ドコモ、速度上がらない5Gを警戒「エリアマップ塗り分けるべき」

「優良誤認を招く恐れ」

小口貴宏(Takahiro Koguchi)
小口貴宏(Takahiro Koguchi), @TKoguchi787
2020年08月25日, 午後 07:30 in 5g
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NTTドコモは「速度の上がらない5G」について、消費者の優良誤認を招くとして、エリアマップを塗り分けるべきとの認識を示しました。

4G周波数を転用した5G

「速度の上がらない5G」とは、4G周波数を転用した5Gのこと。総務省の省令改正により、携帯キャリアは4G向けの周波数の一部を5Gに転用することが可能になっており、ソフトバンクとauが転用の意向を示しています。

なぜ4G周波数を5Gに転用するのか──。その理由は、5G向けの新周波数(3.5GHz帯 / 4.5GHz帯 / 28GHz帯)が遠くへ飛びにくく、エリアを広げにくい性質を持つためです。

より詳しく説明すると、電波は周波数が高まるほど広い帯域幅を確保でき、通信を大容量化できる反面、性質が光に近づいていきます。つまり、直進性が強まり、障害物の裏に回り込まなくなるほか、低い周波数ならすり抜けられる障害物で遮蔽されてしまいます。

5Gは直進性が高く、遠くに飛びづらい電波を利用するため、エリア拡大に莫大な時間とコストがかかる

それに比べて、広いエリアをカバーできる既存の4G向けの周波数を5Gに転用すれば、5Gのエリアを一気に全国に広げられるというわけです。

また、同じ周波数で4Gと5Gを同時展開する「ダイナミック・スペクトラム・シェアリング」(DSS)といった技術もあり、4G周波数の5G転用は比較的容易に行えるようになっています。

なぜドコモは否定的?

上記のようなメリットもあるように見える『4G周波数の5G転用』ですが、なぜドコモは「消費者の有利誤認を招く」と否定的なのでしょうか。

その理由の1つ目は「4Gの周波数で5Gエリアを広げても、アンテナピクトが5Gになるだけで、実際の通信速度は4Gと大きく変わらない」という点です。

というのも、4Gの周波数を5Gに転用したところで、通信の空きスペースである帯域が増えるわけではありません。5Gの利点の1つである「大容量」を実現するには、新規に割り当てられた周波数でしっかりエリアを構築する必要があります。

5Gは新周波数を使ってはじめて大容量化が可能。4G周波数を転用しても通信速度は4Gと同程度にしかならない

また、通信の低遅延化についても、サーバーをデバイスの近くに置くなどの「エッジコンピューティング」によるネットワーク全体での最適化が必要だといい、単に4Gの周波数を5Gに置き換えただけで遅延が軽減されるわけではないといいます。

単に周波数を5G化しても低遅延が達成されるわけでもない

このため、仮にauやソフトバンクが4G周波数の5G転用で5Gエリアを一気に広げたとしても、ユーザー側からのメリットは乏しいと主張。

ユーザー保護の観点から、新規の周波数で構築したエリアと4G周波数を転用したエリアについて、エリアマップを塗り分ける必要があると述べています。

4G周波数を転用した5Gエリアは速度が上がらないので明確に区別すべきとドコモは主張している

既存4G回線の速度低下リスクも

また、同一周波数で4Gと5Gを同時展開できるDSS(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング)に対しても懐疑的です。

一見、4Gの帯域を減らさずに、4Gの周波数を5Gに転用できる画期的な技術ですが、NTTドコモによると、このDSSを利用した場合でも、既存4Gユーザーの通信速度が低下するリスクがあるとのこと。

具体的には、同じ周波数で4Gと5Gの制御を行う必要があるため、4Gユーザーからすると5G分の制御チャンネルが減少することにより、通常より4G側の速度が低下するといいます。

DSSによる速度低下の程度については『条件によっても異なるが、ドコモの検討では数%というレベルではなく、数十%の割合で下がる』(ドコモ担当者)と説明するなど、DSSを使って4G周波数を転用した場合でも、既存4Gへの影響が少なくないとの見解を示しています。

周波数の転用で4Gユーザーの通信速度が低下するリスクもあるという

将来的な転用には賛成

そもそも「DSS」などの仕組みは、5G単独でエリアを構築する「スタンドアロン5G」(以後 5G SA)を構築しやすくなるメリットがあります。ドコモも、5G SA時代に向け、将来的な4G周波数の5G転用には賛成としています。

しかし、早急に周波数を転用しても、ユーザー側のメリットは大きくないということを強調。今秋にはiPhoneの5G対応も予想されるなか、4G周波数の転用で5Gエリアの一挙拡大を図るソフトバンクとauに牽制球を投げた格好です。

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