澤氏:あの(総務省の計画の)中身は既存周波数の活用で、LTEを5G化したものも含まれている。確かに、それも規格上は5Gなのですが、速度はLTEと変わりません。キャリアアグリゲーションをすることでもう少し速度は出せますが、同じ帯域の中ではLTEを超えるのが難しい。それを5Gとうたうのは、有利誤認というか、誤解を与えかねない表現です。お客様保護の関係からも、事前に説明して、よく分かってもらってから使っていただくようにしないと、正確な状況を伝えていないことになります。

とはいえ、うちも使わないわけではありません。転用はします。ただし、21年度末に2万局といっていたのは、5GのNRでやることを前提にしています。ソフトバンクは既存周波数を使って5Gで人口カバー率何%といういい方をすると思いますが、それをカウントして前倒しするのはちょっと違うのではないでしょうか。前提条件をしっかり説明する必要があると思います。

また、700MHz帯は、5Gを新たにやれば、その周波数においてLTEをやったことと見なすという方針もありますが、それもちょっとおかしいのではないかと思います。元々700MHz帯は、LTEで全国展開することを約束して配分された周波数ですが、ドコモは他社と展開率が違い、90数%のところまできています。転用すれば実質的に5Gといえるのかもしれませんが、ごまかされてるような気がしますよね。

──とはいえ、ドコモも転用はすると明言されましたが、どのように使っていくのでしょうか。

吉澤氏:転用自体はします。(転用した周波数で通信できる)5Gの端末が出てくれば、LTE側の周波数を5G化して、もっとキャリアアグリゲーションして使っていきます。

ミリ波はオリンピックに活用、国立競技場に機器を設置済み

──もう一方のミリ波についてはいかがでしょうか。

吉澤氏:元々6月に向け、ネットワークも準備してきましたが、コロナの関係、オリンピックが延期になった関係もあり、開発リソースが若干取れなくなりました。ただ、これはしっかりやっていきます。夏以降になるかと思いますが、端末はシャープのルーターがあり、富士通の「arrows 5G」も出てきます。端末にはミリ波も入っていますが、ネットワークは夏以降になるということです。

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ミリ波対応のarrows 5Gも間もなく発売予定。ネットワークの開始は夏以降と、やや遅れている

ただ、ミリ波はやはり難しいですね。オリンピックに活用しようと思っていて、国立競技場にもすでに機器は入れてあります。人が集まり、多数の人が大容量伝送するようなところに当てはめていきます。遮蔽物がたくさんあると適用が難しくなるので、開放的で、アンテナから端末が直接見通せるところですね。ローカル5Gもそうですが、スタジアムやイベント会場など、見通しがつくクローズドなところが中心です。ただし、人が集まる場所は、街中でもやります。渋谷のハチ公前など、そういったところはやらなければいけないと思っています。

エリアの作り方は難しいですが、単に無線機をつけるだけに限らず、反射板なども設置しながらうまく作れないか。シミュレーターも駆使しながら、エリアの特性が一番よくなるような工夫を開発陣にやらせています。

ファーウェイやエントリーモデルの割合は?

──冒頭でエントリーモデルのお話がありましたが、どのぐらいの割合になるのでしょうか。

吉澤氏:今回は確かにフラッグシップモデルとWi-Fiルーターだけでした。ミドルレンジがそれと同じぐらいかというとそうではなく、もう少し少なくなります。ベンダーによって出せる、出せないはありますが、チップの供給がちゃんとされることを前提に、いくつかのベンダーに作ってもらえるよう動いています。

──ちなみに、ミドルレンジでいうと、ファーウェイの5G端末は現時点でも4万円を切っています。「P30 Pro」までは取り扱っていましたが、やはり今は難しいですよね……。

吉澤氏:ファーウェイの場合、(GMSを搭載した)Androidがまったくできなくなってしまったので……。端末については皆さんから提案を受けています。誰がよく、誰が悪いということは申し上げられませんが、ファーウェイについてはアメリカの貿易規制の対象になっているので、そういうところでなかなか難しい。中国メーカーはほかにもZTE、OPPO、Xiaomiなどがありますが、そういったところからは色々と情報や提案は受けています。この辺は是々非々で考えていきたいですね。

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ファーウェイの端末は、制裁の影響で取り扱いが難しくなっているという。写真は「P40 lite 5G」

──夏モデルでは4G端末がミドルレンジ中心になっていましたが、ああいった形で4G端末も残っていくのでしょうか。

吉澤氏:基本的に、4G端末にフラッグシップはありません。我々のいい方だとスタンダードモデルですね。「arrows Be」や「Xperia 10 II」など、ああいったところの端末はもう少し出していかなければいけないと考えています。もちろん、5GでもLTEは使えますが、LTEはLTEでかなり磨き込みをかけています。しかも、今、スタンダードモデルは(相対的に)安く手に入るため、分離プランの関係で購買における比率はかなり上がっています。価格もさらに落とせる自信があるので、もう少し続けることになると思います。arrows Beも調達で2万円ぐらいですからね。

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LTEのみの端末は、スタンダードモデルとして取り扱っていく。写真は「Xperia 10 II」

──なるほど。そうすると、新規契約やマイグレーションで、割引を上限まで適用すれば1円になりますね。

吉澤氏:おっしゃる通りで、マイグレーションはコロナで少し止まってしまいましたが、今、盛り返しています。早くスマホに変えていただき、3Gをなくさなければなりません。

──3Gもそうですが、フィーチャーフォンだとコード決済サービスも使えません。衛生の観点から、スマホに変えてキャッシュレスで決済したという方も増えているのではないでしょうか。

吉澤氏:シニア層にも、スマホ教室でキャッシュレスをどんどん体験していただきたかったですね。コロナで(ショップの営業を縮小して)残念だったところです。定額給付金もスマホで申請された方がかなりいますが、シニアだとスマホもマイナンバーカードも持っていない。それは、できるようにしないといけないですし、我々がそこをフォローするところまでやってもいいと思っています。

政府が今になって全然デジタル化が進んでいないというようなことをいっていますが、そんなことは10年も20年も前からいっています。その辺のお手伝いをすることはできますし、スマホを通した申請ができるような仕組みづくりには積極的に関与していきたいですね。

実質的な“使い放題”プランをどう見ているのか

──5Gの料金についてですが、以前、吉澤社長は、コンテンツをセットにした料金プランの可能性を示唆していました。現状では、5Gギガホと5Gギガライトの2本立てですが、追加される可能性はあるのでしょうか。

吉澤氏:今、「Disney+」や「Amazon Prime」を1年間無料にしていますが、あれも1つのバンドルです。データ通信が無制限ということであれば、1つのプランとしてシンプルに出すのもありだと思っています。そうはいっても、コンテンツをセットでやれば、無制限でそれが使いやすいというのはあります。KDDIがやっているような、2つ、3つのコンテンツを合わせて、2つぐらいの料金でやるというものも出てくると思います。Amazon Primeもその1つといえますが、これはもうちょっと膨らませることができると思います。

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Amazon Primeが1年無料になるキャンペーンも、バンドルプランの一種だという

──料金関連でいうと、KDDIがUQ mobileを統合し、自社でサブブランドを抱えることになります。大手3社の中ではドコモだけがサブブランドなしで戦っています。以前からサブブランドは作らないという発言をされていましたが、UQ mobileの統合でお考えが変わったようなことはありますでしょうか。

吉澤氏:今のところはありません。どういう動きになるのかは、もう少し見なければなりません。統合といいつつも、すでに楽天モバイル対抗でUQ mobileから「スマホプランR」が出ていて、あれは10GBですが、楽天モバイルは無制限です。2980円という料金はKDDIの通常のプランに比べれば安いので、対抗軸になるのかどうかを見ています。仮に我々がやるとしても、ターゲットが何なのかは明確にしないといけない。メインブランドとの差は、明確にする必要があります。

例えば、ワイモバイルはソフトバンクの店舗でも販売していますが、どういった条件のときにワイモバイルで、どういったときにソフトバンクになるのかは、社内で分析もさせています。ソフトバンクから楽天モバイルに移ろうとする人を、ワイモバイルで抑止する──そういったことは許容されています。ただ、あまり使わない人であれば、今でもギガライトを少しうまく使えば対応できます。ギガライトはそのために作ったもので、10GB未満をもっと安くするというだけであれば、今のブランドで作れないことはありません。

余談ですが、サブブランドを安くして他社に対抗するというのはよく分かります。ただ、(総務省や国から)料金が高いといわれたとき、「サブブランドでこんなに安くしました」と答えられればいいのですが、「メインブランドで下げろ」といわれてしまうと、何のためのメインブランドなのかがよく分からなくなってしまいます。今、サブブランドを作ることはまったく考えていませんが、その位置づけや意義がどこにあるのかは、もう一度考えた方がいい。総務省の内外価格差調査でも、本来、サブブランドを選択していいはずですが、出てこないですよね。1番の会社だけを見て高いといわれるのも、どうかと思います。

2980円で無制限の楽天携帯料金、まだまだ2台目需要と見る

──先ほどからお話に出てきている楽天モバイルですが、本格サービス開始から約3か月が経ちました。ドコモに何か影響が出ているのかも含め、吉澤さんの見解を教えてください。

吉澤氏:先日申し込み数が100万に達し、それなりに順調といういい方もされていました。僕自身も、2980円で無制限はインパクトがあると思っていますが、今はそれを無料にしています。「Rakuten Mini」も1円だったりのキャンペーンをやった上での100万で、かなりのことをやったうえで、ようやくそこにこぎつけたという印象です。我々への影響ですが、ドコモからポートアウトした方もいるにはいますが、その数は少ないですね。

また、MVNOの楽天モバイルには、かなり多くドコモ回線のお客様がいます。そこから一定数は、MNOの楽天モバイルに移っているようです。ただし、100万の申し込みに対し、すごく割合が多いというわけではなく、やはりまだ2台目需要での新規加入が多い感じもします。その因数分解は我々にはできませんが、まず使ってみて、様子を見てから有料になったときにどうするのかを考えているのだと思います。そのため、現時点で影響が出ているわけではありませんが、よく様子は見なければなりません。料金自体はインパクトがありますし、楽天のもろもろのサービスとの融合ができてくると、それはそれで怖いところもあります。

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2980円で無制限のインパクトは大きいが、まだまだ2台目需要というのが吉澤氏の見立てだ

──先日、日本通信の申し立てに対して総務大臣裁定が下され、MVNO向けの音声通話の卸価格を下げる方向になりました。こちらについては、どう対応されていくのでしょうか。

吉澤氏:絶対値として、ここ10年以上同じ料金でした。音声そのものの需要が減ってはいますが、高いことは否めないので、安くしなければいけないと思っています。ただし、裁定の細かなところに書いてありますが、音声接続というものもあります。音声接続で代替性が確保できれば、そちらでやっていいとなっているので、我々はそれでやります。今、開発も進めていて、今年いっぱいで提供できるようになります。プレフィックスを使った接続になりますが、有効性を確認していただき、行けるとなれば全MVNOにそれでお願いしようと思っています。日本通信とだけは卸でやるやり方もできなくはないですが、接続での代替性が有効だと判断されれば、それに従ってもらいます。