冬商戦に向けてスマートフォンなど各社の新製品発表が続く昨今ですが、NTTドコモも2020年11月5日に、冬春商戦に向けた新サービス・新商品発表会を実施しました。日本電信電話(NTT)による株式公開買い付けを実施している最中でもあるため、注目される料金関連の施策は打ち出されなかったものの、それ以外に関しては多岐にわたる発表がなされていました。

▲NTTドコモは2020年11月5日に新サービス・新商品発表会を実施。5Gスマートフォン新機種や、5Gを活用した新サービスなどについて説明がなされた

そして共通しているのは、いずれも「5G」に関連する施策だということです。サービス開始以降盛り上がりに欠ける状況が続いていた5Gですが、5Gに対応した「iPhone 12」シリーズの発表以降、再び徐々に注目度が高まりつつあることもあり、NTTドコモは今回の発表会で5Gのさらなる拡大に向けた施策をいくつか打ち出しています。

その1つは5Gのネットワークです。NTTドコモはかねて5Gで高速大容量通信ができることを非常に重視しており、2021年度の半ばまでは高速大容量通信に適している5G向けに割り当てられた3つの周波数帯(3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯)だけを使ってエリア整備を進める方針を打ち出しています。

そして今回の発表では、それら3つの周波数帯を使って2022年3月末までに2万局の5G基地局を整備して人口カバー率50%を達成。さらに2023年3月末までには3万2万局を整備して70%の人口カバー率を達成したいとしています。ちなみに発表会と同日にNTTドコモのエリアマップが更新されているのですが、2020年10月末時点では5Gエリアがものすごく狭いもかかわらず、2021年3月末からは突如急拡大し、都市部では広範囲で利用できるようになるとされています。

▲NTTドコモは5G向けに割り当てられた周波数帯だけを用い、2023年3月末までに3万2000の5G基地局を整備。人口カバー率70%を実現するとしている

その理由についてNTTドコモの関係者は、マクロセル基地局の展開を本格化するためと話しています。これまでは電波の出力が小さく、狭い範囲をカバーするスモールセルの基地局を主体に設置していたのですが、今後はより出力が大きく広範囲をカバーできるマクロセル基地局を積極的に設置していく計画なのだそうです。

ですがそれでも、KDDIやソフトバンクが2022年3月末までに5万局を整備し、早々に人口カバー率90%超を達成する計画であるのと比べれば見劣りするのは事実です。これら2社が打ち出しているのは、高速大容量通信に適していない4G向けの周波数帯を5Gに転用することを前提とした計画なので、戦略の違いがエリアカバー時期の差に出てきているわけですが、一般消費者からしてみれば速度がどうあれ、アンテナピクトが「5G」となっていれば「5Gが使える」と思ってしまうのも確かでしょう。

そうしたことからNTTドコモでは、新しい周波数帯で整備した5Gネットワークを「瞬速5G」とブランド化し、同社の5Gネットワークは高速だということを打ち出して他社との違いをアピールしていきたいようです。そうしたブランド戦略が消費者に浸透するかどうかが、同社の5Gネットワーク戦略の評価を大きく分けることになりそうです。

▲他社とは異なり全ての5Gエリアで高速大容量通信ができることから、「瞬速5G」というブランドで違いを打ち出していく方針を示している

そしてもう1つ、5G戦略を見据える上で重要なのは端末です。NTTドコモは今回の発表会で5G対応スマートフォン6機種を発表しているのですが、そのうち4機種は価格を重視した「スタンダードモデル」でした。

具体的にはKDDI(au)からも投入される「Galaxy A51 5G」「AQUOS sense5G」と、現在のところNTTドコモのみが取り扱う「arrows NX9」「LG VELVET」の4機種。これらはいずれも、ドコモオンラインショップで3万円台から5万円台(ただし一部機種は「スマホおかえしプログラム」適用時の価格とのこと)と、軒並み10万円を超える価格だった従来の5Gスマートフォンと比べるとかなり安価に販売されることが分かります。

▲5Gスマートフォン新機種6機種のうち、4機種は「スタンダードモデル」で、価格も3〜5万円台と、従来の5Gスマートフォンと比べ値ごろ感が高い

NTTドコモは米中対立の影響などもあり中国メーカーの採用に慎重な姿勢を取っていることから、中国メーカーを積極採用する他社と比べ低価格の5Gスマートフォンのラインアップがなく、大きな穴があったのも事実です。中国メーカー以外でもリーズナブルな5Gスマートフォンを提供するところが増えてきたことで、ようやくその穴を埋められたといえるでしょう。

ですが一方で、高い性能を持つ5Gのハイスペックモデルは「Xperia 5 II」と「Galaxy Note20 Ultra 5G」の2機種のみで、弱さがある印象は否めません。auが「Galaxy Z Fold2 5G」など折り畳みスマートフォン新機種を相次いで投入してきたことを考えると、もう少し攻めの姿勢が欲しかったように感じてしまいます。

▲5Gのハイエンドモデル新機種は「Xperia 5 II」など2機種のみ。スマートフォンだけを見ると攻めの姿勢が弱い印象だ

ただNTTドコモの場合、そうした攻めの部分は周辺機器で出していきたい考えなのかもしれません。実際同社は以前から、5Gスマートフォンにさまざまな周辺デバイスを接続することで新しい体験価値を提供する「マイネットワーク構想」を打ち出していました。

そして今回の発表会では、そのマイネットワーク構想を拡大するための施策として「kikito」という新しいサービスを打ち出しています。これはスマートフォン向けの周辺機器をレンタルするサービスで、高額なデバイスもお試し感覚で利用できるようにするもの。1日単位での短期レンタルから、30日単位の長期レンタルも可能であるなど柔軟性のあるサービスとなっています。

▲スマートフォンに接続して利用できる周辺機器をレンタルして利用できる「kikito」。レンタルした機器が気に入った場合は購入することも可能だ

MRデバイスの「Magic Leap 1」などは価格が24万もするため、多くの人が購入して利用できるものではありませんが、レンタルであればより低価格で体験ができる可能性が高まるでしょう。ちなみにレンタルした商品は買い取ったり、返却後安価に購入できる仕組みも用意されたりするとのことです。

▲kikitoでレンタル予定の周辺機器は、アクションカメラからプロジェクター、ロボット掃除機など幅広い

ただ、そもそもスマートフォンに周辺機器を接続するという発想がない人も少なくないだけに、マイネットワーク構想を促進するには周辺機器を提供するだけでなく、それを使うことが魅力に感じるコンテンツやサービスの開発も一緒に進めていく必要があるかもしれません。機器とコンテンツを一体でレンタルし、スマートフォンだけでは味わえない体験を包括的に提供するようなサービスが、将来的には求められることになるのではないでしょうか。